第12話 激辛大食い大会・大人部門
激辛大食い大会の大人部門は子供部門の後、午後からのスタートとなっていました。
しかし子供部門の後で大雨が降ってきたので中止となり、大人部門は翌日に持ち越されました。
子供部門は終わったのですが、参加賞は大会終了後に渡されるので、私達はその参加賞を貰いに大会に出向きました。
私の場合は副賞のカレーのルーもありますが。
「あっ!」という声に私達は振り向きました。
声の方にはカンナ村の子が二人いました。
一人は私に挑戦状を叩きつけた子です。
名前はナナでしたっけ。
「こんにちは」
ナナの隣にいる子が私達に挨拶します。
「どうも。こんにちは」
私も挨拶を返します。
「大人部門を見に来たの?」
「いえ、違います。参加賞を貰いに」
ナナが私に人差し指を向けて、
「よし! 大人部門に参加……いたっ!」
「何、馬鹿言ってんのよ。アンタ負けたでしょ」
「待てスミレ! あれは負けたうちには入らん! 君達もそう思うだろ?」
とナナは私達に同意を求めます。
私としてはもう勝負事に関わりたくないので、あれで終わりにしたいです。
「確かにミウ以外はカレーライスは初見だったしね」
とティナが言います。
「公平かどうかと言うと……」
カエデまで!?
「で、でも大人部門は子供は参加できないよ」
「ところがどっこい!」
ナナは胸を張って言います。
「実は早く激辛大食い大会を終わらせないといけなくて、エキシビションも同時になったらしいぞ。しかもエキシビションは当日受付可だ」
「あー、それは私も聞いたわ」
とティナが頷きます。
「そのエキシビションには子供も参加できるらしいぞ。どうだ?」
「どうだって言われても」
正直、昨日たくさんカレーライスを食べたので食欲はありません。
「これで最後なら良いんじゃない」
ともう一人のカンナ村の子が言います。
「最後?」
「そう。ナナもそれで良いよね?」
「おう!」
「例え昨日のようなことがあっても文句なしだよ」
「わかったよスミレ。ミウ、ラスト勝負だ」
「わかったわ。最後にしてくれるなら」
私は溜め息交じりに答えました。
「でも昨日あんなにカレーライス食べたけど平気?」
とセイラが尋ねます。
「食欲はあまりないわ」
「私もない」
と何故かナナは自慢気に言います。
◇ ◇ ◇
そして私とナナは最後の勝負としてエキシビションに参加しました。
エキシビションは大食いは得意ではない人、2人1組での参加などもある勝敗のない特殊部門です。
どうやらエキシビションに参加する子供は私達だけらしく壇上にいる子供は私とナナだけです。
司会者が参加者紹介をした後、料理が運ばれてきます。
その運ばれた料理はホットドッグでした。ホットドッグも前にリンがいた時に食べたものです。これもカレーライスと同じで人間界の食べものです。
「今回の激辛料理はチリソースのホットドッグです! かなりスパイシーなのでエキシビションの子供達は気をつけてね」
と司会者が私達に言います。
なるほど大人部門は本格的なんだ。
まあ、私は適当に食べてナナとの勝負を終わらせたいだけなので、ちょっと食べて終わりにしよう。
「では、皆さん、準備はいいですか? それでは用意! スタート!」
司会者がタイマーをスタートさせます。
私はホットドッグを掴み、一口食べます。
!?
こ、これは!?
辛い!
昨日のカレーライスよりも辛いです。
でも! ティナの屋敷で特訓したキャロライナーリーパーに比べるとまだましです。
私は一本食べ終えると新たにホットドッグが運ばれてきました。
そしてかぶりつきます。
……おっといけません。
適当に進めるはずなのに、頑張ってはいけません。
ナナはどうでしょうか?
私は隣のナナを伺います。
そのナナは私を見てポカンとあんぐり口。
なんですか?
大人達はどうだろうと伺うと、大人達も私を見てあんぐり口。
どういうこと?
もしかしてフライングした?
いえ、ちゃんと司会者の合図を聞きました。
ギャラリーに目を向けるとギャラリーも私を見て驚いています。
な、なんですか? この状況は?
私はホットドッグを食べ終えて、ナナに聞きます。
「どうしたの?」
「いや、その、よく食べれるなって」
「そんなに辛くないわよ?」
「そうじゃなくて、そのチ……あっ、いや」
なぜでしょう。激辛料理を食べてもいないのに。ナナの顔が赤くなります。
「その、な……長い肉。うん。その長い肉よく食べれるな」
「まあ、辛いけど平気よ」
そして私の前に三本目のホットドッグが運ばれてきました。
さすがにもうキツい。
三本目を最後にしよう。
私はゆっくりとホットドッグを食べました。
真ん中に挟まれているソーセージがパキッと小気味良い音を立てました。
その音に参加者とギャラリーからどよめきが生まれます。
なんでしょうか?
というかなぜ皆、食べないのか?
う〜ん。不思議です。
そんなに辛くもないし、おいしいのに。
ポキッ、コリ、コリ。
弾力がよくておいしい。
どういうことでしょうか? 男の人の顔が赤ではなく真っ青になってます。
ギャラリーもゾッとしています。
「食べないのですか?」
私は大人達に聞きます。
そしてソーセージを齧り、
「おいしいですよ」
『ひぃ!?』
なぜ悲鳴?
「わ、私も食べるぞ!」
ナナは何故か意を決するように告げます。
そして一口齧ります。
「ナナー! どんな味?」
ギャラリーにいるスミレがナナに聞きます。
「……なんていうか。表面はつやつやで……柔らかいものが少し硬くなった……感じ? ええと、パキッとした硬さ。 後、辛い!」
と言いナナはコップの水を飲みます。
何そのコメント。なぜ辛いことを先言わないのか。そしてなぜソーセージの食感を話すのか?
◇ ◇ ◇
激辛大食い大会・大人部門は一口だけ食べた人や、パンだけ食べた人ばっかで、優勝したのは無理矢理一本食べた人が勝ちました。
「なんかおかしな大会だったわ」
私は大会後、皆に感想を言いました。
皆は昨日の子供部門の参加賞、私は副賞も貰いました。
参加賞は商品券でした。
「重い」
副賞で貰った固形のカレーのルーが多いので重たいです。
「ミウがきちんと大人部門に参加していたら勝ってたね」
とセイラが苦笑交じりに言います。
「そうね。でも、どうして皆、食べなかったのかな? ソーセージが嫌いだったのかな?」
「そーせーじ?」
ティナが聴き慣れない単語のように言います。
そこへナナとスミレがやって来ました。
「あっ! 勝負だけど私の勝ちで良いんだよね?」
「ああ。お前の勝ちだ。あんなゲテモノをパリパリ食べるんだ。私には到底」
と言い、ナナは首を振ります。
「? ゲテモノ?」
「お前、すごいなあんなチ……棒の肉を食べれるんだもん」
「はあ」
「じゃあな」
と言い二人は去って行きました。
「これでカンナ村との勝負も一段楽ね」
私は息を吐いて言いました。
「ミウすごかったわ。あんなおチ……ええと肉の棒を食べるんだもん。皆、びっくりよ」
「肉の棒って。ソーセージでしょ」
「ソーセージって言うの?」
「知らないの?」
セイラはカエデ達にも振りますが、皆、首を横に振ります。
「ソーセージっていうのは腸詰めした味付け肉みたいなものよ。肉は豚だっけ。いや、羊肉もあったような」
『へえー』
皆して感嘆の声を出します。
「何だと思ってたのよ」
皆は目配せします。
そしてセイラが口元に手を立て、私の耳に、
「てっきり、犬のおチ◯……チンだと」
「ええ!?」
どうやら会場にいた皆はそう思っていたらしく、誰も怖くて食べれなかったそうな。特に男の人は。
だからパンだけ食べた人が多かったのか。
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