ストーカー

天川裕司

ストーカー

タイトル:ストーカー


俺は、とある女にストーカーされているようだ。

会社帰りの夜道。昼間の道。

会社の休みの日でも公園やカフェテラス、

あらゆる所で同じ女を目撃する。


そして家の固定電話。

いつも留守電にしていたその電話には、

決まった同じ女の声で、

「私たちずっと一緒よね…」

「私の事ちゃんと愛してくれないと…」

「もうすぐあなたの家に行くわ」

この3つの言葉のオンパレード。


ストーカーは同じことを繰り返すらしい。

俺もかつては犯罪心理学を学んでいたことから

こういうときのストーカーの言動を

ある程度は把握することができる。


しかし一般人。

やはりこう言う事は警察に任せるのが普通だ。

しかし警察と言えど、被害らしい被害が何も無ければ

大体は見守り強化で終わらせてしまう。


電話の声にしてもボイスチェンジャーで変えていたから

犯人特定までには少し時間が掛かるらしい。

つまり、警察はそれほど本腰じゃないようだ。

こんな事件が最近は多すぎて、

そろそろ警察も捜査に飽きてきたんじゃないのか?

そんなことも思う今日この頃。


これは俺の問題だ。自分でどうにかしなきゃならない。

「くそ、相手は一体誰なんだ。どこの誰だ?」

もしわかれば何とかできるのだが、

いつもここぞと言う時に取り逃してしまう。

相手のストーカーの女は、逃げ足だけは長けていたらしい。


そんな時、劇的な変化が起きた。

いつものように夜遅く、会社から戻ってみると、

「ん?」

わずかながら部屋のものが少し動かされているのに気づいた。


テーブルの上に置いている塩が

少し位置を変えられて置かれている。

朝に確認した扇風機の首の向きが少し変わっている。

朝に整頓しておいたパンフレットが雑に置かれている。

テレビとクーラーのリモコンの位置が違う。

そして何より今、嗅ぎ慣れない香水の匂いが漂っている。


「もしかして…」

俺の予想は当たった。


ギィ…とクローゼットのドアがゆっくりと開き、

中から髪がボーボーの女が現れた。

「………」

こんな時、やはりゾクゾクするのか言葉が出ない。


女は、

「…フフフ、やっと2人きりになれたね…。逃げようとしたってダメよwもし逃げたらこうだからw」

と言って刃物をちらつかせた。


俺は沈黙。ただ黙って彼女を見つめているしかない。

そして彼女はようやく落ち着きを取り戻したのか、

部屋の中を少し歩きまわった。


そしてもう1つのクローゼットの前に行き、

「この部屋のものも、これからは一緒に使っていけるのよねぇ。うれしいわ」

と言ってそのクローゼットを少し開けた。


中から冷たくなった女の手が飛び出し、床にバタンと落ちた。


そして俺は玄関先で侵入していた女を捕まえ、一言。

「おい、ストーカーが逃げちゃダメだろ」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=uOlCrl2eqYM

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ストーカー 天川裕司 @tenkawayuji

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