ゾンビ作品の死に役みたいな俺はゾンビ作品の知識で生き残れますか?
月影光貴
第1話 ありがちな立ち位置
今日は友人カップルのデートに無理矢理参加させられドライブしたり、今は巨大なモールだかアウトレットだかに向かっている。デート参加の理由は簡単、俺がこいつらの実質的な恋のキューピッドで、彼らは数年前から付き合い今では結婚寸前だからだ。2人とも同じ高校だったんだけど、高3でこいつらは両片想いでまどろっこしいから「お前の好きな人から大事な話が放課後の駐輪場であるって」って俺が2人に言って恋が成就して終わり......と思ったけど俺が仕組んだのは秒でバレて何かと記念日などの前後に呼ばれる事になっちまった。婚姻届の証人も俺予定だ......。ちなみに彼氏の小谷はハンサム身長約195センチの細マッチョで運動神経抜群だ、何が
「......お......おい......おい!ツッキー!何ボーッとしてんだよ?着いたぞ?」
と小谷は運転席から振り向きながら肩を叩く。
「......ん!ああ、めんご。なんか最近色々考えちゃってな、まあ仕事していないから考える事はそんなに無いけど」
「なぁにまた卑下してんのよ!今日は私達のキューピッドのツッキーに対してのお礼なんだから〜」
そう笑いながら手で俺の顔を挟む、橋本は美人な上にボディタッチが多いので勘違い男子を馬鹿ほど出していた事を思い出す......もちろん俺もだ。ちなみに頼んでもないのに何度も3Pした事がある......この2人は頭がおかしい、そう言えば乱交する様な奴はゾンビ作品だと中盤の序盤で死ぬ気がする。
「何度も言うけどそんな事しなくて良いよ?確かに俺は実質無職で真夏の服は300円の半袖シャツを着ていたし、インターネットでアニメや漫画の二次創作の絵とかで小銭稼ぎする様な生活だから、正直言って助かるっちゃあ助かるけどよっ。別にマジで見返り求めてやった訳じゃないよ」
そうこの俺、
「でもその絵の特技のおかげで、俺たちの結婚式の招待状の絵も描いてくれたし、似顔絵も送ってくれるんだろ?しかも、金取らねえとかお人好しにも程があるだろ!金ねーのによ!!なら、親友として見返りを求めなかった分更に豪華な何かをお前にやりてぇんだよ!単車とかゲーミング?PCとかだって贈るぞ!!」
「ねー!私達の縁、勿論ツッキー含めてだけど大切なものだし。あ......そういえば今更だけどツッキーってめちゃくちゃ色々な人と遊んでいるけどお金どうしているの?」
「あー......なんかさ、みんな同情なのか奢ってくれるのよね......2人にもだけど何か早く借りを返したいよ。っても最近物騒な事っていうか......変な事ばかり起きていてキュア病む病む......」
「気にするな、それとキュア?女児向けのキャラか?まあいいや。変な事なぁ〜ここ数週間各地で行方不明者が増えたり、薬中が人を襲ったりとその延長で警察官が錯乱した被疑者を射殺する事が増えたよなぁ......SNSでの陰謀論ではゾンビが出たとか何とか......あ!出番だぞ!ツッキー!」
「そんなポ⚪︎モンを出す時みたいな言い方しなくても............おほん!ゾンビマニアの意見としてはB級テンプレでアメリカ製のゾンビ映画の始まりに酷似しているね!つまり、これからは二流以下作品が始まるよ!」
(もしそうなら立場的に俺死ぬな、美人カップルの友人枠とか7割最初に死ぬ奴じゃん)
と笑いながら言う。
「うわー、なら私達スプラッター映画で良くある最初に死ぬカップルじゃん......」
と言われて朔はそう言えば、そういう視点もあったなと思う。
「まあ俺が何が何でも守ってやるからよ!」
とありがちな死亡フラグを言う彼氏。
「もーツッキーじゃなくてもわかる死亡フラグじゃーん」
と笑う3人に向かって一直線で走ってくる不審者。
「お、おい?あの人下向いたまま腹を抱えて一直線に走っているぞ......それもこちらに!」
周りに他に人がいない、いるのは走ってくる人物だけ。朔は嫌な事を思いつき小谷と橋本に言う。
「ちょっと......流石に本当にある訳ないんだけどね......これ普通の人じゃ無いかも。小谷は橋本を守れ、俺が1番死んでもいい」
そう言いながら近くにあった椅子を持つ。
「いや、ゾンビ作品見過ぎだって!」
止める彼の声は届かず。
「すみません!!止まらないと殴ります!!!」
シンプルな暴力宣言をする朔だが相手は無視して走り近寄る。よく見るとゾンビにありがちな噛み跡や血などが無いので椅子を防御しやすい持ち方で様子見をすると走り抜けて行った。
「ぷぷっ!!やめてよ〜!あの人トイレの方に入って行ったじゃん!」
朔を指さして大爆笑する橋本。
「いや、Wの意味で安心したわ......」
と胸を撫で下ろした小谷だが朔は周りの異変に気がつき始める。
「いや......あの人は関係無いかもだけど、周りを見てみて......」
そう言われて2人は見るが息が荒く足を引きずっている人や、蹲って動かない人などがいる。それに呻きながら頭を掻きむしりながら体を捩って動き回る奴もいた。
「......
毒物やウイルスに知識の無い橋本は不安になる。
「わかった未奈。ツッキーは悪いけど後ろの周りを見てくれないか?俺は前方を見る」
「う、うん......ちょっと店には悪いけど椅子持っておこう......」
(毒物ならもう俺らも死んでいると思う......それより、やばいやばいやばい!これがマジなら憧れていたイカれたポストアポカリプス世界に!......じゃない、俺の立場はゾンビ作品だと死ぬ。この時の死因は慢心だ、椅子を持っておこう。そして次に危ないのは俺が2人を庇って死ぬ。こればかりは見捨てるしか......でも気分が悪い......いや、それなら俺は死を選ぶ。取り敢えずこれも......)
そう思いながら飲食店の順番待ちの道を作る為の三角コーンに付いている棒を小谷に渡す。
「リーチが長いが本当に脆い、慎重にな。ああ......一番良いのは俺らの勘違いで怒られる事だなぁ」
そう思いながら移動していると通路の横にある、トイレに繋がる狭い道があるのを見る。
「ちょっと待って......これ映画だと絶対飛び出してくる......」
そう小声で言いながら壁に壊れない程度に椅子を思い切り叩きつけると同時に通路から音に反応して飛び出てくるなにか。即座に対応する朔だが慌てすぎて転びかけるが、何とか椅子で壁に取り押さえた。
「っ!ほ、本当になのかっ!お前ら変なサプライズ仕組んだんじゃないよな!??」
そう飛び出てきたのは正真正銘のゾンビであった。見た目は出血は少ないが鼻が抉れて首が切れていた上に目が濁っている。それを朔は椅子の4つの足で挟んで壁に押さえつけている。
「ば、ばか!んな訳無いでしょ!驚いてないで早く一もツッキーに加勢して!」
その言葉を朔は聞き、嫌な事が脳内に過ぎる。
(これって......あいつは良いから逃げるぞパターンじゃあ......)
と押さえつけながら勝手に絶望しているが小谷は棒でゾンビの足を掬い転ばして背中を踏みつけ動きを封じた。
「よくわかないがあるんだろ!?トドメをやれーっ!!」
そう言われ椅子の足で何度も殴り首の骨を折った。理由は血液感染の場合は下手に頭を砕くと危険だからだ、と言っても頭を破壊する程の力はないがね、頭がバンバン砕けるのは創作物だけだ。それに、こう言うのは血液感染がメジャーなので避けるに限る。そして脊椎を破壊して神経を破壊する事が最適解と思った。幸いほぼ動かなくなったが、念のため顎と膝を破壊してそいつが着ていた服で縛っておいた。目の前のゾンビで周りの音があまり聞こえていなかったが、冷静になると叫び声ばかりが店内で響き渡るのがわかる。
「やっぱり映画とは違うな、ありがとう」
(これ治せるタイプだったら俺ただの殺人や......)
そう言いながら小谷に手出す。
「いいや、こんな状況でこんなふうにわざわざ握手するのは映画くらいだ」
(これ殺人にならないかな......)
と小谷はニカッと笑い、3人は足早に車に戻った。
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