幕間十二話 イロハノート参
◇イロハノート簡易版
ゴサイ村にいるときは、時間があったからこまめにノートへ記していたが、移動が客車で、滞在もほとんど起きたら出発ということで、ろくに記録を取ることもできない。
ましてや、カレンダーもないわけだから、今日が何日かもわからなくなってしまう……。
いつか必要になるかもしれないし、移動行程や旅で得た知識の一部は残しておこうと思う。
括弧内は地球の読み方として記載。
【移動客車と走獣】
客車は、箱型と言われる一般的な長短距離用の四人乗りを借用。
直方体の箱型で、進行方向を向いて両サイドに座れる長椅子があるような造り……現代で言うところの軽自動車バンタイプ、その後部だけのような感じだ。
寝ることもでき、両サイドに観音開きの小窓がついている。
走獣は、サウロを借用。
見た目は、大型のアルマジロで、硬そうな黒い外皮に覆われている。
四足歩行のため、結構揺れる……ウエンズを越えた頃から慣れてきた。
食事は草、干し草なので、草食動物と思われる。
隙を見て、焼きダチョルを口元に持っていったが、匂いをかぐだけで食べることは無かった。
あと、水を恐ろしいほどよく飲む。
鼻から頭? にかけて擦ってやると喜ぶらしい、これは、カラムさんに聞いたのでやってみた。
喜んでいるのかは、よく分からなかった……。
【ゴサイ村から王都までの移動行程】
七の月 四週二日(七月二十日)
ゴサイ村出発
七の月 四週二日(七月二十日)
ネイブ領モサ着
七の月 四週三日(七月二十一日)
ネイブ領モサ出発
七の月 四週三日(七月二十一日)
ネイブ領都着
七の月 四週四日(七月二十二日)
ネイブ領都出発
七の月 四週五日(七月二十三日)
ネイブ領ペイジ着
七の月 四週六日(七月二十四日)
ネイブ領ペイジ出発
七の月 五週一日(七月二十五日)
ウエンズ領ベガ着
七の月 五週二日(七月二十六日)
ウエンズ領ベガ出発
七の月 五週三日(七月二十七日)
ウエンズ領ブレズ着
七の月 五週四日(七月二十八日)
ウエンズ領ブレズ出発
七の月 五週五日(七月二十九日)
ウエンズ領都着
七の月 五週六日(七月三十日)
ウエンズ領都出発
七の月 五週六日(七月三十日)
ウエンズ領ウインマーク着
八の月 一週一日(八月一日)
ウエンズ領ウインマーク出発
八の月 一週一日(八月一日)
ミッド領フォル着
八の月 一週二日(八月二日)
ミッド領フォル出発
八の月 一週三日(八月三日)
ミッド領都着
八の月 一週四日(八月四日)
ミッド領都出発
八の月 一週四日(八月四日)
ミッド領シェリダ着
八の月 一週五日(八月五日)
ミッド領シェリダ出発
八の月 一週五日(八月五日)
ホグ領都着
八の月 一週六日(八月六日)
ホグ領都出発
八の月 一週六日(八月六日)
メルクリュース領カーン着
八の月 二週六日(八月十二日)
メルクリュース領カーン出発
八の月 二週六日(八月十二日)
王都メルクリュース着
【移動出発日】
七の月 四週二日(七月二十日)
【目的地到着日】
八の月二週六日(八月十二日)
【移動所要日数】
二十三日間
【移動経由地】
ネイブ領
モサ、ネイブ領都、ペイジ
ウエンズ領
ベガ、フレズ、ウエンズ領都、ウインマーク
ミッド領
フォル、ミッド領都、シェリダ
ホグ領
ホグ領都
メルクリュース領
カーン、王都メルクリュース
【ウェノさんが持っていた地図】
精巧ではなく、簡略化された安価な地図らしい、かなり独特なつくりをしている。
和紙のような材質で、中古なのか文字がつぶれて読めないし、非常におどろおどろしい……。
四方を国で囲まれているのは何となく分かる。
この地図で言えば、北西がエナス、北東がモア……冒険者協会の本拠地。
南部のネイブ領付近に隣接する国がマジスンガルド、東側がエルダーダムとなる。
この白い太線が、西回りの……道?
南の山の中からスタートしているので、ここがゴサイ村……だと思う。
そこから出発し、南側を経由しているからここがネイブ領。
西回りに領境を抜けて、西側にあるウエンズ領、その北にミッド領、ちょっと東にホグ領で、最後が王都メルクリュースか。
https://kakuyomu.jp/my/news/16818093087932252090
……よくこんな地図で旅ができるもんだ。
王都へ到着した時に、物欲しそうな顔をしていたら「欲しいなら持って行ってもいいぞ?」と言われたので、お言葉に甘えウェノさんから記念にもらった。
地図としては使い道がなさそうだけど、このパーティで旅をした思い出だからと、お宝ボックスへしまっておくことにした。
自分が旅をするなら、もう少しましな精度の地図を持っておきたいな。
……そう言えば、道中でもお店に地図は置いていなかったぞ?
もしかして、正確な地図を作るような文化が無いとかじゃないよね。
測量技術は低いとしても……そう考えたら、地図作りって結構大変だな。
上空から航空写真でも撮るくらいしないと、昔のように地道に歩いて作るしかない。
一度、小さな街でもいいから、地図作りをしてみるのもいいかもしれない。
精度次第だが、意外と高く売れたりするんじゃないか? と、すぐ商売に結びつけてしまう……モーセスさんの影響か?
思えば、以前見たネイブ領内地図も、似たような作りだったような……。
王都では、地図探しもしてみよう!
【種族について】
いまのところ、人族のヒューム、獣人族のビスト、妖精族の情報を得ている。
他にもいくつかの種族が存在するようだ。
人族については、自分と同じため、見た目はあまり変わらないので、割愛。
獣人族は、見た目で明らかに分かる。
出会った獣人族は、顔……つまり首から上が、ヒョウだったりネコだった。
人間の体に動物の頭がついて言葉を話している……この表現が一番しっくりくる。
体毛が濃かったり、牙が生えていたり、体臭がペットの臭いがした。
話によると、顔が人寄りの獣人さんもいるみたいだが、すでに出会っているかは分からない。
メルキル王国は、種族差別が比較的少ない国だと言われている。
しかし、種族による迫害を受けているというほどでは無いが、多少の差別は存在するようだ。
ホグ領付近の犯罪者であるブンガロは、しきりに「獣人に仕事がないからだ」と言っていた。
ミッドのヒルムシロさん率いる何でも屋集団も、恐らく獣人が多い組織のようだった。
デールというフード付きのマントのようなものを着て過ごさなければならない環境は、余計な軋轢を避ける意味合いが強いと見える。
これから、この世界の学校へ行くことになるだろうが、まだ見ぬ他種族との出会いもまた楽しみのひとつとなるだろう。
日本で育った自分にとっては、特に種族差別みたいな文化も無かったわけで、見た目のインパクト以外は特に思う所もない。
他種族同士で結婚した場合、どんな子供が生まれるのだろうか……単純な疑問が湧いてくる。
【犯罪について】
街以外では、治安が悪い。
特に、領都から離れるほど野盗の類が縄張りを持っているという話だ。
ソラスオーダーの普及により、お金を奪うことが難しくなっている現状、人や商品などが対象となってくる。
さらに、その対象の人や商品は、闇取引のような具合で売買されるという、映画さながらのハードな世界……十分に気を付けないと。
また、躊躇なく命を狙ってくるスタンスもまた非常に危険な世界だと再認識した。
いざという時は、こちらも命を奪う覚悟がいるのだろう……ウェノさんや青の盾のメンバーは、経験があると言っていた。
いずれも、正当防衛の範囲、つまり護衛任務中ってことだ。
殺人か……。
犯罪者は、どうやら各領の采配で裁かれているようだ。
領にある警備隊で取り締まられ、犯罪に一定の刑罰が科せられるという話だった。
移動中に二度の襲撃があったが、どちらも強制労働という重い罰となり、数日でどこかへ移送されている。
なんでも、最低でも五年、長ければ数十年にわたる罰もあるようで、労働場所に着いても様々のようだ。
恐らく、あまり人がやらない仕事や、環境の悪い現場などではないかと思う。
さらに重い罪については、容赦なく死罪などが適応されるだろう。
【娯楽など】
今のところ、コロコロ場くらいしか見たことがない。
子供としても、遊びという面において、道具が乏しくやることが無い。
せいぜい、チャンバラとか鬼ごっこみたいな原始的な遊びというところだ。
王都には、まだ見ぬ遊び道具に期待しているところではあるが……。
変な模様ではあったが、サイコロがあるくらいだから、異世界仕様のトランプとか、将棋などがあったら是非やってみたい。
それこそ魔道具なんかは、遊びに使えそうな機能を備えていそうだと思う。
ゴサイ村が、いかに田舎だったかということも徐々に分かってきた。
言葉、施設、食事、人口など、王都へ近づくにつれて新しい発見がある。
せっかく知識を持っているので、何かが出来れば面白いと、王都にはただならぬ期待を抱いてしまう。
この世界は、文化の違い……という言葉で片付けられるかはともかく、教科書に載っていたような数百年遡ったレベルの文化水準だと推測している。
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