マジンと勇者

蓮谷渓介

第1話

 「じゃ行ってきます」

 母に背中を見送られ、仲間共に旅へ出る若者。


 この世界にはマジンという存在があり、マジンはマモノを統率し、使役し、世界を支配しようと動いていた。

 人々はそんなマモノたちに持ち前のマホウや武力で対抗して来た。そしてその内にマジンに対抗すべく勇者が現れ彼の地へと旅立つのだった。そして暫くの後、マモノの活動が鎮まり世界が平和になったところで人々は勇者がマジンを倒したのだと、初代勇者生誕の地であるアルモファにある伝説の女神象の下で歓喜の宴を催した。その宴に勇者は居ない。

 初代勇者オルディアンから今まで、帰ってきた勇者は居ないのだ。伝説の女神像はオルディアンの恋人がモデルだと言われているが思い人が帰らないからか心なしか悲しげな表情を浮かべている。

 悪しきマジンと正義の勇者、それが伝説となり、人々の記憶から消え去ったころ、マジンは復活し人々を苦しめ始める。

 そんな事を幾星霜繰り返したある時代。今代のユウシャも同じように、打倒マジンを掲げ彼の地へと旅立っていた。

 今代のユウシャの名はアレン。村の近くにある試練の洞窟の奥深くに鎮座する英霊の像、ティポ像から認められた若者だ。その証拠に天啓を与えてくれると言う妖精の「テイル」がアレンの肩に座っている。

 マジンの住まうマジン窟までの道程、それは長く厳しいものだった。特に伝説の武具を手に入れるのには骨が折れた。

 北の果て、極寒の地にある白雪の祠での戦いで手に入れた白鏡の盾。魔力を封じるという。

 南の果て、灼熱の砂漠にある古代遺跡に眠っていた破邪の鎧。魔の力の一切を無効にするという。

 東の果て、地下世界にある王国の国宝だった光の冠。常に健常でいられるという。

 西の果て、一番苦労したのはここで、適当に彷徨っていた時に立ち寄った孤島に放置されていた神代の剣。勇者が振るえば魔の者を一撃に伏すと言われるその剣ではるが、他の武具には見張り役として強力なマモノが居たのに対して何もなく放置されているとは思いもよらず、偶然見つけるまではこのまま一生見つからないのではないかとすら思った程だ。

 そして今、その全てを持ってユウシャはマジンと対峙しようとしていた。

 ユウシャには仲間が居た。

 清廉な僧侶ルー。

 聡明な賢者ソル。

 そして伝説の武具を身にまとった勇敢なる者、勇者アレン。

 意を決して遂にマジンと相対したユウシャは意外なその姿に唖然とした。

 マジンと言うにはあまりにもそれは人間だったのだ。

 もっと、トゲトゲしく、角があり、尻尾や羽根がはえ、世間一般に語られる悪魔の様相を呈していると思っていた。しかし目の前のそれはトゲも、角も、ましてや羽根尻尾など何処にもなく、金髪の、普通より逞しい程度の壮年の男がそこにいた。

 「ふふ、来たなユウシャ。早速で悪いがお前達にはここで死んでもらう」

 そこら辺にいる若者と何ら変わりない口調、アレンと年も近そうだ。

 ゆらりと動き手近にあった一振りの剣を手に取り男はアレン一行に切っ先を向ける。

 「出来るものならな! 行くぞ!」

 アレン達は勢いよくマジンへ飛び掛かる。神代の剣を振りかぶり、思い切りマジンを袈裟切りにする。しかし、マジンの剣がそれを流す。体制を崩したアレンは咄嗟に飛び退き間合いを取った。

 「この世には己が存在する理由があること、生まれてきたことに意味が在る、ということは知っているか?」

 不意にマジンが話しかけてくる。

 「何をそんなこと。みんなそう思って生きているんだ! それが運命! それが希望だ!」

 答えながらアレンは間合いを詰めていく。

 「ふはは、世界は思っている以上に合理的だぞ。例えばそうだな……」

 マジンは防護呪文を詠唱中のルーに向け手をかざし、その拳を握って天に向ける。

 「ひっ」

 ルーは喉を絞められたように声が詰まり、そのまま宙に浮いてしまった。

 「彼女は、僧侶だ。勇者に付き従う僧侶として、勇者とその本懐を遂げるために生まれて来た」

 そういうと手をパっと開く。ルーは同時に喉の締め付けから解放され、地面へと落下した。

 「そして、もう一人の、お前も同じだ、そこの賢者よ」

 一瞥食らったソルはその眼光に身が竦み動けなくなってしまった。

 「なんだ、そのまんまじゃないか。こうして勇者とともにお前を倒しに来たんだからな!」

 アレンは間合いを一気に詰めて切りかかる。

 マジンの肉体を捉えたと思った瞬間、剣の切っ先をマジンに摘ままれた。しかし、力で押し切ろうとするもびくともせず、逆に剣を自分の手から引きはがされて奪い取られてしまった。

 「ふふ、最後にお前だが……。お前は戦士だ。勇者では無くてな」

 「そんな、そんな訳……ない」

 アレンは這いつくばった状態から顔だけを上げてマジンを見る。言葉では否定しているがその表情には少し不安が入っていた

 「その証拠に、お前は身に着けている武具の本来の力を何一つ発揮してないだろう」

 「くっ」

 アレンは返す言葉が出てこなった。確かに、盾も鎧も冠も剣も、伝承にある程の力が出ず、上等な装備程度の能力しか感じられなかったのだ。

 「ティポも泣いているぞ」

 「ティポ様を知っているのか?」

 アレンのその言葉に力はない。

 「知っているとも。奴は私とともに魔神と戦った四人の選ばれし者の一人だった」

 マジンは遠くを見つめ、昔を思い出した様だった。

 「なんだって」

 マジンを倒すために来たはずの三人は、無防備に淡々と話すマジンにの姿を黙って見つめることしかできない。

 「お前は何者なんだ」

 アレンは薄々気づいていたが、しかし信じられずにマジンへ問いかけていた。

 「私か? 私は、オルディアン。勇者オルディアン」

 「オルディアン……」

 「そう、この世で最初の勇者。いや、ただ一人の勇者だ」

 驚きで目を白黒させてアレンは言う。

 「なんで、勇者がマジンなんかに。悪の手先になっているんだ」

 「手先ではない。話は戻るがさっき言ったようにこの世の皆は生まれ持った使命がある。この世の皆はほぼ例外なく使命を果たして死んでゆく。その使命の内容に気付くか気付かないかは関係ない。自分の子を残すとか、どこかの土地を開墾するとか、人それぞれだが大抵は普通に生きていればいつの間にか達成している。そしてその先に死があるのだ」

 「じゃあなぜ、お前は死なないんだ!」

 アレンは横やりを入れる形で問いかける。

 「使命を果たしていないからだ。……これを見ろ」

 マジン、いや勇者オルディアンは背後にある立像を指す。巨大で禍々しく、その悍ましい表情からは今にも断末魔の叫びが聞こえそうだ。そしてアレンは気付いた。

 「ま、まさか本物のマジン、いや魔神アスモデート」

 「そう、魔神は昔から死なずここにいる。俺が石にしたまま生かしているのさ」

 「なぜ、なぜだ? 生かすことに何の意味があるんだ?」

 アレンは力なく問う。

 「そうだな、では昔話でもしようか。 むかしむかし……」

 むかしむかし、とある国にそれは美しいお姫様がいました。

 王様、王妃様からも寵愛を受け、国民からも慕われた姫は翌日隣国の王子様との結婚式を控えていました。

 ところが、結婚式前日の夜、お城に魔神アスモデートを名乗るものが現れお姫様を石像へと変えてしまったのです。魔神は言いました。

 「姫を元に戻したくば我が配下となれ、世界をわが物にする手先となれ!」

 悪の手下になるか、姫が永遠に石像のままでいるかを迫られたのです。高潔で正義感あふれる王様は心が痛みながらも

 「され邪悪な魔神め! 貴様の言いなりになるわけには行かぬ! その息の根を止め、姫を元に戻して見せる!」

 「ふははは、面白い。では待っていようぞ。しかし、私も止まるわけには行かぬ。私の世界征服が早いか、うぬらの勝利が早いか。勝負と行こう」

 と魔神は不敵な高笑いとともに消え去ってしまいました。

 王様はさっそく魔神討伐の勇敢なる者たちを集めました。

 清廉な僧侶、ビアンテ

 聡明な賢者、ルーカス

 屈強な戦士、ティピ

 そして王国騎士団の中も最強と噂された勇敢なる者、勇者オルディアン。

 四人の選ばれし者達は打倒魔神の名の元に旅をし、途中、竜の谷での死闘、常夜の砂漠での知恵比べなど困難を力を合わせて乗り切り、やがて伝説に名高い武具を揃え、ついには魔神を倒しました。


 めでたしめでたし。


 「だからなんだ! 王国の話は知らないが大体は俺たちが小さい時によく聞いたおとぎ話と同じだぞ」

 納得がいかないアレンにオルディアンは言う

 「まあ民衆受けする部分だけが口伝され後世には仔細は変って伝わるものさ。しかし実際は……」

 むかしむかし、とある王国にそれは美しいお姫様がいました。

 王様、王妃様、国民からも愛された姫は翌日隣国の王子様と結婚式を控えていると言うのに心が晴れませんでした。

 「明日は結婚式、はあ、オルディアン様」

 そう、姫は王国最強騎士オルディアンと恋仲にあったのです。しかし隣国王子との結婚も政略結婚の意味合いが強く、王国のため姫もこれが自分の使命と納得させ受け入れるほかありませんでした。そんな中、悲劇は起こりました。魔神アスデモートが現れ姫を石に変えてしまったのです。

 「俺は騎士団の一員としてその場に行った。そして最初に石となった姫を見て思ったよ。美しい、とな。」

 オルディアンは遠い目をしながら話を続ける。

 そして王はさっそく打倒魔神のため、勇敢なる4人の若者たちは選び出し、旅立たせました。

 「なかなか大変な旅だったよ、なんの手がかりも無くマジン窟を探すのは。それにお前の持っている伝説の武具の神代の剣はいくら探しても見つからなかった」

 「その剣なしで、魔神を倒したのか?」

 アレンは唖然とした。

 「そうだ、それを探し求めているうちに強くなったんだよ。強くなり過ぎたんだ。魔神と出会ったときにはもう奴は相手ではなかった」

 とオルディアンは石となった魔神を見やる。

 「そして戦っている最中俺はふと思いだしたんだ。石でいる姫の事を。そして気付いたんだ。魔神を生かしておけば姫はあのまま、永遠に美しいままでいられるってことを」

 「なんだと?」

 「そうだろう? 姫はもとに戻っても望みもしない相手と無理やり結婚させられて、時とともに老いて醜くなりやがて死ぬ。それよりも、石でいれば望まぬ結婚をしないで済むし老いもしない。死ぬこともない。素晴らしいことじゃないか。幸い俺は石化魔法を習得していたから姫と同じように奴を石にすれば死ぬことはないと考えた。強くなり過ぎた俺たちには魔神を石にするなんて容易いことだったよ」

 そして、魔神が石化され封じられると、配下の魔物たちは力を弱め、日に日にその姿を消していき、各地から魔物掃討が進んでいることを聞いた王様は、魔神が倒されたものと思い宴を開くことにしました。

 勇者たちが帰らぬままに。

 「魔神を石にしてから数日ここに残った。なぜかってほかの奴らがやはり息の根を止めるべきだって言いだして聞かなかったからだ。俺はこのままでは魔神が殺されると思って、隙を見て皆に石化魔法をかけてみたら見事にみんな石になったよ。でも僧侶のビアンテはそういうものに耐性があるみたいですぐに石化が解かれてしまったから切った。ほかの奴も念のため、石のまま粉々にしておいた。で、しばらくしてから王国に戻ったんだ。そしたら……」

 勇者が魔神討伐から王国に戻ると其処は戦場と化していました。

王国は国力で隣国に劣っていて人質として姫を寄こし隷属するか、武力で攻め落とされるかの二択を迫られていたのです。戦争は避けたい王国は泣く泣く姫を嫁に出すとしたのですが石化は解けません。それを隣国は姫を嫁に出したくなくて渋っていると思いしびれを切らして攻め入って来たのでした。

 「城まで攻め込まれもう王国は終わりだった。せめて姫だけでもと探したら無傷だったからそのまま持って生まれた村へ戻った。そしてそこに女神像として安置したのさ」

 アレンが生まれた村に遠い昔から立っていた女神像は実は太古の王国の姫だったのです。しかも石化の呪いで石になっているだけで今まで生きているというのです。

 「しばらくして魔神の石化はある周期で弱まることを知った。そしてその周期と同じくして選ばれし使命を持った者たちが生まれることも知った。おそらく、達成していない使命を終わらせるために生まれるのだろうが、こっちはいい迷惑だ。強くなって魔神を倒されたらたまったもんじゃない。そこで俺は考えたんだ。」

 そう言うとオルディアンは近くの何処からか椅子を持ち出し腰かけた。

 「まず、ティポを蘇らせてすぐ石化させる。奴は全く耐性がないから石化が解けることは無い。その石像をアルモファの適当な洞窟の奥に設置して、試練の洞窟をでっちあげた。そして最奥までたどり着いた者の中からランダムで一人選ぶようにした。石になったティポには自我などないから目に千里水晶を仕込んでこちらから遠隔操作していたんだ。だからアレン、君が今ここにいるのは私の気まぐれなのさ。そして適当な妖精を一匹捕まえて洗脳魔法で案内役としてテイルを作った。おかげでスムーズにここまでこれただろ?迷ってる間に強くなられては面倒だからな」

 とテイルはオルディアンの方へひらひらと飛んで行った。そしてアレンの方をみて微笑む。

 なんと惨めであろうか、すべては仕組まれていたこと、アレンは相手の掌の上で踊らされていただけだったのだ。思い出したかのようにオルディアンが言う。

 「あと、気付いたか分からないが、ここにいる僧侶と賢者は間違いなく勇者の眷属としての使命を受けて生まれているが、アレン、お前は全く普通の、どこにでもいる戦士だ。なぜなら選ばれた使命を持った戦士はアルモファの地下深くに鎮座しているからな。さあ、おしゃべりはここまでだ」

 とオルディアンを徐に立ち上がり、神代の剣を手に取った。

 「探したぞ、この剣を。探してくれてありがとう。そしてさようなら、だ」

 オルディアンが剣を一振りしただけで空気が裂けかまいたちが発生し辺りを吹き飛ばした。しかしアレンは辛くもそれを避けた。

 「くそ、死んで溜まるか。ルー、皆の素早さを上げろ! ソルは爆炎マホウで援護してくれ!」

 オルディアンの一撃を避けたことで体の竦みが取れて動けるようになったアレン達はやけくそでも一矢報いろうと連携をとり反撃を図る。

 アレンは動き回り、落ちていた朽ちかけの剣で切りかかる。ルーは補助マホウで、ソルは攻撃マホウでそれぞれが必死に応戦する。

 「はは、無駄だ! おとなしく首を差し出せ」

 「俺はここだ!バカヤロー!」

 爆炎の切れ間にアレンの姿。

 「そこか!」

 オルディアンは思い切り剣を振り下ろすと先ほどとは比べ物にならない程の衝撃破が走る。

 「ぐああ!」

 アレンは限界まで速度を上げ、オルディアンの攻撃を避けるものの、避けきれず一撃を食らってしまう。そして力を使い果たしたアレンは地に伏せたまま立ち上がれない。

 「ふん、小賢しい奴だ。これで終いだ」

 オルディアンが最後の一撃を放とうとしたときアレンの頭に声が響く。

 「アレンよ。お前に使命を与えよう」

 なんだ、この忙しい時に。いや、何も出来ないし忙しくは無いか。

 「私はサーク、お前に世を正すと言う使命を与える」

 だから何なんだ、それは。俺は死にそうなのに、今更何を……。

 「この世界の狂った運命の流れをお前が正すのだ。オルディアンを、この世界を狂わせた元凶を滅するのだ」

 こんな状態で、何が出来ると……。悔しさにアレンは手に持つ朽ちかけた剣の柄を見つめ力一杯握る。

 するとどうしたことか、剣はみるみる輝き出しそれと同時に立ち上がる気力も湧き上がってくる。

 「な、なんだこの感覚は」

 アレンは片足づつゆっくり立ち上がる。そして手を握り感覚を確かめる。

 「……行けそうだ」

 「急に光りだしたかと思ったらなんだ。そんな細い剣で何が出来るというのだ!」

 オルディアンは再度剣撃を繰り出す。

 「はあ!」

 アレンはオルディアンが剣を振り切る前に目にも止まらぬ速さで剣を振り抜く。それでもオルディアンの方が力に勝るのか粉塵を巻き上げた一撃はアレンは吹き飛ばす。

 「なんだ、その輝きはただの目眩ましか? 非力なことに変わりないのか! はははは!」

 吹き飛ばされたアレンは静かに身体をゆらしている

 「くくくく……ははは! お前の大切な石像が大変なことになってるぞ!」

 とアレンは顔を上げ笑って見せる。

 「なんだと?」

 オルディアンは土煙が晴れたその先を見て愕然とした。

 「魔神が、魔神が粉々だ……。うおお! そんな、そんなああああ!」

 そこにはオルディアンが永遠とも思える年月守り抜いてきた魔神の変わり果てた姿、いや破片が散らばっていた。

 オルディアンは鬼の形相でアレンをにらむ。

 「お前えええ!」

 「はん、これで勇者の使命を達成、だな」

 「ああ、そんな、そんなあああ」

 オルディアンの体はみるみる内にやせ細り髪は白髪になりやがて抜け落ちていく。そしてついには干からびた白骨だけがそこに残った。

 今まで使命を果たすために保たれていた若さや力は魔神が倒された今その役目を終え、堰き止められていた老いが一気に押し寄せたのだった。

 「使命を果たせてよかったな。勇者さんよ」

 アレンはそう言うと神代の剣を白骨となったオルディアンの上に突き刺し墓標とした。

 「さ、美しいお姫様の顔でも拝みに行きましょうかね」


 初代勇者は転生を繰り返した選ばれしもの達とともに、形はどうあれ打倒魔神の使命を全うしました。

 一方倒された魔神の方はどうでしょうか。

 勇者が使命を意図して果たさず生きながらえていた間、魔神の使命も果たせずに留まっていました。

 そして初代勇者の企みのために生かされていた魔神が死んだ今、魔神の使命の歯車が動き出したのです。


 これは初代勇者と魔神の使命の輪の物語。


 しばらくして次代の魔神が生まれ、またそれに呼応して勇者が生まれる。

 一つの使命の輪が回り終えると、新しい使命の輪が回りだすのです。


 アレンは歴史上はじめて帰還した勇者として名を残すこととなりました。

 その後、アレンがどうなったかは断片的な記録が各地に残るのみと多くありません。

 それはアレンが留まることなく旅をつづけたからとも考えられます。

 なぜ、世界をめぐる旅を続けたのか、それは誰にも分りません。しかし、残る記録では、

 「アレンというもの、神意の剣を振るい魔の者を掃う」

 とあったり、なかったり……。


 なにはともあれ世界に平和が訪れました。


 めでたしめでたし。


 次の魔神が生まれるまでは。

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