第12話「風が吹けば桶屋が儲かる。幼女を助ければ、色々助かる。」


第十二話 「風が吹けば桶屋が儲かる。幼女を助ければ、色々助かる。」



「……もう子供だけであんな森に入っちゃいけませんよ?危ないですから。」

 森を抜けだしたルーナは、まず子供たちを叱った。といっても、優しく、軽くであったが。


『さーせんしたーーー』


 子供達は、ルーナにぺこりと頭を下げる。

「よろしい!遊ぶのは結構ですが、危ないことはダメですよ?じゃ、ここは危ないから村に戻りなさい。」

『へーーい』

 ぞろぞろと、子供達が村の方へ向かっていった。メイはその一行には加わらず、ルーナに駆け寄った。

「おーーい!メェエエエエイ!来ないのかァァ?」

 村へ向かっている集団の内の、男の子がメイに呼びかける。

「大丈夫で~~す!」

「おっけ~!じゃあね~~!!!」

「じゃあああね~~!!」

 男の子に手を振り終わると、メイはルーナに向き直った。

「助けてくれてありがとうございます!」

「ううん、気にしないでいいよ~。ところで、メイちゃんは、あの子たちと帰らないの~?」

「はい。ルーナさんにはお礼をしなくちゃですしね!メイちゃんの家に招待するのです!」

「え?お礼なんていいのに~」

「いえいえ、させてもらわないとメイちゃんが怒られちゃいますから!」

「そうお~?」

「そうです!」

「じゃあお邪魔しようかなぁ」

「やったあ!こっちですよルーナさん!!」



「あら、メイちゃん!お帰りなさいね~!」

「ただいまです~」


「メイちゃんじゃないか!さっきヤン坊たちが帰ってたが、一緒に遊んでるんじゃないのかい?」

「そうですよ!でも今はこのお姉さんを案内してるんです!」

「あら?そちらさんは、……旅人さんかい?」

「ルーナさんです!森で迷ってたところを助けていただいたんです!」

「そうかい!そりゃ~うちのメイちゃんが世話になったね~!ありがとねー」


 帰路。メイに話しかける村人の多き事アイドルが如し。


「おっ!メイちゃん!!遊んだ帰りかい?」

「あっ、ヤンおじさん!そうですよ~!」

「ほれ、これうちで取れたけ、もってき」

「ありがとうございます!おじさんのミカンは美味しいですからね~」

「ん?メイ、そっちのは?」

「そっち……ああ、ルーナさんです!」

「はあ?るぅなあ?よそもんが何故にメイといっしょんおっちゃ?」

 ヤンおじさんと呼ばれた、不機嫌そうな顔の初老の男が、ルーナを睨む。

「え、えっと……」

「ちょっとおじさん!!ルーナさんは怪しい人じゃないですから!森で迷ってるところを助けていただいたんです!!」

 メイがそういうと、おじさんの表情が緩み、

「……そ、そうか。メイも知らんやっちゃついていくんは良かながど。」

 といって、踵を返してしまった。

「あの方も、いい人ですから……その、」

「分かってるよ。知らない人と歩いてたから心配になっただけだよね」

「はい、その……」

「おーーい!誤解してすまんかったのお!!」

 後ろから、先ほどのジジイの声が飛んできた。

 そして、ミカンも。

 ルーナはすかさずミカンをキャッチする。

「お詫びと言っちゃあなんだげんどよ!すまんがったのぉ!」


 その後も、メイは誰かと会うたび村人から何かしら声をかけられていた。どうやら、メイはこの村で相当かわいがられているらしい。

「メイちゃんは人気者なんだねー」

 ルーナが感心する。

「声をかけてくさるのは、皆さんがいい人だからなだけですよ!」

「いいこだねえ」

「……うーん、そうやって言われると恥ずかしいですよお。――――あっ!ほら着きましたよ!ここです!」

 メイが指さす。

「ここがメイちゃんのおうちかぁ!……ってあれ?」

 指差したその先には、二人の男が立っていた。

「おお、ルーナ殿!!どうしてここに?」

「武蔵さん!それにカガネさん!」

「どうも。おや、ルーナさん、そちらのお嬢さんは?」

 二人はメイを見てそう言った。

「あ!この子、メイちゃんっていうんですよ~!!」

「どうも~!メイちゃんでーす!」

 挨拶をしながら、ぴょこんとお辞儀をするメイ。

「して、何故にルーナ殿がここに?」

「この子の家らしくて、お呼ばれしたんですよ~」

「この娘の家……?だがここは、」

 武蔵が言い終わる前に、玄関から誰かが飛び出してきて、メイのほうへ駆け寄った。

「おお!メイ!!ヤン坊達と遊んできたんだろう!どうだ、楽しかったか?」

「え?!ホウジョーさん!?」

 ルーナは慌てて、ホウジョーが出てきた家を見てみる。

 なんと!ホウジョー邸ではないか!


 ホウジョーはルーナに気が付くなり、眉間にしわを寄せて、

「アンタ方、いい加減にしてくれ!!カタナはやらんし、話すことももうないぞ!!」

 と、怒鳴ってきた。

「え?あれ??どういうこと??」

 困惑するルーナをよそに、ホウジョーが続ける。

「おれだってアンタらを追い払えるならウォニガ島の情報だってなんだって教えてぇがよ、一族の掟で話せねえんだ!わかったろう!」

「もう!おじいちゃん!!ルーナさんに向かってなんて態度なんですか!」

 メイが、ホウジョーに向かっていった。

「おじいちゃん……じゃあ、メイちゃんって」

「あ?おれの孫娘だ!」



「なんだ、そうだったのか。まあ、なんていうかなんだ?その、メイを助けてくれてありがとうな。」

「いえ、お気になさらず。でも驚きましたよ。メイちゃんのおじいさんが、ホウジョーさん……そうでした。ここには二人いるんでしたね。えっと、ホウジョー・ロウガさんだったなんて。」

 玄関先での出来事から数十分後。

 メイの説得によって、武蔵一行はホウジョー家の敷地を跨いぎ、畳に座ることを許された。

 ホウジョーの機嫌は、ルーナたちの話を聞いたらすっかりよくなってしまい、お茶をすすっている。

「まあな。似ていないとはよく言われるもんじゃ。」

「いやいや、そんなこと……」

 ない。とルーナは言おうとしたが、メイとロウガを見比べてるうちに、確かに似ていないなと思えてきた。

「まあ、そのだな。ルーナさんは孫を救ってもらった恩人ってわけじゃが。お礼もせず追い返しちゃあ、ホウジョー家の名に恥じるってもんだ。なんかして欲しいことはあるかの。カタナだけは勘弁してほしいがの。」

「では、その……『ウォニガ島』について、お教えしていただけますか?」

 ウォニガ島。その語を口にすると、ロウガは顔をしかめた。


「『ウォニガ島』か……。」


・・・つづく・・・

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宮本武蔵は異世界転生しても最強だった件 大魔王 @zyoka

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