小学校の都市伝説

ユウケン

まむし門

私が小学校低学年の頃の話です。

「まむし門」という噂話が男子学生の間でしばしば話題に上っていました。まむし門とは通っていた小学校のすぐ近くにあった小道のことです。何の変哲もない道でしたが、辺りは鬱蒼とした竹やぶが広がっており、昼でも薄暗かったのを覚えています。道幅は人がかろうじてすれ違えるほどの細さでした。


この道路はとある理由で多くの小学生から怖がられていました。それはなぜかというと、「まむし門を30秒以内に(10秒以内だったかもしれません)通り抜けていかなければ沢山のマムシが出てきて襲われる」と言われていたからです。今思うと馬鹿げた話ですが、当時はマムシという毒蛇への恐怖もあってこの道を本気で怖がっている人も多くいました(私もその一人です)。


小学生時代のある日、やんちゃな同級生から誘われてその近くを通る機会がありました。例の噂話が頭に浮かび気が進まなかったものの、当時の私は人の誘いを断れる勇気がありませんでした。

放課後、私達はまむし門のすぐ前にいました。同級生が、ここを通って帰ろうと言うのです。彼ももちろんまむし門の噂を知っていたのでこれは嫌がらせだと思いました。気の弱い私のびびる反応を見たかったのだと思います。やっぱり別の道で帰ろうかと迷っている私を置いて、その同級生はまむし門の道をダッシュで走り抜けて、そのままどこかへ行ってしまいました。急に一人にされたことでパニックになった私も慌ててまむし門へ足を踏み入れて、心の中で秒数を数えながら走り出しました。


それからの事はあまり覚えていません。私は足が遅かったので通り抜けるのに30秒以上かかっていたと思いますが、何事も起きませんでした。同級生は、翌日元気に登校していました。私を置いてさっさと帰ってしまったのでしょう。これは後で知ったことですが、そのまむし門の辺りは不審者が多いことで知られていたそうです。もしかしたら、不審者に遭遇した話に尾ひれがついて「まむしに襲われる」という都市伝説になったのかもしれません。


それから10年以上経った今では不審者もマムシもめっきり見かけなくなり、そうした噂話もなくなっていることでしょう。それでも、学校の近くに薄暗くて細い道があるなら気をつけるに越したことはありません。何が出てくるか分かりませんから。

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