リアルの小説

天川裕司

リアルの小説

タイトル:リアルの小説


俺は公園にいた。俺の職業は小説家。

まぁシナリオライターをやってて、

これまで何本か作品を書き上げてきた。

それでももうネタづまり。


「何か良い題材、落ちてないかな?」

そう思いながらふと前方を見ると、1人の女が立っていた。

誰かを待ってるようで待ってないようで、

ハンドバックの中にさっきから手を突っ込んだまま。

そのちょっと変わった姿に創作意欲が掻き立てられ、

ちょっとあの女をモデルに物語を書いてやった。


(小説の内容)

あいつは殺人鬼で、誰かひ弱そうな奴が通り過ぎるのを待っている。

今手を突っ込んでいるあの鞄の中には刃物が隠されており、

ひ弱そうな誰かが近づいた瞬間、

その刃物でおそらく滅多刺しにしてしまう。


簡単にプロットを作り上げ、それに肉付けをして

手っ取り早く物語を書いていった。


その女が自分の目の前の人に、

「こんにちは」と優しそうに声をかけ…


そうパソコンに打ち込んだところ、

女「こんにちは」

と俺に微笑みながら喋りかけてきた。


「ん、ああ、こんにちは…」

いきなりなもんだから少しあわくって見せ、とりあえず返事してやった。


女「ここで何してるんですか?」

「え?あ、いや、シナリオ書いてるんですよ」


女「え?シナリオライターさんなんですか??」

「あは、まぁそんな大層なもんじゃないけどね」


女「へぇすごい♪今度どんな作品があるのか、見ても良いですか?読ませてもらって良いですか?」


ふと手元のパソコンを見ると、

女「へぇすごい♪今度どんな作品があるのか、見ても良いですか?読ませてもらって良いですか?」

と何も打ち込んでないのに、

その文面が勝手に浮かび上がっていた。


「(え…?)」となる。

女「あのー、できたら今度あなたの家にお呼ばれして、いろんな作品、読ませていただけたらなと思うんですけど…ダメですか?」


「え?あ、いや…」

またパソコンを見ると…


「あのー、できたら今度あなたの家にお呼ばれして、いろんな作品、読ませていただけたらなと思うんですけど…ダメですか?」


と文章が浮かび上がってきている。

でも俺は長年このシナリオライターをやってきている。

「(…そうか。フフついに会えたなぁ…)」


1人勝手に微笑み、女に、

「…じゃあ1時間後に、僕の家に来てもらえますか?小説を読ませるかどうかは別にして、ちょっと話がありますので。良いですか?」

と言ってやった。


女「…?あ、はい、じゃぁお願い…」


「します」まで聞かず俺はベンチを立ち上がり、

すぐ家に帰った。住んでるのは都内のアパート。

その彼女が来るからと俺は少し準備して、支度を整えた。


(パソコンの内容)

ゆっくりドアが開く。

あの公園の女がすーっと入ってくる。

そして刃物を持ち出して…


そこまで文章がまた勝手に浮かび上がり、

実際にドアがゆっくりと開き、

さっきの女がすーっと入ってきて、

ずっと手を突っ込んでいるカバンから刃物を出し…


女「キャハハハwwシネェ!!」

と飛び掛かろうとした。でもそこで一時停止。

彼女の体は動かなくなった。


女「……え?あれ…」


「お前、霊だろ?実は俺もなんだ」

パソコン画面を彼女のほうに向けてやり、

とりあえず読めるようにしてやった。


女「………はっ?」


「文面、ちょこっと書いてやったよ。お前『リアル小説』の霊だなぁ。少し前に、俺そのシナリオ書いてんだ」


「で、これ」

そう言って最後の場面をソイツに見せてやった。


「最後はさぁ、お前の理想とは正反対に、こうなるんだよお!ww」


女「ひっ!ギ…ギャアアァアァ!!!」


(パソコンの文面)

女は首を斬られて瞬殺された。


「…ふぅ。相手が霊なら、証拠(あと)が残らなくて良い。さて、また次のカモでも探しに行くか(微笑)」

生身の人間より、霊の方がいくぶん特典高だなぁ。

俺は霊界で羅刹と呼ばれていた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=HRI1lFuM-GA

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リアルの小説 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ