第一章 争いのはじまり
第二話 言動は計画的に
大演説の熱気冷めやらぬ大広間。
先程までいた臣民の姿はもう無く、二匹の虫がただぽつんと
「……カマドウマ大臣」
「どうされましたか、大王陛下?」
「分かるだろう? 我が何を言いたいか」
「はて、分かりかねますな」
少しニヤついて大臣は言う。
まあニヤつくといっても、ヒトほど表情筋があるわけでもない。
ただ鬼の牙を限りなく細く小さく模したような
「はぁ、まったく大臣は……。人格、いや虫格以外は完璧なのになぁ」
「いやはや、実務の才をお褒めに預かり
う、うぜぇ~~~~! この大臣、うぜぇ~~!
なんかもう
……っていやいや、今の議題は大臣についてではない。本題に戻さなければ。
「大臣、今日の演説のことなんだが――」
「ニンゲンを配下にでしたか。また随分大きく出たようですが、陛下は人間界を支配するための具体策を何かお持ちで?」
やっぱりこの大臣、気付いていやがる。
「……我が案を持ってるとでも?」
「大王陛下のことです。何か持っていても不思議ではないかと――」
「おべっかはいい。お前のことだから何か妙案があるのだろう?」
大臣は何もしゃべらない。
まさか案がないのか?
おーい大臣さ~ん。
このままだと我、
それでも大臣は何もしゃべらない。ただ触角を激しく動かすだけだ。
……おいおい、まさか本当に何も案がないのか? ヤバい。それはヤバいぞ。
だって我もう臣民に、「人間界を侵略せよ」って大見得切りまくっちゃったよ。
おかげで臣民達、ニンゲンを攻撃したくてウズウズしてるんだよ、発情期みたいに。
あんな盛りのついた
「……カ、……ヘイカ、……大王陛下」
「うわっ! な、何だね大臣」
「案を奏上するタイミングを伺っておりました」
マジかよ。だったら黙らず最初から言ってくれ。
案がないのかと思ってビビッてしまったではないか!
と、とりあえず平静を装わなければ。
「そうか。それで、我が納得する案なのだろうな?」
「もちろんでございます」
大臣は自信ありげに触角を動かす。
「ワタクシの案はシンプルです。
まずは少数のニンゲンに対し攻撃を仕掛けます。そして強さを見せつけることで、ワタクシ達を敵にしたくない存在だと思わせればいいのです」
「そして我らに抵抗しないニンゲンを段々増やしていこうということか?」
「はい。その通りでございます。」
確かに言いたいことは分かる。だが……
「大臣よ、ニンゲンに直接攻撃しても大丈夫なのか?
奴らは強い。反撃にあったりしたらそれこそ――」
「その点は大丈夫です。ニンゲンを殺すほどではないけれども確実にダメージを与えられる虫に任務を任せればよいのです」
「ほぉ、そんな任務をこなせる臣民などいるのか?」
「おりますとも。ぴったりの虫が」
大臣は再びニタリと笑う。
仕事の出来る部下につられて我もニヤリと笑う。
……やっぱり我、この大臣好きかもしれない。
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