7時15分の嘘
中路
1日目
今から2年前、悪化し続ける環境問題に人類はひとつの解決策を打つことになった。「人類凍結可計画」。通称「コールドスリープズ」。明後日の11時丁度に人類はカプセルの中で眠りにつく。30年もの深い眠りに。
「ねぇ、明後日、不安だね」
午前7時15分。
リビングのソファで横になっていると、ミユからの電話が鳴る。俺は携帯を取り、少し考えてから答えた。
「そうだな。でも、ちょっと眠って、目が覚めれば30年後で、そしたらまたいつもどおりだ」
ミユが不安を感じる気持ちはよくわかる。前例なしの凍結計画。でも俺はすでに決めていた。コールドスリープは受けない。婆ちゃんを置いていくわけにはいかない。
余命2年以下の人はカプセルの稼働数の関係で連れて行けないらしい。だから、俺は行けない。
その言葉は、飲み込んだ。
「そしたら私たち48歳だね。」
「バカ。冷凍保存なんだから歳とるわけねーだろ」
でも、ちょっと思った。まだ高校生なんだって、こんな運命に立ち会わされるミユが少し不憫に思えた。それと同時に俺がいるうちに少しでも、いい思い出を作って欲しくなった。だから、俺は勇気を持って提案することにした。
「なあ、明日少し出かけない?」
「急にデートのお誘い?大胆だね」
「ちげーよ。」
「じゃあ何?」
「最後の地球、少しだけ見ておこう。俺たちが起きた時には少し変わってるだろうから」
「確かに。人が居なくなって生態系とかも変わるんだろうね。いいよ、明日ね」
スマートフォンからミユのアイコンが消え、画面は暗闇を取り戻した。
電話が切れたあと、俺はまだドキドキしていた。最初で最後の、お出かけ、というかデート。なんだか特別な気がした。
そう感じるとさっさと寝て、明日に備えることにした。
まだ早いけど、おやすみ、クソ暑い地球。
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