第22話 普通に死ねるぞ、そんなもん!!
ボス討伐から何事も無く、俺たちは探索を続けていた。正直、ボス討伐を締めに持ってきたらいいのでは?と思っていたが、セオリー的にはそうではないらしい。数日に分け、最下層のボスを倒す。それこそ最も伸びやすいのだとか。
なるほど、とはなったが…まだまだわからないことは結構あるもんだ。
さてと…それはそれとして気になってるのはこれだ。
『課題―――――』
この表記の時はろくなことが起こらない。何かよくないことが起こるのは解るが…なんだって言うんだよ。
「どうしたの?カズキくん?」
立ち止まった俺に、七瀬さんがそう声をかける。
「いや…よく解んないんですけど多分…凄く良くないことがおきます―――――。」
「凄く良くないこと…?」
言語化が難しい。何が起こるのか、俺にもさっぱりだが、少なくとも…どうにも出来ない何かが…起こる。
七瀬さんも止まって気がつく。この場に、似つかわしく無い酷い殺気が漂っていることに。
「…何かが…来る…。」
七瀬さんが呟いた直後、上から怒号が聞こえてきた。瓦礫が降り注ぎ、土煙が立ち込める。
どうやら…ダンジョンの天井がぶち抜かれたようだ。
「あ、アスカさん!?」
「―――――おまえは、自分の心配をしろ!!」
どこかで聞いたことのある声とともに、土煙の中から大楯が飛んでくる。間一髪、それを回避する。
「チッ…とっとと死ねよ。蒼井 一樹。」
土煙が晴れ姿を表したのは…確かアマネと呼ばれていたか?
「あ、アマネ!?」
「アスカ、おまえは後だ。先にこっちをやるよう言われてるからな。と、邪魔だな。」
そう言うと、アマネは適当な石を手に取り七瀬さんに向かい投げる。いや、正確にはその機材にだ。
「見られちゃまずいんでな。配信はここまでだ。」
「アマネ…。」
「さてと…それじゃあとっとと死ねよ?蒼井 一樹。」
そうして、悪魔の猛攻が始まった。
圧倒的に速い。さっきのゴーレムよりも…いや、なんなら俺が戦ってきた相手で1番速いかもしれない。
『課題―――しゃがめ』
こいつがなければ、多分直撃していた。間髪いれずに次の指示が飛ぶ。
『課題―――下がれ』
この状態から下がれ!?無茶言え!!
「ぐっ…!!」
ともかく、体に無茶を聞かせ避ける。
「あ?なんで避けた?まあ、いい。いつまで持つかな!!」
単調な拳でさえ、多分当たったら死ぬ。だけど流石に首は切れない。だったら…。
隙を見て肩にナイフを突き刺す。
「え?」
「はっ、やっぱり口ほどにもないな。」
なんでノーダメなんだよ!?バケモン過ぎるだろ!!
「アマネは…即死攻撃じゃないとダメージが入らないの…。」
「ハァ!?」
なんだよそのふざけたスキルは!?じゃあ何か?俺はこのまま殺意むき出しの奴から逃げきらないといけないのか?
どこにそんな道があるってんだよ!?普通に死ねるぞ、そんなもん!!
「外野は黙っとけ。次はおまえの番だからな?」
なんでこいつ…このレベルの攻撃を繰り出しながら涼しい顔してしゃべれてるんだよ?化物過ぎる。
「チッ…あたんねぇ…。」
「はぁ…はぁ…やべぇな…。」
どうするのが正解なんだ?つっても俺のスキルは答えてくれませんよね!?こういう時。だって殺せねぇし、ダメージはいんねぇし…。
「オラァ!!なんで…あたんねぇんだよ!!」
なんて激情してるが避ける身にもなってくれ。普通に必死なんだよ!!あんな拳当たれば即KOだろ!?
「とっとと…死にやがれ!!」
何度も、何度も何度も、どれだけ避けようが殴る蹴るの攻撃は続く。いかんせんこいつ…速すぎるしタフすぎる。何よりの救いは武器がないことだ。それのおかげで間合いの管理が出きる。
が、正直言って俺ももう限界が近い。
死ぬ気で体をよじりながら動いてみてほしい。それを延々とだ。内蔵が引きちぎれるみたいに痛い。骨が体の中から皮膚を突き刺すみたいになるし、無茶苦茶に速い動きをしているせいで視界もぐらつく。
ここに流れ込んでくる、脳内に響く言葉の処理。こんなの一体…どうしろって言うんだよ…。
一瞬、視界と思考が歪んだ。駄目だもう限界かも…。
「これで終わりだァ!!」
腹に割りとでかいのを喰らってしまった。なんだよこれ…重い…意識が飛びそうだ。体が後方に吹っ飛ぶ。いっつも俺こんな役回りだ…あぁくそ…もっと力があれば。もっと…。
「ガハッ…!」
血生臭いものを吐いた。大きく吹き飛ばされ、ダンジョンの壁に激突する。駄目だ…立ってられねぇ。
ここが、限界かも知れねぇ。
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