陰キャ、外れスキルと共にダンジョンに引きこもる
烏の人
誰の為のダンジョン
第1話 いや、あの
ダンジョン…ファンタジーの産物であるその地下牢獄に夢を追い求めるものは数知れず。日夜探索者たちは未知なる資源、或いはまだ見ぬ強敵と相対するためにその牢獄に足繁く通う。そんな空想が現実の物となって早数年の月日が経った。
昨今においてはダンジョン内を配信しながら探索すると言うジャンルさえ確立され、エンタメとしての需要も満たす最高のテーマパークである。
どうだ?君もそう思わんかね?
―――――答えは否である。
「ダンジョン配信とかバッカじゃねぇの!?こちとら今日生きるので手一杯だっての!!」
そんな愚痴をこぼす。青白いスマホの画面とにらめっこをする。ダンジョン最深部とはいえ、電気も通っている上に電波も入ってくれるのだ。有難い。
俺がこのダンジョンに閉じ込められてどれ程月日が経ったろうか?拝啓、婆ちゃん。俺よくやってると思うよ。
ある日、突如として出現したダンジョン。地形の隆起を引き起こすため、ボロアパートごとダンジョンの最深部へと取り残された俺はなんとか生き残っていた。
ちなみにアパートは全壊。だが、運良く俺以外の人間は外出していたため被害者は俺1人。なぜ助かったかと聞かれれば、それはこの外れスキルに起因するものだろう。
「しっかし…役に立つのか立たないのか…。」
スキル『課題』
生き抜く上で今後の課題を提示してくれる。以上。
これにより俺が今まで助かってきたのは紛れもない事実だ。だけどさあ…流石に攻撃の1つも出来ないのは辛いって。まあ、最低限魔法は使えるみたいだけどね…火属性の灯火くらいなら。
ほんと、罠と岩だけで生き抜いてきた俺のサバイバル力よ。
生き抜く上での課題を提出するなら最強じゃん?何て思っちゃった?悲しいかな、俺の力じゃここから脱出できねぇんだわ。
ともかく、1度スマホを閉じ暗い天を仰ぐ。そろそろ狩りに行かなきゃならん。
「はぁ…空から女の子降ってこねぇかなぁ…。」
ここ最近の口癖がこれだ。随分と思考がイっちまってるが問題ない。だって1人だし。んてことで早速―――――。
「ああぁぁあぁぉああぁああああ!!!!」
「あ?」
頭上からの叫び声。ふと見上げてみると…あらら、空から女の子が…。
『課題―――特に無し』
このポンコツがァ!!なにもねぇ訳ねぇだろぉ!?
「てかこれ助からないってこと!?そう言うこと?開幕初手スプラッターとかやだよ?もうちょい健全で行こう!?」
何て叫んでもなにも変わらない。結果、その少女は地面と激突する。あぁ…後始末…嫌だあ…イヤだぁ!!
「いったた…。」
と、土煙の中から何事も無かったかのように少女は起き上がった。
「ああ!!私のカメラ……。」
なんてその残骸を見て嘆いているが絶対違う。そっちじゃない。
「え、あ、あの…?」
「え?人間…?」
なんで両方「?」なんだよ。
「驚いた、このダンジョンもうこんなところまで探索されてたなんて…。」
「いや、あの…。」
待って、今の俺気持ち悪いくらいに不器用…そうだよね数年ここに閉じ込められて人と話してないんだもん。当然だよ…まあ、閉じ込められる前からそうだったけど…。
「そうだ、私は
「あ、えと…
「蒼井 一樹…うーん聞いたこと無いな。失礼だけど、階級は?」
「あの!俺、探索者じゃないです…。」
「え?」
そう言うと、彼女は僕を上から下まで見回す。
「えぇぇえええぇぇええ!!??」
いちいちリアクションが大きいのは配信者だからなのだろうか?
さて、それからことの顛末を彼女に話した。どうにもいい人そうで同情はしてくれた。
「―――――そう言うわけで、できれば脱出したいんですけど…。」
「それについては私も同感だわ…まさか30階層まで下ったところであんなヘマしちゃうなんて…。」
30階層ってさらったと言ったけど…このダンジョン何階層まであるんだ?まあ、おおよそここが最深部であることには変わり無い。
「まあ、当面の目標はここからの脱出ね。よろしく。一樹くん。」
「ああ、ええ、よろしくお願いします。」
なんてぎこちなく返す。
「別に敬語じゃなくていいのに。」
そんなことを言うが、到底俺には無理な話だとつくづく思うのだった。
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