IRAWO
mufuji
IRAWO
魚が笑っている。
遠い水面、刺すような白い光を背にして影を揺らして笑っているのだ。水の泡を吐きながら鰓を痙攣させ、水底の死体を見ては笑っている。
黒く煤けた死体は、魚の目に晒されて海の裏に横たわっていた。乾ききった目玉を僅かに動かし、半ば溶けかけた水晶体は魚の腹を確かに捉えた。伸ばされた手を追うようにして、無数の影が魚へと迫る。
沈んだ船の中、漁はまだ終わらない。
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