第23話 5歳 学園編突入!!

 魔導王国アンティカ。国境沿いの街。

『GAAAAAA!!』

「竜だー!お山の竜が来たぞー!」

「おしまいだぁ、かてるわけがないよ」


「阿鼻叫喚やん、お前ここで何したの?」

『何もしてないよ!だってここ何もないもん!』

 ふむ、まぁ分かる。国境沿いの寒村だ、何もねぇだろうさ。

「放っておいて街道に沿って進むか。どうせお前の羽ならこんな国すぐに渡れるもんな」

『任せといて!』


 再び飛び上がり、街道に沿って進んでいく。とりあえず大きな町まではこれで辿り着くだろう。

「なぁフレア。お前魔法が苦手だって言ってたよな。それで仲間と別れたって」

『うん、今でも上手に出来なくて。でもアレキサンダーがいるから平気だよ!』

「そう言ってくれるのは嬉しいが、他の竜に出来ることがお前にだけ出来ないなんてムカつくだろ?この国で一緒に勉強しようぜ!」

『アレキサンダー!ぼく、一緒に勉強したい!』

「おーしおしおし!決まりだぞ!一人だけ逃げるなよ!」

 嫌なことも友達と一緒なら半分こだ!


 そんな事を話しながら20分くらいかな?元いた国の王都に匹敵する大きな街が見える。国の規模感から考えて多分あれが首都だろう。大きな街であれば別に首都である必要もないし、ここで魔法を学べるところを探してみるとするか。

「いこうぜフレア!」



 ドズゥン!

「今だ!一斉攻撃!」

「な、なんだぁ!?」

 街の広場に降りた瞬間!周囲から飛んでくる炎の渦、氷の礫、石の槍、風の刃、そして驟雨の如き鉄の矢!

「舐めた真似をしやがって!こんな物で俺達がやれると思ってんのか!!ピストン・ジェットストリーム・アレキサンダーパンチ!」

 連続で繰り出される音速を超えたコークスクリュー・パンチ!生み出された数十本のジェットストリームが迫りくる全てを蹂躙する!

『GAAAAAAAAA!!』

 追い打ちのドラゴン・テイルスマッシュ!周囲の建物を薙ぎ払い、攻撃者達を吹き飛ばした!

「まだやるかい?」


「ぐぐぐっ、貴様!竜をあやつるか!この国をやらせはせんぞ!」

「あぁ?いきなり攻撃してきて何を言いやがる!地獄で反省しろ!アレキサンダー流・大蛸固め!!」

「ぎにゃぁぁぁぁ!」

 背後から絡みつき全身を固める関節技!猛烈な痛みで指先すら動かせない!そこに有るのは地獄!!

「オラオラオラァ!!さっさと詫びを入れねぇと一生ケツも拭けなくなるぞ!」

「すびばぜんでじだぁ!ざがらいまぜん!!ごべんなざいぃぃ!!」

 よしよし、その言葉が聞きたかった。



 突然襲ってきたのは見た目からして正規兵。その隊長格のおっさんを締め上げたわけだが。

「それで、なんで襲ってきたんだ?竜の鱗でも欲しかったのか」

 剥がれた鱗は全部集めて持ってくる様に母者に頼まれているのだ。誰にもやらんぞ。

「その竜は以前に何度も街を襲っています。迎撃するのは当然かと…」

 ふむ……まずいな。

 チラリとフレアを見るが平然としている。こいつからしたら鼠が転がしていた玩具を取り上げた様なもんだろう、罪の意識どころか覚えてすら無いかもしれん。


「それは勘違いじゃないか?俺はここから遥か北の村から来た。あいつは俺のズッ友なんだ、ずっと一緒にいる奴なんだ」

 つい最近からではあるが。


「しかし、竜など滅多にいるものでは…。同じ赤竜ですし」

「あー!それな!滅多にいなくて色が同じってだけな!困るわぁそういうの、全然見分けついてないじゃん。フレア!俺達ズッ友だよな!この国には魔法の勉強に来たんだよな!」

『そうだよ!アレキサンダーと一緒に勉強するんだ!』

「ほらぁ、分かるだろ?別の竜だ、別の竜だよな?言ってること分かってるよな?」

「は、はい!別の竜でした!すいませんでした!!」

「ヨシ!」


 少々強引だがこれでいいんだよ、だってフレアは既にこの街にとって危険な存在では無いし、過去の行為を裁くことも出来ない。どうしようもない過去を背負ってもどうしようもないだろ。

「俺達が街にいる時に他の竜が来たら任せとけ!」

 だからこれでいい。




「それじゃあ詫びとして魔法を学べる場所へ案内してくれ」

「え?」

「ん?勘違いでいきなり攻撃したんだろ?じゃあ殺人未遂じゃん。これで終わりなわけ無いじゃん」

「そ、それはぁ……」

『魔法を学びたいのであれば、ぜひ我が学び舎へ』

「あん?」


 突然すぐ横から話しかけられた。さっきまで誰もいなかったはずなのに、これも魔法か。

 なんとも泰然としたばあさんだ、歴戦の魔法使いなんだろう。高度な魔法使いであるなら歓迎だ。

「学び舎って事は沢山集まって勉強してるのか?俺は手っ取り早く魔法を使いたいだけなんだよ。あと竜が人間に変身する魔法の練習」

「魔法学ではなく実践を学びたいのでしょう?であれば早いか遅いかは当人次第です。魔法の習得には努力有るのみ」

「ならすぐに終わりそうだな。世話になる、あいつの事もよろしくな」

『よろしくねぇ!』

「えぇ、楽しくなりそうです」





 アレキサンダー5歳!偉大な王になる男!だが今日からは一時ただの学生だ!

 正直すごく嫌だが魔法のためなら仕方ない、友と励んでみるとするか!








――――――――――

「いた!レアアーススライム!聖水投げて!」

「えーい!」

『ぴぎゅぅぅ・・・』

 やった、今日3匹目の討伐だ。こいつは強くないしすぐ逃げるのに莫大な経験値も持っているレアモンスター。しかも聖水を投げると一撃で倒せるので、序盤はこいつを狩るのが一番おいしい。


「やった!レベル100になった。経験値2倍が効いてるぅ!」

「わたしは61だってー」

「それじゃあまずは盗賊だなー」

 レベル100にならないと転職が出来ないシステムなので、最初の勇者ジョブで今まで我慢してきた。勇者はステータスの伸びが最高で多様なスキルを覚えるんだけど、ステータスはどうせ転職で半分になっちゃうから先にスキルを集めるのが鉄板なんだよね。勇者は覚えるスキルも強力だけど消費魔力が多いから後でいいんだよ。どうせなら盗賊スタートで最強にしたかったなぁ。


「もう聖水なくなっちゃった」

「それじゃ戻ろうぜ、今日もありがとうな」

「うん!」

 頭を撫でてやるとにぱーっと笑ってかわいい。ミレイもなるべく連れ回しているのでいい感じに育ってきた。まだまだ体は育って無くてペッタンコだけどな!

「帰ったら一緒にお風呂はいろうな!」

「あうぅ、でもお母さんが男の子と一緒にお風呂はいったら駄目って…」

 ちっ、まぁいいか。もう何度も見たし、ペッタンコだしな!


「鬼姫のルーリアが爆乳なんだよなぁ。早く拝みてぇぇ!」

 ヒロインの一人である鬼姫ルーリア。肌がピンク色なので好みは別れるんだけどそのボディは最高!しかも鬼族は強い相手に発情するから、レベルを上げておいて一騎打ちで勝てば簡単に惚れさせる事が出来る!

 確か小さい頃に姉を人間に殺されてて荒れてるんだよな。はぁ、今頃泣いてるんだろうか?抱きしめてあげたい!慰めてあげたいよぉ!




 倒したレアアーススライムをアイテムボックスに収納して村に戻った。

 この村はゲームのチュートリアルイベントで壊滅する事になってるんだ。ゲームの流れはあんまり変えたく無いんだけど、ここだけは俺が守ってやるつもり。だってみんな生きてるんだもん、NPCだと思えないよ。

 そのためにも更にレベルを上げて、必ず最推しのあの子を手に入れるぞー!

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