○○県警察本部内部報告書
以下の文書は、○○県警内部にて報告書として作成されたものが、当時○○県警察本部職員であった真中亮太(当時37歳)の手により外部流出したものである。事故多発地帯である北大正交差点についてまとめられた報告書であり、その内容はおおよそ
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『北大正交差点に関する事故発生の現況における報告書』
作成者:○○○○【※注釈1】
監督者:○○○○【※注釈2】
【概要】
○○県○○市北区【※注釈3】に存在する北大正交差点においては、かねてより高頻度で交通事故が発生している。当本部は繰り返し対策に乗り出し、周辺住民協力の元様々な手を講じてきたものの、今だ事故の発生防止及び根本解決には至っていない。
【現場状況】
当該交差点は非常に見通しの良いT字路である。東西方向に広がる国道〇号線に対し、南方向に県道〇号線が伸びている。それぞれの方向に対してLED式車両用信号機、及びLED式歩行者用信号機が設置されており、いずれも視認性は非常に良好である。また、交差点周囲には通行における視界不良をもたらすような構造物はなく、植物の発生もない。動物の出現なども全く報告されていない。
【事故原因】
再三にわたる現場検証、専門家を交えての考究、及び周辺ドライバーの意識調査などを行っているものの、今だ決定的な事故原因の解明には至っていない。以下に、これまでの原因究明における流れを列挙する。
最も可能性として考えられるのは、ドライバー側の不注意である。なにか交差点付近に運転における意識を削いでしまうような景色、広告、あるいは人などが存在する可能性がある。しかしこれらに関しては何度も繰り返し調査を行っており、特にこれと言えるほどのものは今だ発見されていないのが現況である。周辺の道路を利用するドライバーの意識の低さが原因とも考えられるが、当交差点から非常に近くにある、当交差点よりも見晴らしの悪い交差点において、事故の発生件数、発生率が当交差点の10分の1以下であるという報告がある。この道を通るドライバーの意識の低さが原因ならば、あちらの交差点の方が事故の発生件数、発生率は多いか低く見積もっても同等程度であるはずであるが、そうではない。ゆえにドライバーの意識によるものとも考えにくい。
あるいは信号機、標識、路面ペイントなどの視認性の可否が可能性として挙げられるものの、当該交差点の信号機は最新型であり、発色や認識性も良好、昼夜を問わず見間違えの可能性は非常に低いものである。標識に関しても経年劣化などは全く見られず、事故原因の一端とは言い難い。横断歩道、および停止線の路面ペイントは極めて高頻度に塗りなおしを行っており、常にはっきりと認識ができるものである。ゆえにこちらも事故の原因とは言い難い。
以上の理由から、今日に至るまで当該交差点における事故原因の解明には至っていないというのが実情である。
【負傷者・死者について】
事故における負傷者、死者の状況については他の交通事故多発地帯と変わらず、特異性はなし。しかし、この事故が原因で死に至った者の持ち物の調査を行う○○県警察所属○○研究所○○研究室から奇妙な報告あり。『別紙1』に転記する。
また、当該交差点にて死に至った者の多くは近隣に住まう住民ではなく、遠方から訪れた者がほとんどである。
【対策等】
これまでに引き続き、当該交差点における事故防止の声掛けや警察官の配置、及び県警公式ホームページ上で注意の呼びかけ、メディアの協力を仰いでの事故防止意識の徹底を図っていくものとする。
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【※注釈1】
流出文書上ではこの欄はすでに伏字にされている。ゆえに作成者は真中亮太ではないかという説があるが、真偽のほどは定かではない。
【※注釈2】
流出文書上ではこの欄はすでに伏字にされている。ゆえに監督者は真中亮太ではないかという説があるが、真偽のほどは定かではない。
【※注釈3】
流出文書上では伏字なしで記載されていたものの、ここでは編集部の都合により県名を伏字にて表記する。
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