4歳 グーチョキパーの歌
娘と二人でお風呂に入って、湯船にのんびり浸かっていたときのこと。
いい気持ちになったのか、唐突に娘が歌いだしました。
「ぐーちょきぱーで♪ ぐーちょきぱーで♪」
有名なグーチョキパーの歌。
両手をそれぞれ「グー」「チョキ」「パー」のどれかにして、その組み合わせでカニやチョウチョ、カタツムリを表現する手遊び歌。
海瀬も一緒に歌い始めました。
「なにつくろー? なにつくろー?」
「おかあさん! うたわないで!!」
怒られました。それも結構な剣幕で。
4歳にもなると、親が歌って見せなくても自分で好きなように歌って遊ぶようになるんですが、「邪魔された」と感じるときもあるみたいですね。
「そっか、ごめんね」と謝ると「いいよ」と許してくれました。
絶許(絶対許さない)な剣幕だった割にあっさりしていました。
幼児、そういうとこ、ある。
「ぐーちょきぱーで♪ ぐーちょきぱーで♪」
また娘が歌い始めたので、今度は黙って見守ります。
「おかあさん! おかあさんも うたって!!」
なんとまた怒られました。
「え? 歌うの? さっき怒ってたじゃん」
「いいの! うたって!!」
ええ。あんなに怒ってたのに。
さっきは一人で歌いたい気持ちだったけれど、今は一緒に歌いたい気持ちになったみたいです。
幼児、そういうとこ、ある。
そんなわけで、続きを一緒に歌います。
「なにつくろー? なにつくろー?」
娘が右手でグーを作りました。
「みぎてはグーで」
娘、何か作りたいものがあるのでしょう。
海瀬は黙って真似をします。
「ひだりてはパーで」
ここで、娘が少し考えるそぶりをしました。
沈黙が流れます。
グーとパーで作るものといえば、ヘリコプターかクラゲか目玉焼き。
作りたいものを好きに作れるのがこの歌の楽しいところです。
さあ果たして、娘はどれを作るのか。
……わくわくしながら待ちます。
娘は、グーにした右手の側面に、パーにした左手の平をそっと当てました。
「ハナモグラー! ハナモグラー!」
ハナモグラ。姿形は他のモグラとほぼ同じだが、鼻の先にピンク色の花にも見える器官がついている、あのハナモグラ。
「ハナモグラ!?」
「うん!」
グーがモグラ本体で、パーが鼻先の花みたいな器官に見えなくもない。
「……っ、ホントだ。ハナモグラだ!」
鼻先、かなり大きいけど。4歳児相手にそんな細かいことは言わない。
もう、なけなしの瞬発力での精一杯のリアクション。
だって、4歳児が歌うグーチョキパーの歌でハナモグラが来るなんて思わないじゃないですか。
「うふ~」
娘は、満足そうに笑っていました。
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