第41話 手下探し

 俺が王になる時に立ち会う奴か。少数でいいだろう。

 まぁまず姫さん連中だな、鬼の居場所はわからんねぇなぁ。後は村の人間か。国の領地と国民はどうせ征服するからここでいいや。暇な時にでも南下して勇者のいる国を飲みこんじまおう。



 俺の建国宣言は村にいる姫さんと母者には特に驚きもなく受け入れられた。国の名前も決めてない、産業もない、法律もない。全て奪う、俺が法律だ。

「そんなのでいいわけ無いでしょう!?馬鹿なんですか!?」

 文句を言ってきたのはリリスだ。こいつ捨て鉢になってんのか?

「じゃあお前が宰相な。俺の命令には従え、それ以外全部お前が決めていいぞ」

「んなっ!?」

 こうして丸投げに成功した。実にスムーズな国家運営だ。



「アレキサンダー、おぬし王になったら暫く弱ると言っておったの、兵士は確保しておるのか?」

「兵士?なんで?」

「隣の国が荒れておるのじゃ。こちらにまで噂が届いているくらいじゃからの、そのうち人も流れてくるかもしれんのじゃ」

「フレアがいるじゃん」

「アレに人の諍いで殺しをさせるのは気が進まんのう」

「うぅん、鬼族の居場所が分かれば頼めるかもしれんが」

「知らんのう、かと言って傭兵を雇ったら反逆が怖いのう」

「まぁ、流石にただの人間くらいなんとでもなるんじゃねぇかな」

「適当じゃのう」

「それよりリリスを宰相にしたからな、支えてやってくれ」

「小僧が王で小娘が宰相か!それでプリティ少女なわしが相談役じゃな!」

「終わってるなこの国」

「任せておくのじゃ!」


 物凄く頼りないお子ちゃま頭脳と化したオババだが、一応は年の功があるだろう。運営能力の高い母者と一緒に支えてくれたらなんとかなるさ。



 翌日、東の王都に向かった。カバンちゃんと会うためだ。

「だから知り合いだっつってんだろぅあぁん!?」

「駄目だ駄目だ!失せろ!痛い目にあいたいか!」

 随分と柄の悪い門番で融通が効かない。困ったもんだ、冷静に話し合えばきっと解決出来るのに。


『GAAAAAAAAAAAA ! ! 』

「おらぁ!カバンちゃん出せぇや!皆殺しにして引き摺り出してやろうか!」

「ひ、ひぃぃ!竜が襲ってきたぞ!!」

「オラオラオラオラァ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「やめなさい!」

 突然光が迸り、周囲が凍りついていく。氷が木の様に伸びて空を飛ぶフレアを捕まえてしまった。


『これってアレじゃない!?イヤァァァァ!』

「おぉカバンちゃんか。少し大きくなったなぁ、なんでコレ使えんの?」

「何をしてるんですか!」

 カバンちゃんはぷりぷりだった。



「ついに王として立つんですね。おめでとうございます」

「ありがとう。この国の西の方は俺の物になるけど、近い内にこっちも征服するから安心してくれ」

「………」

「それでさぁ、俺が王になる時に立ち会わない?知り合いに声かけてまわってるんだ。立ち会って王として認めて祝福してくれたらそれでいいんだ」

「………」

 あれ?なんか怒ってる?


「王となるのは祝福します。領土を切り取られても友好関係が持てるなら構いません。ですが今は難しいです。勇者が現れて周辺で問題が頻発しているんです」

「お前まだ子供だろ?仕事なんか無いだろ」

「誰かのせいで色々担がれているんです」

「へぇぇ、それで、これないの?」

「………」

「まぁ仕方ないか」

「いつですか?1日で往復出来るならなんとか」

「お!9日後だ、朝からフレアで迎えに来るからな。たぶんすぐ終わる」

「わかりました。今度は門からちゃんと来てください」

「たぶんな」



 カバンちゃんの約束は取り付けた。次はアリーだな、同じ手で行こう。




『こんにちは!アリーちゃんに会いに行きたよ!』

「フレア様!お通りください!」

 変身して学園内の部屋に通された。なんで竜の方が平和的に通されてんの?



「どうしたの?アレキサンダーが来るのは珍しいわね」

「あぁ、実は今度建国して王になることにしたんだよ。それでお前、姫として俺を王と認めて祝福しろ」

「ブフゥゥゥ!!」

 きったねぇ!ぶっ殺すぞこのあまぁぁ!!


「いきなり何言ってんの!?建国!?」

「あぁ、とりあえず北の国の西の方でな、その後勇者のいる国を侵略して、北の国を侵略して、次がここだな」

「ブフゥゥゥ!!」

「いい加減にしろぼけぇ!!」


「そんな奴祝福するわけ無いでしょ!この国の敵じゃない!」

「落ち着けよ、侵略が済んで併合したら同じ国だろ?どうせ世界征服するんだからさ」

「やっぱりあんた魔王なんじゃないの!?」

「駄目か?」

「駄目!」


「そうか、残念だ。フレア、こいつとはもう二度と会えないからちゃんと挨拶しておくんだぞ」

「え?なんで?」

「だって敵対国の姫だし」

「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!フレアは関係ないでしょ!?」

「だってフレアは俺を認めてくれる俺の国民だし、俺を認めない敵国の姫と仲良くするのはちょっと…」

「そんな……別に敵対はしてないでしょ!?侵略するって言われたらそりゃさぁ!」

「はぁ、駄目なら仕方ない。フレア、挨拶はいいのか?」

「うぅ、アリーちゃん・・・」


「わかったわよ!祝福すればいいんでしょ!」

「ちょろ……。9日後だ、朝からここに迎えに来るからな、すぐに終わるはずだ」

「はいはいはい。夕方には返してよ、何度も怒られてるんだから」

「アリーちゃん!任せて!」

「よろしくねフレアちゃん!」

「よしよし」



 これで2国の姫に約束を取り付けた。

 他の国の偉いやつと言えば元学園長と鬼の姫さんか。どっちも居場所わかんねぇんだよな。たぶん盗賊もどきをやってた場所の近くだとは思うんだが。

 まぁ、とりあえず探すか。見つければよし、駄目ならそれまで。




 3日後。

「99996!99997!99998!99999!100000!ぶはぁぁ!」

 気持ちのいい汗だ!王になったらこんなに出来なくなるのかなぁ。まぁ腕立て腹筋スクワット100回ずつからコツコツ始めるのも悪くない。

 鬼を探すのは飽きて止めた。別にイラネってなった。

 森でのトレーニングを済ませ、見つけた湖でバシャバシャと水浴びと洒落込む。こいつぁご機嫌な朝だぜぇ。



「誰だそこにいるのは!この一体は我らの土地だぞ」

 俺がご機嫌で水浴びをしていたら頭の悪い野暮なことを叫ぶ男が現れた。角が生えていて赤い肌をした筋肉隆々の大男だ。

 探しものは諦めた頃に見つかるって言うよな、素晴らしい。

「うるせぇ!ちょっとまってろ!食らいな!アレキサンダー流・人間魚雷!」

ギュゥゥゥン!

 湖の中を潜水して魚雷の様に迫り、そのまま頭から腹にめり込んでやった。


「うごあぁぁぁぁぁ!」

気持ちのいいトレーニング、気持ちのいい水浴び、気持ちのいいお仕置き。痛みに喘ぐ声をBGMにして、3日もかけた仕事の成果を噛み締めた。




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