2歳半 絆創膏

 2歳半を過ぎた娘、『痛い痛いしたら絆創膏を貼る』と思っている。

 だから、母が体をちょっとどこかにぶつけたらすっ飛んできて、ぶつけたところに手を当てて「いたいのいたいのとんでけえ! じゃあ、ばんそーこはるからね、だいじょうぶだよ」と言い、絆創膏を貼ろうとしてくれる。

 そう、血が出てなくても絆創膏を貼ろうとする。娘にとって、絆創膏は痛さを取り除いてくれる万能アイテムらしい。

 絆創膏がある場所も知ってて、「大丈夫だよ絆創膏いらないよ」と言う母を振り切って絆創膏を取り出し、貼ろうとする。

「血が出てないから貼らなくていいんだよ」

 と伝えても、よく分かりません、という顔をする。

「絆創膏貼らなくていいから絆創膏ナイナイしようね」と絆創膏を片付けようとするとギャン泣き。

「痛い痛いしてるお母さんに絆創膏を貼る!」という使命感を持っているみたい(本当は絆創膏貼りたいだけ)。


 これが世に言うイヤイヤ期。自我の芽生え。成長の証。

 それなら、と、娘が貼りたいときに貼れるよう、安価な絆創膏を買った。

 絆創膏の箱を開けて、中身を見せながら、娘に説明する。

「娘ちゃん、これね、娘ちゃんが貼る絆創膏だよ。誰かが痛い痛いしたらこれを貼ってね」

 娘はにこにこと頷く。

 絆創膏の箱を娘にも取れる場所に置いて、家事をする。


 5分後、娘の様子を覗いたら絆創膏を全て家具、玩具に貼ってってた。


 うん、知ってた。

 目を離したらこうなるって分かってた。でも家事もしないとだもの。


 娘はというと、これで満足したのか「絆創膏貼りたい」と泣きわめくことはなくなった。

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