第6話 4歳 鬼狩り
懸賞金と熱いバトルに釣られて鬼狩りが確定した。
「東の森か…東?……東ってどっちだよ」
「あー、丁度領都に向かう護衛依頼があるから着いて行ったらどうだ?護衛代は出ねぇが」
「遅そう」
「なら一人で走っていけよ」
迷ったがついていく事にした。俺はウルトラ強いんだが見た目は4歳(ガチムチ)なので商人の護衛仕事なんかは色々面倒なんだ。今回は既に護衛枠は埋まっているし面倒なので無料。それでも身の程知らずとの衝突はあるわけで。
「おいおい!ガキのお守りまで引き受けた覚えはないぜ!」
「いえ、彼はギルドの知人から同行を頼まれただけで」
「同行者が増えるんなら契約違反だ、代金は増やしてもらうぜ」
こんなしょぼい護衛依頼で揉めてまでちょっと増額してもらって何になるんだよ。
「おいガキィ!おまぇもなんとか言えや!」
「ふむ、雷光脛砕きぃ!」
短い足からノーモーションで繰り出される超高速ローキック!しなる脚が最高速度に達した時、蹴り上げた砂が摩擦により電荷する事で雷光を放つ!様になる予定。
ボギャァァ!!
「あああぁぁおおおぉぉ!」
「安心しろ、峰打ちだ」
骨は砕け散りやべぇ状態だ、つまりはこいつはここで脱落。
「こいつは置いていこう、この闘いにはついていけない」
「そのようですね。出発!」
流石商人、判断が速い!
大変な怪我だがここはファンタジー異世界。あっさり治るはずだ。金はかかるだろうがな。真面目に稼ぎなさい。
荷馬車はパッカパッカと進んでいく。馬車には御者と商人の二人だけが乗って他は徒歩だ。そんな狭い御者席にお呼ばれして座ることになった。俺重いんだけどな。馬さんすまん、頑張れ。
「先程は素晴らしい手際でしたね。かなりお強いのでは?」
まだ4歳の俺にこの口の聞き様。こいつやり手か?
「商人殿、俺はハイパー強いのだがまだ4歳なのだ。誰かの紐付きになる気はない」
「なるほど、では縁だけでも繋いでおきたいですな。これでも色々扱っておりまして、なにか必要な物はありませんか?」
「ふむ、実はもうすぐ弟か妹が生まれるんだが、思いつく限りの物は既に用意してしまったので特にはないんだ」
「それはおめでとうございます。では滋養のよいものなどはどうでしょうか。うちでは薬品も扱っております」
「ありがたいが母者は薬師でなぁ……あ、商人殿は職業を変える方法を知っているか?」
職業変更についてはずっと調べているが分からないんだ。もしかしたら格式高い神殿で1からやり直す覚悟が必要なタイプかもしれん。
「職業?ステータスの職業ですな。それなら王都のギルドに行けば変更出来ますよ。戦闘用のジョブであれば傭兵ギルドか冒険者ギルドの管轄です」
「ほう!それはありがたい!ありがとう商人殿。ずっと方法を探していたんだ!」
ありがてぇ!これで複数ジョブを上げていける。ステータスボーナスは引き継ぎかなぁ?半分とか最悪アディショナルボーナス(微)もあり得るよなぁ。
「いえいえ、それなりのお金が必要になりますからな。噂では方法さえ知っていれば簡単に変えられるという話もありますが、どうですかな」
やり手の商人殿は話が早いぜ。重要な情報をいただいたのだ、いずれ礼はさせてもらう。
無駄な時間になるかと思ったが商人殿の話は存外面白い。考えてみると生まれ落ちてもう4年になるというのに俺の行動範囲は田舎で限定されていたんだな。反省だ。
そんなわけで色々と有益はお話をしていたわけだが。
「鬼だ!鬼がでたぞー!」
雇われ冒険者共が騒いだので思い出した。そうだよ鬼を狩りに来たんだった。
まぁとりあえず冒険者共が蹴散らされるのを待つか。後で取り分とか言われても面倒くせぇから。
「抵抗しなければ殺しはしない!荷物を見せろ!」
鬼のリーダーっぽいのが話している。随分お優しいことだ。周囲には5体の鬼を侍らせている、どれも鍛えられたいい体だねぇ。
赤い肌に更に赤い髪、そして赤い目と小さな角を持つ紛うこと無き鬼。
なるほど美人、少々筋肉質で肉肉しいが生け捕りしたい気持ちわかるわぁ。
「抵抗はしない。荷物を見たいなら見ろ」
冒険者が馬鹿なことをほざいている。商人の方を見るが小さく頷いており、これは打ち合わせ通りだったらしい。まぁ俺には関係無い、獲物にする気がないなら面倒がなくていいや。
「俺の目的はあいつらだ、あんたらがいらないなら俺がいただくぜ」
馬車から降りて少し離れる。どうやら鬼共は本当に馬車の中を調べている様子だ。何がしたいんだ?何か探している様子に見える。
「そこの子供!何をしている!」
「俺はこいつらとは関係ない、用事があるのはお前らだ。こいつらが行った後にしようぜ」
「お前もこいつらに攫われたんじゃないのか!?」
「あぁ?そんなわけあるか」
お前も?てことは誰か攫われたか?
殺しをしない荷物も奪わない、捜し物があって商人を襲う、そんでこの美人の鬼を欲しがる商人ギルド。これだけ揃うと鍛え上げた灰色の脳細胞が黙っちゃいねぇ。
「商人殿、ギルドは誰かを攫ってるのか」
「……人を攫うのは法に触れます。ですが他種族であれば……」
あちゃー、折角いい縁が出来たと思ったのにな。
「いいぜ、お前らはもう行きな。ここで見たことは全部忘れろ」
「子供!何を言っている」
うるせぇな、今ムカついてんだよちょっと黙れや。
俺は男勝りの狂犬姉ちゃん分からせショタとして楽しむ為にここに来たのに、なんでこんなにイライラしなきゃならねぇんだ。
「何言っても納得しねぇだろ、俺が相手をしてやる。かかってこい」
安心しろ、手加減は慣れてる。
「人間の餓鬼ぃ!舐めた口を叩くな!」
「お、おい!やめろ!」
取り巻きの鬼がぶち切れて棍棒で殴りかかってくる。殺しに来るならぶっ殺してもいいんだが、クソ甘鬼女に免じて特別に勘弁してやる。
「死ね!」
棍棒がゆっくりと迫る。あぁ汚ねぇなぁ、ぶっ飛ばしたいがここは我慢だ。
ガンッ!バキャァァ!!
「な、なんだぁ!?」
こんな攻撃は避けるに値しない。鍛え上げられた筋肉は限界を超え、その密度を極限まで増して体中全ての場所で息づいている。ミチミチに満ちた筋肉の比重は既に白金を超えており、体重は1トンを優に超えている。全身は鋼鉄よりも硬い!!
間抜けな鬼は鋼鉄の塊を殴った様な物だ、雑な作りの棍棒は一撃で弾け飛んだ。
「馬鹿が、そんな棒切に頼るな。これが男の武器だ!メガトン・ドロップキーック!!」
鍛え上げた超重量ボディから繰り出される長滞空ドロップキック!相手は死ぬ!
「あ、いかん」
「ぐあぁぁぁあぁぁぁ」
ギリギリで手加減を思い出し、鬼の腕を粉々にして致命傷ギリギリ手前で留めることに成功した。
「ふう危なかった。手加減が成功してよかった」
「手加減・・・だと?」
「来な、心の底から屈服させてやる」
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