第5話 4歳 もうちょっとで産まれそう
たぶん4歳になった。
母者の腹は大きく膨れていてすぐにも生まれそうだ。とても楽しみにしている。
朝から母者のために肉と玉子を調理した。栄養満点の飯を食って元気な子供を産んでくれ。
「アレキサンダー、今日もありがとう」
アレキサンダー、大層な名前だろう?俺が自分に付けた名前だ。将来は偉大な王となる決意で名付けた。略称は許していない。
母者とは仲直りして良好な関係を築いている。俺が毎夜魔物ハントに勤しんで稼いだ金を家族に還元した事で、二人の間の溝を金で埋めたのだ。
汚いという事なかれ、俺は産み育ててくれた感謝の気持ちに誠意を込めて形にしただけだ。目に見える愛情が母者の心を溶かした愛の物語、のはず。
「今日も町に行ってくるよ」
「しっかり稼いできてね、お金はパパに見られないように、出来るだけ金貨にしてね。先月は前月比+23%だったわ、今月も2桁成長を期待していいのかしら。この子のためにまだまだお金が必要なの」
ちょっとお金に煩くなってしまった気がするが俺のせいじゃないだろう。きっと母者は商人気質なのさ。
夜の間に狩った魔物たちを町まで売りに行くのが日課になっている。以前売りつけていた村長は毎回ブラフをかますのでついカッとなって浮気をバラしたら居なくなった。埋められてるのか逃げたのかは知らん。
町までは隣村で1泊して合計2日かけて歩くらしいが、俺にとっては朝のランニングにも足りない距離だ。最近じゃ村に近い町へ転々と魔物を売りに来ている。
今日も荷車に肉塊を満載して町にやってきた。
「ご苦労さまです!」
今日も元気な門番くんだ。俺を舐め腐って獲物を奪おうとしていた頃が懐かしい。
何も知らないパンピーがおかしな目で見ているが許してやろう。だが行動に移した瞬間にお前の全財産は俺のものだ。
勘違いした弱者達を無視して魔物を買い取ってもらうために冒険者ギルド出張所へ向かう。
冒険者ギルドは何をやっているのか謎の組織だ、なんか魔物を買い取ってくれている。ゲームだと仲間を募る場所なんだが、ここは出張所だからか特に登録とか無かった。
カランコロン。
いい音だ、冒険者ギルドってのはこうじゃなくっちゃあな。殺伐とした雰囲気、酒と血の混ざり合う香りがたまらねぇぜ。
「あれ?僕くん間違えちゃったのかな?ここは冒険者ギルドなの、危ないから早く帰ったほうがいいよ。それともおうちがわかんなくなっちゃったのかな?」
ざわっ……、ざわっ……。空気がひりつくのを感じる。なんだこの女、新人か?それにしても俺の引いている荷車が見えねぇのか。イカレてやがるぜ。
「おねえちゃん!ぼく魔物を売りに来たんだよ!ぼくもう4つだからね!」
「あらぁ!おつかいなの?立派なのね。でもここは危ないからあんまり一人できちゃダメよ」
「はぁい!」
「ふふっ、いいお返事ね。じゃあ一緒にあのおじさんのところへ行こうね」
新人の姉ちゃんが手を差し出して来たのでノータイムで握りしめる。
くっくっくっ!やっぱりおねショタは最高だぜ!!!
この場合ショタは偽物だが何も問題ない、ショタを思うお姉ちゃんの気持ちは本物だからだ。そもそも本物のおねショタでもショタ側には興味ねぇからな。
「ブフォッ!うぐぐぐ!」
「おいっ!馬鹿やめろ不味いぞ!」
馬鹿が!この状況を潰しやがったら腕の一本や二本じゃ済まさねぇぞ!!これでも喰らえっ!
「ぷっ!」
口元に拳を当てて空気弾を打ち出す!緩く握った拳の隙間から飛び出したそれは哀れな冒険者の顎を撃ち抜き、脳を揺らされた冒険者の意識を飛ばした。
ガシャアン!
「わわわっ!大丈夫ですかロビンさん!」
「大丈夫!大丈夫だから!こいつ昨日寝て無くて急に眠くなっただけだから!そのお子様を連れて行って差し上げて!頼むから!お願い!」
かなり手加減したが上手く行ってよかった。本気でやるとプラズマ化して着弾と同時に爆発してしまうからな。運の良い野郎だ。
「ここが買取をお願いするところよ、ダックさ~ん!お客様ですよ~!」
新人の姉ちゃん、略して新姉が買取のおっさんを呼んでくれる。あ~^初々しいんじゃぁ^~。
「おうおめぇか、今日も大量だな。一個ずつ見るから順番に置いてくれ」
はあ、新姉との遊びもここまでだな。短い潤いだった。
「そんじゃ上の小さいのから、鳥とうさぎとコウモリ、それとイノシシが3と熊が2だ」
専用カウンターに順に乗せていく、買取のオッサンは1つずつチェックして荷台に載せ替えていく作業だ。もう何度もやっているのでお互い慣れている。
「ダックさんのお知り合いですか?僕くんすごい力だねぇ!お姉さんびっくりしちゃった!」
「ありがとうおねえちゃん!僕いっぱい練習したんだ!」
買取のおっさんが目を白黒させていたが睨んで黙らせた。おめぇは黙って精算するんだよぉ。
「じゃあお姉ちゃんお仕事があるからね、気をつけて帰るんだよ」
新姉は自分の持ち場へ戻っていった。新人の癖に中々度胸のあるやつだ、ギルドで働かせるには勿体ないぜ。
「おめぇさっきのはなんだよ、腹ん中ひっくり返るかと思ったぜ」
「俺の趣味だ、とやかく言うんじゃねぇ。それより母者からもっと稼げとせっつかれてんだよ、稼ぎになる話を知らねぇか」
「ふーん、丁度いいのがあるぜ。ちょいと東の街道沿いに鬼が出て商隊が襲われるらしい。護衛の仕事もあるが、おめぇならそいつら探してやっちまえるんじゃないか?商業ギルドから懸賞金が出てるぜ、なんと生け捕りで金貨500枚だ」
いい話じゃあないの。今日の稼ぎが金貨32枚、そいつら退治して半月分程度稼げるなら悪くない。
「えらく羽振りがいいじゃないか、理由は?」
「単純に強えぇらしい、腕利きが何人も返り討ちになってるんだと。毎回の護衛料も馬鹿にならんし、ギルドの連中がどうしても捕まえたがってるって話だ」
「そんなに強いのか」
「あぁ、みんな強えぇが特にリーダーがな。燃えるような赤髪の美しい鬼女らしい」
ほう、おねショタバトルというわけか。こいつはぶち上がるぜ!!
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