20.家族との賑やかな夕食
夕飯後に部屋の引っ越しが終わると聞いて、レオンと二人で客間のお風呂に入った。お部屋の都合があるから、今回は特別だと言ったら喜んでいたわ。それから食堂へ向かう。すでに準備を終えた家族が待っていた。
「お待たせしました」
「おたませ……したっ」
途中でわからなくなり、最後だけ言い切ったレオンは満足げだ。目を細めて可愛さに頷く父の横で、上の弟エルヴィンは行儀良くお辞儀をした。双子は目を丸くした後、こてりと首を傾げる。そっくりの動きが面白い。
「お姉様、もう赤ちゃん産んだの?」
「赤ちゃんの大きさじゃないよ?」
ふふっ、なるほど。そう考えたのね。私が産んだなら、こんな大きいわけないでしょう。まだ一ヶ月も経っていないのに。
「レオン、紹介するわね」
こくんと頷くレオンを膝に座らせる。私の顔をじっと見上げるレオンに、お父様から順番に紹介した。
「私のお父様で、カール・フォン・シュミット。レオンの
お祖父様という単語に、レオンは恐怖を覚えている。だから呼び方を変えた。小さいうちはこれで構わない。大人になれば、自分で呼び方を考えるでしょう。
「じぃじ」
「よく覚えたわね」
嬉しそうに笑うレオンは、エルヴィンへ視線を向けた。興味が向いた証拠ね。今までは発揮されていなかったけれど、レオンは好奇心旺盛な男の子だ。たくさんの経験をして、いっぱい友人を作り、幸せな家族を知ってほしい。
「私の弟でエルヴィン、隣がユリアン、最後がユリアーナ」
「える……ゆ?」
一度に説明しても覚えられない。だから短い愛称で覚えてもらうつもりなの。
「エル、ユン、アナよ」
「える、ゆん、あにゃ」
最後だけ可愛い。いっそアニャにしようかしら。うふふと笑う私に、双子はひそひそと内緒話を始めた。あんなに笑うお姉様は久しぶり、とか。そうだった? お金と生活に追われて、ちょっと怖かったかもしれないわね。
今は余裕があるから、こうして笑っていられる。その意味では旦那様に感謝だわ。屋敷に帰ってこないことも、家族を呼び寄せる許可をもらえたことも有り難かった。最高の感謝は、レオンを生み出した父親だという部分ね。
「私の息子になったレオンよ。仲良くしてね」
「わかった!」
「私、お姉ちゃんになるのね」
興奮した双子は、大喜びだ。逆に少し不安そうなのがエルヴィンだった。八歳の双子より十二歳のエルヴィンの方が、貴族の面倒さを理解している。公爵家の嫡子に双子が粗相をしないか、心配みたい。
「ベルント、食事を運んでちょうだい」
食べながら話しましょう。運ばれた料理に目を輝かせ、双子はパンに手を伸ばそうとした。それを父が叱り、食べ方とカトラリーの順番を説明する。そちらは任せて、私はレオンに集中した。
「いいなぁ」
羨ましそうな声を上げたのは、甘えん坊のユリアンだった。女の子のユリアーナは、私の真似をして背伸びしたがるので、あまり甘えてこない。
「ユリアンは自分で食べられる年齢になったの。レオンはこれからよ」
特別扱いとは違う。はっきり教えて、幼い頃はあなたも同じように食べさせたのと話した。納得してくれたかしら。
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