69.寝る子は育つと言うけれど
席について、お父様やエルヴィン、双子の着席を見守る。前回のヘンリック様の指示を守り、今回も距離が近かった。こうなってくると、大き過ぎる机は交換した方がいいかもしれない。この辺はフランクと相談かしら。女主人の采配に含まれるか、確認しておきましょう。
「待たせてしまったか」
急いできた様子のヘンリック様に、笑顔で着座を促す。
「大丈夫ですわ。ヘンリック様がお仕事から帰ったばかりなのは、皆が知っておりますもの。お座りになって」
すぐ近くに用意された席に座り、すぐに料理が運ばれてくる。もう恒例になりつつある大皿が並び、そこでようやくヘンリック様が異変に気付いた。
「レオンの首が……その、折れているようだが」
「ふふっ、眠っております」
赤ちゃんもそうだけれど、幼い頃って本当に体が柔らかい。猫のようにくにゃっとして、首が思わぬ方角に倒れるのよね。先ほど直したけれど、また傾いてきていた。
レオンを抱き直し、眠っている顔を見せる。凝視したヘンリック様は、手を口の近くに寄せて、ほっとした顔になった。呼吸の確認されちゃったわ。でもわかるわ、最初の頃は焦ったもの。
すっかり手慣れてきたけれど、育児は毎回違う。子供の個性もあるし、状況も変化した。だから毎回、初めての子育て気分でわくわくして、ドキドキする。
それぞれの報告を兼ねた雑談を聞きながら、料理を選んで取り分けてもらった。抱っこしたレオンの安全を考え、スープはやめる。サラダもメインも垂れるソースやドレッシングが少ない場所を指定した。
「食べづらくないか?」
「起こしてしまいますので、このままで。お気遣いありがとうございます」
断ったつもりはないけれど、状況を話したらヘンリック様の表情が曇った。余計な一言だったと悔やむ様子に、お礼を付け加える。ヘンリック様は驚いたように目を見開き、優しい笑みを浮かべた。
こうして見るとお顔が綺麗。高位貴族は外見が整っているから、目の保養だわ。こういう美形って、外から見ているのが一番綺麗で楽しいのよね。前世の芸能人を推す感じに近いかも。
料理を手早く口に運び、レオンの様子を窺う。起こして食べさせないと夜中にお腹が空きそうだ。でもこんなに気持ちよさそうに眠っているのに、邪魔をするのも可哀想。少し考えて、ベルントを呼んだ。
「ベルント、料理長に伝えてくれるかしら。冷めても食べられる料理を用意してほしいの。レオンが食べる分よ。きっと夜中にお腹が空くわ」
「承知しました。手配いたします」
これで一安心ね。家族の報告に続いて、ヘンリック様が口を開く。仕事の量を減らすため、各部署に新しい責任者を置いたんですって。前世の中間管理職よね? 頷きながら最後まで聞いて、ちょっとだけ気をつける点を話した。
上と下から苦情や要望を受けて大変だろうから、給料を多めに支給すると喜ばれること。長く元気に働いてもらうため、権限を与えたら上の人間が邪魔をしないことも。あと、何かあったかしら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます