幻影の乙女(♂︎→♀︎)は白百合の夢を見るのか?

アイズカノン

第1話 物語の始まりはいつも雑

桜色の花びら散り、緑色の綺麗な葉っぱが見える窓のある部屋に一人の少女?が鏡の前で固まっていた。


[少女?]

「あの……叔母さん、なんですかこれは……。」


縦長の置き鏡に写るのは黒髪のセミロングに青い瞳の少女……。

うん少女……。


[???]

「あらあら、似合ってるじゃないの。」


[少女?]

「だからって女の子の身体にする必要だったですか……。」


[???]

「ただ女装するだけじゃリスクあるでしょ。」


えぇ……。

この人は僕の叔母に当たる人で僕に変な薬を使って男の身体から、か弱い女の子の身体に変えた変態科学者。

名前は【橘都子たちばなみやこ】。

そして……。


[少女?]

「で、要件は?。」


[都子]

「この姿で女子校に行って欲しいの。」


[少女?]

「は?。」


[都子]

「給料はしっかり出すから、お願い。」


そういう問題ではない。

というか、なんで僕がこんなことになっただっけ……。



♡@♡@♡



あれは唐突な出来事だった。


[都子]

あまね!、女子校に通うわよ。」


思考がフリーズするようなワードが脳を貫いた。

何を言ってるだこの叔母は、僕は心も身体も男なのになぜ女子校に通う必要があるのだろうか。


[都子]

「あ〜、そのジト目は信用してないな〜。」


[周]

「信用してますよ。悪い意味で。」


[都子]

「やっぱり〜。」


そんな都子叔母さんをよそに僕はパソコンで創作百合の作品を漁っていた。

百合は良い。

可愛い女の子が同じ枠の中でイチャイチャしてるの良い。

今はまだガンには効かないが、時期に効くようになる。多分。


[都子]

「また百合漁ってるの。」


[周]

「好きなものは掘り出したくなるのだよ。」


[都子]

「自分でその輪中に入りたいって思ったことない?。」


[周]

「ないね!。だけど、百合を見守る観葉植物にはなりたいかな……。」


[都子]

「そんな君に良いものをあげよう。」


[周]

「良いもの?。」


[都子]

「じゃじゃーん。性転換薬〜。」


どこぞの青い猫型ロボットが摩訶不思議アイテムを取り出すかの如く、怪しい半透明の茶色の瓶を取り出した。

明らかに怪しい薬。

ラベルのない瓶と白い蓋が余計に怪しさを加速させる。


[周]

「なんですかこれ。」


[都子]

「何って、言ったじゃん。性転換薬。」


[周]

「いや、なんで!?。」


[都子]

「だってこの前、女の子になりたいってつぶやいてたじゃん。」


[周]

「言ったけど!?。だからってこんな薬よこして、エロゲか!。」


[都子]

「ふふ〜ん。そんなつべこべ言わずに飲め。」

「ふぐぅ……。」


こうして僕は有無を言う暇すらなく、強引に薬を飲まされて、気がついたら女の子の身体になっていた。



♡@♡@♡



あぁ〜……。

そんな雑な始まりだったなって思いながら僕は、文字通り生まれたて、変化したての身体で先の女子校の応接室に来ている。


白いブラウスにスカートの先に白いフリルが付いた黒いジャンパースカート、紐のリボンの制服。

百合系列作品のよくよく見かける学生服。

そして僕の好きな学生服第1位。


[都子]

「よく似合ってるじゃな〜い。」


[周]

「うぅ……。」


[都子]

「いや〜、姉さん思い出すね。」


[周]

「えぇ……。」


都子叔母さんは僕のお母さんの妹で次女。

ちなみにお母さんと都子叔母さんに他に三女の妹がいる。

この女子校、藤咲女学院の現理事長。

かつてこの学校で美少女三姉妹って言われて、今もお母さんたちを描いた絵が飾ってある。


[???]

「呼ばれて飛び出てメルへ〜ン。」


[周]

「うわでた。」


[都子]

「周ちゃん、声……。」


応接室に入ってきたセミロング+サイドテールの黒髪に紫色の瞳の少女がやってきた。

藤咲綾乃ふじさきあやの

理事長の末っ子。


[綾乃]

「あれ〜、その美少女は誰なのかな?。」


突っつくような視線が僕に刺さる。

そして全身を撫でて、舐め回すような変態な視線。

意外とわかるだなこれ。


[都子]

「なんと、聞いて驚くが良い。この美少女はなんと!、周くんなのです。」


[綾乃]

「えぇーーーーーー!。」


わざとらしい会話が目の前で繰り広げられている。

なにこれ。

何この茶番。


[綾乃]

「どうしたの。どうしたの。周お兄ちゃんがお姉ちゃんになってるよ。」


[都子]

「ふふん。よくぞ聞いてくれました。なんと、私が開発した性転換薬を使って、周くんは無事女の子になったのです。」


[綾乃]

「ヤッター。」


ぴょんぴょん飛び跳ねる綾乃。

傍から見ると可愛い反応だけど、当事者で被害者な僕はおそらくジト目でこの茶番な光景を見ている。


[都子]

「そういう訳で、これから周くんは周ちゃんとして藤咲女学院に通うことになったから、よろしくね。綾乃ちゃん。」


[綾乃]

「OK!。」


僕を無視してトントン拍子に進む展開に脳がついて行かない。

もうやだ……。


[綾乃]

「じゃあ、これからよろしくね。周お姉ちゃん。」


[周]

「うん……、よろしく……。」


僕は有栖川周ありすがわあまね

ただの百合豚が勝手に女の子にされて女子校に通うことになりました。

あぁ……、辛い。

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