蛆虫

sui

蛆虫


 腐臭がする。



 何かの腸に宿っていたらしいそれが、寄り集まって日向にのたくっている。

 のうのうと、当たり前のような顔で、さも己が正しいかのように。


 生まれて来たからには押し並べて皆生命である。そしてありとあらゆる生命体が犠牲の上に成り立っている。

 この虫ばかりの事ではない。

 しかし生ける物の血肉を啜り、宿主をどこまでも衰弱させ、最終的には絶命まで陥らせてから肉を食い破って外へ出る。その姿に悍ましさを感じはしないだろうか。


 少しの罪悪感でもいい。そんな印があったなら或いは同情もしたのかも知れない。けれども当たり前に生きている。恐らく己が何をしでかしたのか、そんな事等一つも考えず、ただあるがままに存在しているのだろう。


 成体に変われば見え方は違うかも知れない。羽が生え、風の中を孤独に飛んでいるのなら哀れんだかも知れない。


 しかし今はただの醜悪な群像だ。


 餌となりそうな物を嗅ぎ付ければ貪欲に這い寄り、少しでも多くを得ようとそこに吸い付く。

 例えばこの糧が何故そこにあるのか、それが何であるのか。

 そんな事は考えてもいないのだろう。


 ただその瞬間の快楽の為に生命を繋いでいるだけ。

 エゴの塊。

 耳を聳てたなら、自己肯定と他者否定の囁きが聞こえてくるかも知れない。


 清廉さの欠片もない。

 不快だ。気分が悪い。目に入るだけで汚染されかねない。


 嫌悪感に塗れて足を持ち上げる。

 そして踏みにじった。


 塊は大きく見えても、一匹一匹は粗末なものだ。靴底の下に感触はない。グシャリとさえならない。

 或いはのたくり合う者同士、何らかのドラマが存在していたかも知れない。しかし見たくはないし興味もない。だから分かりようもない。


 所詮はそんなものだ。






 ふっと上を見た。

 大きな何かがこちらへ降りてきている。

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蛆虫 sui @n-y-s-su

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