第23話 二俣と妹と 後半

「んなぁ。勘違いしないでよね。メイはお姉ちゃんの次ぐらいには六花が好きなだけなんだからね」


 五十嵐からツンデレ語の亜種みたいなのが飛び出してきたところで、偵察に行かせた鈴木から反応がきた。


 どうやらあっちに変化があったらしい。


 この時のために用意しておいた双眼鏡で覗いてみることにした。


 二俣と六花は談笑を交わしながらパチンコ店に入ってったぁ。


 はあ? デート先に選ぶ場所ワーストに入るとこだぞそこは。なんでそこ選ぶ?


「おい鈴木! 聞こえるかおい鈴木! 聞こえるか!? 小坂だ! 小坂の一樹で俺は一樹だ!」


 俺は田中が普段カップル破壊工作に使用しているトランシーバーを借りて、パチンコ店に侵入している鈴木に連絡を要求した。


「うるさいでござる。一樹殿は一回慎みを覚えた方がいいでござるよ」


「今更俺が慎みを覚えたらそれはそれでキモイだろ。それより二俣がなんか言ってるぞ! 何やってんだあのバカは!」


「間近で聞いたですゾ『闇雲純愛物語が純愛物でおすすめなんだ』って機体を指差しながら妹先生に言ってたでござる」


 俺の妹になんてこと教えてんだ二俣ぁ! あとついでに、六花はまだ未成年なんだけど! 二重の意味でダメだよパチンコ店は!


「んなぁ。寝取り魔田中さん。あの男からメイの親友六花ちゃんを助け出してほしいの」


「NTRは他人に命じられてやるものじゃないっす! NTRを馬鹿にするなぁっ!」


 五十嵐の倫理的におかしいお願いを聞いて謎にキレ始めた田中。


「うわぁ、変なところでヒートアップしないでくれ。収集つかなくなる」


 どうやら五十嵐は田中の地雷をいつのまにか踏み抜いていたらしい。彼はNTRを指示されてする行為が御法度なのだ。


 めんどくさいだろ。俺もそう思う。



         ◇



「お兄ちゃん達。コソコソとなにやってるの☆?」


 やっべ、六花に気づかれた。盗聴能力が敵に回ると厄介すぎる。敵ではないけども。


「……なるほどね。芽衣ちゃんはウチの心配。お兄ちゃんも大体そんな理由ってことか☆」


「んなぁ。悪気は無かったんですっ。ただ、六花ちゃんが心配で~」


 五十嵐は六花に必死な弁明していた。その横で田中は作戦中止の報告を兼ねて鈴木を呼び戻している。


「ウチは大丈夫だよ☆ただ、今日はウチの気持ちを整理するために愛斗さんを呼んだだけだし……☆」


「……六花。ぶっちゃけ二俣と付き合いたいんだろ」


 俺の妹からプシューと音が鳴った。数秒後、六花は赤面しながらもたどたどしく俺に問いかけてくる。


「な、なんで……それを……☆?」


「家族だし。六花は妹だから大体分かる。どうせだ。俺らがサポートしてやろうか?」


「我はパスでござる。カップルクラッシャーが何故カップル誕生のお膳立てをしなければならないでござる」


 いつのまにか合流していた鈴木は捨て台詞を吐いてどっかに去っていった。ほんとブレないよな。


「カップルの前段階で寝取っても快感は得られないんで、僕は手伝うっす」


 鈴木の協力は得られなかったが、田中は手伝ってくれるらしい。動機は不純だけど。


「この田中。妙案があるっすよ!」


「本当か! 是非教えてくれ!」

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