第2話 聖女に会おう

 灯ちゃん。街に着きましたよ。


「あのね。さっきまで原っぱにいたよね」


 そうですね。


「私は一歩も歩いてないんだよ!」


 そうですね。


「だから! そうですねじゃないんだよ!」


 そりゃすいませんね。


「投げやりだな! もう!」


 だってほら、灯ちゃんが歩くと天災になるし。触っただけで、大地を割るとか。ないわ~。


「誰がこんな体にした!」


 今や灯ちゃんは『ガラビコブレビッチャ』なんですよ。


「なんて? ガラビコ?」


 白亜紀に存在したユーマみたいなもんです。


「しょうもない嘘をつくな!」


 ばれました。悲しいです。


「それも嘘だろ! それで何しに街に来たの?」


 いやまあ、端的に言いますと『聖女』っすね。


「聖女?」


 あいつ、他の神から祝福を受けたからって、調子に乗ってんっすよ。


「だいぶ口調が三下っぽくなってきたな」


 それで、いっちょしめてやろうかと。


「それを私にやれと?」


 そうっす。


「やめろ! 死人が出るわ!」


 今や灯ちゃんは、区の災害指定猛獣に認定されてるんです。


「はぁ? 何区だ! 言ってみろ!」


 アケラオタリ区ですよ。知らなかったんですか? もう直ぐ、この国から緊急避難警報が出されますね。


「猛獣が出た~って?」


 いえ。魔王の襲来だ~って。


「魔王じゃん! 私、魔王になっちゃってんじゃん!」


 はい。前魔王を倒したので、襲名してます。おめでとうございます。


「めでたくないよ! これから私、どうなっちゃうの?」


 あらゆる国の兵士から命を狙われますね。


「大変だよ。早く家に帰してよ!」


 帰してあげても良いんですけど。女神の加護を持ったままだと、日本が沈みますね。


「それがわかってんなら、加護とやらを外してよ!」


 いやですよ、つまんないし。


「おい! つまんないって言ったか?」


 そこで、聖女の出番なんです。


「だ~か~ら~、会話のキャッチボール!」


 聖女を捕らえて人質にして、国から狙われなくするんです。


「犯罪だろ! 拉致誘拐事件だろ!」


 大丈夫ですよ。たかが聖女だし。


「聖女にも人権をあげて!」


 そんな訳で、聖女の力でガラビコブレビッチャの力を抑制しようって事なんです。


「ガラビコ言うな!」


 規制しようと思ったんです。


「なんで言い直した?」


 いや、ツッコミがなかったもんで、つい。


「ボケにボケを重ねるからでしょ!」


 すみませんね。ボケとか慣れてないもんで。


「充分だよ! ボケ倒し過ぎだよ!」


 そんな訳で、聖女探しのスタートです!


「番組コーナーの始まりみたくすんな!」


 さて、移動しましょうか。


「私って、歩けるの?」


 ぷっ! 五体満足の健康体なんだから、歩けますって。


「そう言う意味で言ってんじゃないんだよ!」


 じゃあ、どういう意味なんだ、コラ!


「急に脅してくるじゃん」


 まぁ、それはさておき。灯ちゃんには浮いてもらいます。


「はぁ? 私って飛べるの?」


 何言ってんですか? 人が飛べるわけないでしょ!


「だったら紛らわしい事を言うな!」


 チート能力その二~。ちょっと浮ける体~!


「ちょっと浮けるって?」


 ほんの少し。だいたい十センチ位は地面から浮けます。


「ほんとに少しだな!」


 これで災害は避けられますね。


「チート能力その一を外してくれれば、問題は解決だけどね」


 そしたら、灯ちゃんは直ぐに捕まって打首獄門ですね。


「何時代だよ!」


 エロ時代ですね。


「そんな時代が有ってたまるか!」


 さあ出発しましょう。聖女は今。


「今で止めるな!」


 何をしてるでしょう?


「クイズにすんな!」


 答えは寝てます。


「夜かよ!」


 夜ですよ。周りを見てわからなかったんですか?


「説明とかなかったし」


 あれ? 今は夜ですって教えないといけないですか?


「挑発すんな!」


 チャンスなんですよ。寝込みを襲って攫っちゃいましょう。


「物騒だし、やだよ!」


 でも、目の前に聖女さんが寝てますよ。


「だから、急に移動すんな!」


 いやぁ~。街の散策場面とか書くの面倒じゃないですか~。


「何の話をしてるんだよ!」


 さぁ、起きろ聖女! 起きて我が軍の奴隷となるのだ!


「だから、止めろって!」


 寝顔が可愛いじゃないか。くそっ、こちとら可愛いなんて数千年も言われた事ないのに。


「いや。あんたAIみたいなもんとか言ってなかった?」


 なら、私に可愛いって言ってみろ!


「そもそも、あんたは何処にいるのよ。姿は見えないし、頭の中で喋って来るし。これじゃあ私は、独り言を呟いてるだけでしょ!」


 ププッ。独り言に見えますね。ボッチですね。可哀想ですね。


「そう思うなら、帰してよ!」


 はい。そんな訳で攫って来ちゃいました。任務達成ですよ、灯ちゃん。


「全部あんたの仕業だけどね」


 それにしても、この聖女は目を覚ましませんね。


「寝かしてあげてよ。ってか元の場所に戻してきなさい!」


 捨て犬を拾ってきた子供を叱る、お母さんか!


「ツッコミが長いなぁ」


 いや、まぁ。慣れてないもんで。


「それは良いけど、聖女さんを帰してあげてよ」


 嫌ですよ。それにほら、よく見てください。


「何を?」


 この聖女さんは、灯ちゃんのクラスメートですよ。


「はぁ? えっ? 高橋さん?」


 違います。蔵元さんです。


「だから紛らわしいっての!」


 蔵元さんは、違う女神にさらわれて来たんですよ。


「あんたのせいじゃないって事?」


 私は、AI的な何かです。


「まだ言うか!」


 取り合えず、仲間をゲットしましたね。


「ゲットとか言うな!」

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