第20話 5歳 時には竜にもわからせを
カバンちゃんを守るため、ブレスの前に飛び込んだ。放っておいても火炎からは氷晶が守ってくれるだろうが、吹き飛ばされて岩山を滑落すれば命は無いだろう。もう神秘の薬なんて無いんだ、俺が守るしか無い。
迎撃する時間は無い、ただ両手を広げてブレスを受け止めるのみ!
ゴッ!
炎の奔流が唸りを上げてが俺の小さな体を飲み込んだ。
(かばん、貴様と過ごした半日…悪く無かったぜ……)
目を瞑り呼吸も止めて踏ん張る。耐えきるんだ、耐えてカバンを連れて脱出する。それが俺の、俺の、、、あれ?…熱くない?
異変に気づき目を開けるとそこには氷の壁、波のうねるような見事な造形の氷が出来ている。
「これは…炎が凍っているのか?」
そんな馬鹿げたことがあるか、炎の形を保ったまま炎の成分が凍るなんて絶対にありえない。
『GUUUUU・・・』
竜のやつも警戒してやがる。これをしたのは当然カバンちゃんという事になるが。
「す、すごい。これなら勝てます!」
氷晶を握りしめて宣言するカバンちゃん。俺が持ってた時はこんな効果なかったぞ!
「クソがぁぁぁぁぁ!」
なんで俺の時とこんなに違うんだよ!ふざけるんじゃねぇ!
怒りのままに目の前の氷の柱に腕を突き刺し掴んで持ち上げる!直径2メートル、長さ10メートル!20トン超えの荒々しい氷の柱だ!
『GYAAUU!!!』
警戒した竜が空へと羽ばたいた、仕方ねぇこれぶん投げるか!
「止めます!」
カバンちゃんの宣言と同時に氷晶から光が溢れる!光はそのまま周囲の全てを氷漬けにして飛び上がりかけた竜を捕まえた!
『GAAAAAAAA!!!』
足と尻尾を氷に捕まえられて暴れる竜くん、最後の時を悟ったかな。
「死ねこのドぐされがァァァァァ!一撃必殺!氷柱脳天撃!!」
バガァァァァン!!
大地を砕く超重量!もがく竜の脳天をぶち抜くのは俺の怒りだ!
勝負あり!
「ふぅぅぅ、恐ろしい相手だった」
竜ってすげぇのな、タイマンだったらどうなっただろうか?俺の直接攻撃が通じなかった理由が分からない限り厳しかった様に思う。
多分こいつはエンシェントドラゴンとかいう奴だな。竜の中の竜、最強のやつだ。そうに違いない。
「あの、ご、ごめんなさい!これ…」
「あー、まぁ、役目を終えたんだろう。よく頑張ってくれた」
謎の氷晶は溶けてしまった。こいつのお陰で二人共怪我なく勝てたのだ。ありがとう、助けてくれて。
「ごめんなさい!こんな貴重な物を!本当にごめんなさい!」
「謝らんでいい。無駄にしたわけじゃないんだ、必要な時に必要な行動をした事を誇れ。それより宝を漁ろうぜ!」
勝ったんだ、これは全部戦利品だぜ!全部持って帰る方法ないかなぁ。
周囲は氷漬けだが寒くはない。というかこれ氷なの?氷って水が凝固したやつだよな?触っても冷たくない、まるで水晶がはえてるみたいだ。
まぁとにかくゆっくり宝を漁ろう。さっきは急いでたからな。
ごちゃごちゃと積み重なっているが価値が分からん。水差しが便利なのであんなのがあると便利なんだがな。後は土産と氷晶の代わりの物が欲しい。
「魔道具ってわかる?」
「えぇ大体は。例えばこちらは風の魔道具ですね、涼しい風が出ます。こちらは珍しい土の魔道具ですね、石を砕いて砂に出来ます」
「しょぼいな、そら飛ぶ絨毯とかないの?」
「飛行する魔道具は伝説に出てきますが、そうそうあるものではないかと」
うーん、ぱっと見て分かる様な便利グッズは見当たらない。適当に家具や飾れるものを土産にするか。後は俺が杖だな。
「杖の大きさって色々あるけど意味あるの?」
「一般的には大きい物の方が補助能力が高いです、小さいものは取り回しがいいのと発動が早いですね。魔力が十分に多いのであれば小さい方が便利だと思います」
ほーん、なーほーね。それじゃ適当にこれでいいか。わかんねぇし。
「武器は使わないんですか?」
「手に合わないんだよ、無理やり握ったら壊れるし。そもそも全力についてこられる武器がない」
「それならこちらなど如何でしょう」
カバンちゃん店員が差し出して来たのは細身の直刀、鍔が小さく握りも細い。女性用?儀礼用?
「魔道具ですよ、効果は分かりませんが強い力を感じます」
ほうほう、ちょっくら試してみるか。
丁度竜が倒れている。全体を持って帰るのは厳しいが、やたらにでかい牙でも持って帰るとするか。
「き~れるっか~な~~」
サクッ。
『いたぁぁぁぁぁ!』
「うぉぉぉぉぉ!な、なんだ!?」
竜さん起き出してドッタンバッタン大騒ぎ!
「野郎生きてやがったか!今すぐとどめを刺してやる!」
『ごめん!ごめんなさい!ころさないで!』
シャァベッタァァァァァァァ!!竜さんは人間の言葉が喋れるフレンズなんだね!
「てめぇ喋れる癖に問答無用で殺しにきたのか!生きていたことをたっぷり後悔出来るように惨たらしく殺してやるぜ!」
『ひぃぃぃ!が、GAOOO!』
「うるせぇボケが!飛燕抜刀ツバメ返し!」
『いぎゃああああああ!!』
あれ?さっくり切れるな。なんで?
「竜さんよぉ、オメェの体面白いな?たっぷり切り刻んで調べてもいいんだが、俺の下に付くってんなら口を使う機会をくれてやってもいいんだぜぇ?」
『なんでもします!ごめんなさい!ゆるしてぇ!』
ふむ、なんかよく分からんが竜のわからせ完了?
結局竜の宝はあんまり興味を惹かれなかった。というかこいつを生かして置くなら全部持っていくのは気が引ける。俺は杖と剣、それと土産に絨毯と金の壺をもらった。カバンちゃんもなんか貰ったようだ。
「喋れるのになんでいきなり襲ってきたんだ」
『だって盗んでたし』
「お前も奪って集めたんじゃないのか」
『だって下等生物がいいものもってたし』
「フン!!」
『いだぁぁい!いだい!ごめんなさい!』
「それでお前、人間に変身できるのか?」
『うぐぐぐ、出来ません。ぼく落ちこぼれで』
「落ちこぼれ?まじで?他の竜は出来るの?」
『はい、ぼくは大人になったのに魔法がうまく出来なくて。馬鹿にされて竜の村から引っ越してきたんです』
まじかよ、こいつ雑魚なの?まじ?古代から生きるエンシェントドラゴンの一体で聖なる魔竜とかそういうのじゃないの?
「お前に攻撃が効きにくかったり力が入りにくかったんだけどアレなに?なんかやってた?」
『そのぉ、ぼくも一応竜の端くれなので』
「なので?」
『人間は知らないの?竜、巨人、魔王、勇者とかの神性を持つ者には、神性を持つ攻撃しか効かないんだ。さっきは爪を砕かれてびっくりした』
「ほう、じゃあ氷の柱もあの武器も神性ってのがあるわけか。そして俺の拳にも・・・ふっふっふ」
『ううん、爪が体判定されてなかったんだと思う』
「黙れ下郎!それで力が入り難かったのはなんでだ」
『それもおんなじだよ、僕たちと戦う時はれべるあっぷ?とかいうのは関係なくなるんだ。だから人間はよわよわなハズ何だけど……』
面白い話を聞いた。なるほどこれで魔王を倒せるのは勇者だけと言う設定が成り立つわけだな。
「大変興味深いです」
「誰にも言わないほうがいいと思うぞ」
『人間はやっぱり何もしらないんだね!』
そうかもな!はっはっは!!
「ふむ、カバンちゃんは一旦離れなさい、岩陰に入ってマントに包まるように」
「カバンちゃん!?」
「ところで竜、お前の名前は?」
『ぼくはフレア!赤竜の谷のフレアだよ!キミの名前は?』
「フレアよ、俺の名前を聞くのはまだ早い。お前は俺に屈服していない。お前は俺の下に付く事を承諾したが、心のどこかで俺を舐めている。言っていることがわかるな?」
『そ、そんな事無いよ!お友達になろうよ!』
「駄目だね。俺が上、お前が下だ。問答無用!飛燕竜尾脚!」
得意技で蹴り飛ばして距離を取った。右手にはカバンちゃん推薦の直刀を握っている。
お仕置きわからせタイムの始まりだ!!
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