少女漫画脳彼女に外堀を埋められる〜めんどくさい奴らと「なぜか人外も言語話すぞ」はいはいドッコイショ
道楽byまちゃかり
序盤
第1話 一樹と五月
何年かぶりに雪が積もった。滑り台や花壇、ブランコが白く染まっている。
ビュービューと風が吹き、雪の精があちらこちらで舞っている。
そのブランコに、俺の好きなタイプどストレートな子が哀しそうな表情をして、ギコギコと座っていた。
「俺が今まで見た中で一二を争うビジュだ。でも何処か表情が暗いように見える。浮気でもされたんかな。俺みたいに」
そう、重なるものがある。
「浮気どころか、俺のバイト数ヶ月分どさくさ紛れに奪って消えてったからなぁあの女。今思い出しても許さねえ!」
◇ブツブツ言いながら物陰に隠れている不審者の名は小坂一樹。先日、彼女の三股が発覚した。これでもだいぶ傷ついている。
「だが、彼女探しはやめない。モテるために筋トレや香水選び、髪型セット等色々研究してきたんだ。今度こそ生涯添い遂げる女性を!」
てな感じでしばらく物陰から様子を眺めていたが、彼女はここから動く気配を微塵も見られなかった。雪も降って気温も下がってきている時でもだ。
沈んだ表情をしている彼女に謎の親近感と居た堪れなさを感じた俺は、近くの自販機で買い求めた熱いコーヒーを手に取って、ブランコへ向かった。
◇
一目見て綺麗な髪だと思った。明るめのブラウン色でサイドテール。雪で跳ね返る光りに、女の子の髪は鮮やかな紫光りの黒を強めている。
それはそれとして俺は自販機からコーヒー缶を手に取り、彼女へ近づいていった。
「こんにちは。こんな日にそこにいたら身体に堪えるよ? もしよかったら、コーヒーでも飲みます?」
彼女は少し驚いたものの、すぐに受け取り熱々のコーヒーを口にした。
「さっきからずっと座ってるように見えるんすけど、何かあったんすか?」
俺の問いに、彼女はサイドテールを棚びかせながら微笑んで言った。
「漫画や小説と展開と同じです。まさかこんな日が来るなんて……私の王子様候補内定です!」
想像してた返答と違い、2つの意味で度肝を抜かれた。話聞こかの流れだと初めての展開だ。
それに王子様? 内定? 漫画? この子はいきなり何を言っているのだろうか? 寒さで脳が狂ってしまったのだろうか?
頭の中でグルグルと思考を加速させて言葉の意味を理解しようとしていると、彼女が頬を赤らめながら話し始めていた。
「私が寂しそうにブランコで座っていたら、 小説の展開のように王子様が私に声をかけてくれるかもしれない。だから、運命の人を見つけるため3時間前からスタン張っていました!」
「雪の中で3時間も!? 根性ありすぎだろ」
中々変わってて面白い子だと思った。
初対面だけど外見も相まって気になる。この際だ、浮気女から乗り換えてもいいかもしれない。
「夢見がち少女極まれりだな。気に入った。俺が奢るんで今からカフェでもどうっすか。少し暖を取る傍らお話しましょう!」
「フフッ、そう来るのを待っていました。貴方の魂胆は透け透けですが、渡りに船なので有り難く乗らせていただきます!」
それはそれとして彼女の体調が心配だ。極寒の最中、少なくとも3時間はここにいたのだ。ひとまず、カフェで暖を取らせよう。
カフェに向かう道中、お互いに会話は無かった。かける言葉が見当たらなかったので。
あと自分自身、思考を加速させていて彼女と会話することを半ば放棄していたのもある。自問自答ってやつ。
◇
さて、自問自答だ。
今の彼女とは現在進行形で破局したいと思っている。
何故かって? 答えは単純浮気してたから。それも三股。
そこから一歩踏み出して別れる気持ちはあるか。イエス。浮気が発覚した頃から俺の感情は冷めてしまっているので、特に未練はない。
つまり、俺があの子に声かけても誰にも文句は言われないはずだ。そこら辺は大丈夫。
次はあの娘を落とせる自信はあるのかという問題だ。NOだ。今の時点で自信は全く無い。だって今までの一発告白成功率が低すぎるから。
こういう時は俺の恋愛観を変えてくれた。そして、俺の非モテも解消してくれた恋愛導き師のありがたいお言葉を思い出そう。
『俺は詐欺師だ。恋愛の事を聞きたいならアドバイス料10万円払え。告白の成功率は諦めなければ100%になる。よしアドバイスしたぞ金払え』
よっしゃ、チャレンジしてみるか。
◇次回予告。カフェに入る2人。五月は猫舌。そのあと、人類の敵とカップルクラッシャーが入店した。
「老若男女、誰これ構わず寝取りたい気分っす」
◇
◇基本的に週一投稿です。頑張って書いていくので、ぜひとも、期待をこめてフォロー&評価で応援をお願いします。
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