後編 光を紡ぐ者たち
「クハハ! やはりおれは最強だ!」
闇の力によって災害を起こしたことで自分を強いと思い込むレイン。
しかし、そこにアテムの声が響きます。
「
アテムが行ったのは場の属性を変換させる召喚符。
今まで闇のマナでじめっとしていたステージが、まるで清潔感の溢れる教会のような場所へと雰囲気を変えます。
「なんだと!!」
これにはレインも驚きの声を挙げ、アテムに目を向けます。
と、その瞬間。
バシィィン!!
レインの後ろから近寄ったティクビ団長が剣の鞘の腹で重いっきりレインの頭を叩きました。
「ぶべらっ!?」
全くの意識外から攻撃を受け、レインは気持ちいい程きれいに吹き飛んで壁に当たります。打ち所が悪かったのかその体はぴくぴくとして立ち上がるそぶりは見せません。
「や、やりすぎたかの?」
「やってしまっても別に良かったんじゃないのか?」
一応は王国の重要人物の為、思いっきり叩いて行動不能にしたことを心配するティクビ団長と、騒動の元だからと気にしないアテム。
どちらも正しいといえば正しいですが、その話は解決してからすべきでした。
「あーあ、もうやられちゃいましたか」
シュルシュル バッ
「ぐっ、これは!?」
「なんだと!??」
足元から伸びて来た謎の黒い触手により拘束されるティクビ団長とアテム。
二人が目を向けたそこに居たのは、八人目の大会参加者の少女のカンジャです。
「ふふ、地下通路で団長さんが戦闘じゃなくて口論で相手を倒し始めたときはびっくりしましたけど、ほぼほぼ計画通りいって良かったですよ」
「なんだと!」
カンジャはティクビ団長の単なるいちゃもんにしか見えなかった行動について語ります。
「あのお陰でこの国には資料だけでなく実際に【聖光使い】が居ないことが確定できましたし、これで国を落とすのに慎重にいかなくて済みます」
ヒョイ タッタッタ ドスン
カンジャは軽快な歩調で気絶しているレインを担ぎ、ステージの真ん中へと置きます。
「~~~~~~~」
そして、何やら呪文を唱え始めます。
「ま、まずい! あれは生贄を使う事で無理やり儀式を再開させる気だ!!」
「と、止めれんのか!?」
「駄目だ。両手がふさがっていてはドローが出来ない…」
ティクビ団長とアテムがどうにか出来ないか足掻く中、カンジャによって闇の召喚術が再開され、レインの身が黒い炎に包まれます。
「レイン殿ぉ!! 貴様!!」
「あれ、こいつは無能で役立たずだから死んでも悲しむ奴は居ないって思っていましたけど、そうでも無かったんですね」
ティクビ団長の叫びに笑いながら答えるカンジャ。
レインの体はティクビ団長とアテムが見ている前でぼろぼろに崩れ落ち、灰がステージ上に舞って散布されていきます。
「さあ、出でよ闇の魔王!! 私の命と引き換えに、このにっくき王国を滅ぼしたまえ!!」
ズシュゥゥゥ
カンジャは召喚の締めをくくる叫びと共に自らの胸元にナイフを突きつけます。
そして、その血がステージ上の召喚陣に触れた時、会場中を覆っていた黒い霧がステージの中央へ集まり、中心から何者かが現れます。
「グオオオォォォウウウゥゥゥ」
それは骸骨状の鹿の骨を被った様に見える、闇の塊の何か。
体の形は不鮮明で、黒い炎とも蠢く闇とも見える、数世代前の闇の魔王です。
ズウゥゥン
「う、ぐぅ」
「これは…」
ウ… ナンダコレ キモチワルイ
闇の魔王が現れたことで会場に居る人間は体力と魔力を奪われ、動くこともできずに倒れていきます。
特にステージ上に居るティクビ団長とアテムは影響が酷いのか、苦しそうな顔をしています。
「オロカナジンルイヨ。ワレヲヨビダシ、ハメツヲネガウトハ」
魔王とは魔力が高い物に付けられる二つ名の様なもので、実際に国を持ったり何かを従えている王という訳ではありません。
その為、魔王といえども人類と敵対している訳ではないのですが、この闇の魔王は人類を滅ぼすために闇の軍勢を組織した数少ない人類の敵です。
闇の魔王が居たからこそ、対抗する為の力の確認として光使いのライセンス(通称:光免許)が発行されるようになったという話もあります。
「マズハコノクニノオウヲコロス。ソシテユックリトシハイシテヤロウ」
闇の王はそう言うと、背中から闇の塊を伸ばして羽のようにはばたかせ、飛び上がろうとします。
「待て! 人に滅ぼされた魔王よ! この私から逃げるのか!!」
『王を殺す』
そう言った魔王を止める為、ティクビ団長は拘束されたままですが、思わずそう叫んでいました。
「ナニオ?」
「私が怖いから逃げるのだろう! ほら、そうじゃなかったら私から相手しろ!!」
闇に拘束された姿のまま闇の魔王を挑発するティクビ団長。
誰が見ても滑稽な姿ですが、アテムは何も言わず見守ります。
「ヨイダロウ。オマエカラコロシテヤル」
「そうだ、こっちに来い! 相手してやる!!」
ティクビ団長はそう言いながら、闇の魔王が自分へ近寄って来るのをよく見て待ちます。
そして、闇の魔王が自分の前に立ち、腕を振り上げた瞬間、全身の力を乳首に集めました。
「光れーー!!!」
ビカーー!!
「グ、グワァァ!!!」
ティクビ団長は今までにやったことがない『全力で乳首を光らせる』というのを行いました。
ティクビ団長の乳首から放たれる光はティクビ団長とアテムを拘束している闇を消し去り、ついでにティクビ団長の鎧の乳首部分にも穴を空けて光を放っています。
ティクビ団長は拘束されている自分に出来るのはそれだけだと判断してのことだったのですが、ティクビ団長の乳首はただ光る乳首ではなく【聖光乳首】と呼ばれる聖なる乳首だったのです。
「今だ、
ティクビ団長が現した乳首から溢れる聖なる光。
その光によって闇の魔王がたじろんだ隙をアテムは見逃しません。
この時の為、アテムはじっと耐えていたのです。
「マナコストは当然無視!! 効果は、墓地に居るすべての光属性キャラクターを戦場に復帰させるだ!!」
ピカー! ビカビカー!!
「帰ってきたぜぇ!! カケル様がよぉ!!」
ブオンブゥオン!!
虹色の光と共に『出光使い』のカケルが現れ、人型へと変形した魔導スポーツカーを駆り、闇の魔王へと飛び掛かります。
「ナンダト!!?」
「カケル様の愛車は光るだけじゃないんだぜ!!」
カケルはそのまま魔導スポーツカーのエンジンを吹かせ、魔王を抑え込みます。
ピカー! ビカビカー!!
「次は僕の出番ですね!!」
カシャンカシャンカシャンカシャン
次に現れたのは『鏡使い』のファントム。
現れると同時に周囲に魔力で組まれた鏡を展開し、ティクビ団長が放つ乳首の光を反射させ上空の一か所に集めます。
ピカー! ビカビカー!!
「ふふふ、私はその能力好きですよ、ティクビ団長」
ギュオンギュオンギュオン
そう言いながら現れたのは『空気使い』のエアー。
既にファントムが集めた光を空気を圧縮したレンズで凝縮し、闇の魔王へ向けて放ちます。
「アタルモノカァ!」
しかし、闇の魔王はカケルの魔導スポーツカーに抑えられながらも自らの肉体を変化させ、光が当たる場所に穴を空ける事で回避しました。
流石は闇の魔王。伊達ではありません。
ピカー! ビカビカー!!
「ふふ、まだまだ甘いでござるな。そんなことでは拙者らの連携は見抜けぬでござるよ!!」
闇の魔王が避けた光の着弾点に現れたのは、【
ドルオはウエストポーチから
「今こそ封印を解く時でござる!!
ドルオの声と共に
シュバァァァァァ!!!
「ティクビ殿ぉ!」
「応!!」
ドルオはティクビ団長の名前を呼びながら
そして、ティクビ団長は乳首を輝かせながら飛び、空中で
「グウウ! カラダガ!! カラダガウゴカヌゥ!!」
闇の魔王はティクビ団長からの攻撃を避けようとしますが、体を思うように動かせません。
それもその筈です。
「カケル様の愛車の馬力を舐めるんじゃねぇ!!」
「私の空間魔術は相手にも直接使えるのよ!」
「肉体固定マジックです! 種も仕掛けもありません!!」
「通常ドロー! マナコスト光5! 『太陽の首輪』!! 光属性を持たないキャラクター一体を対象とし、一切の行動を禁じる!!」
「ひ・か・り! ひ・か・り! ひ・か・り! ひ・か・り! うお~~~~!!!!」
【出光使い】【空間使い】【鏡使い】【光デッキ使い】【
「おおぉぉ! 喰らえぇぇぇい!!」
ビカビカビカー
ティクビ団長の本当の能力の【聖光乳首】の光によって、闇の魔王の行動は封じられているのです。
ズバァァァァ!!!!
「グゥオオオオオオオオオオ!!!!!!」
バタリ
闇の魔王は複数の【光使い】達の連携により、見事に滅ぼされたのでした。
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