幕間八話 イロハノート壱
◇五歳より、この世界に順応するための情報を綴ったイロハ個人のメモ。
※イロハの主観や推測が多く含まれており、本編に出ていない内容などもありますが、必ずしも確定情報とは限りません。
あくまでも、他人の日記を『盗み見る』ような気持で見て下さい。
地球に戻るにしろ、戻れないにしろ、情報は命だ!
最終、九歳時点。
【今の自分の状態は何なのか?】
『すでに死んでいる場合』
死んで生まれ変わった時、何かのバグで前世の記憶が残ってしまった。
何者かが、死んだ体から記憶だけを抜き取ってイロハへインストールっぽいことをした。
死んだことも気づかずさまよっているうちに、こうなった。
『生きているまたは不明な場合』
死なずに生まれ変わったので、日本に仮死状態のいろはがいる。
魂とやらが記憶を持ったままこの体に入っているため、魂の抜けたいろはが残った。
なんかすごい力で、地球とこの世界の自分が繋がれている。
実は、長い長い夢を見ている。
分からない……。
【メルキル王国ネイブ領開拓村】
ネイブ領の騎士団二十名+団長で領北の森林地帯を開拓。
開拓事業は九九六年に開始された。
北側は深い森を抜けて大きな山となっていて、その先は王都メルクリュースとなる。
西側は、ウエンズ領が接地しているが、深い森や険しい山があり遠回りの陸路で行くしか方法がない。
一次開拓事業は五年を予定。
二次開拓決定、王都までの開通を予定。
三年目当初の村民は、百名程度だったが、今も増え続けている為、正確な数字を把握するのに必死のようだ。
【開拓団構成】
伐採部、警戒部、建設部、業務部に分かれている。
再開発時に、作業部が追加増員される。
王国は、ここの開通をなぜ急がなかったのかが疑問。
【ルーセント団長】
俺の父親で、開拓団の団長。
当初の三年間は、村長として親しみを込めて呼ばれていた。
元王国騎士団に所属し、赤槍のルーセントの異名で有名。
ネイブ育ち。
見た目がプロレスラーみたいにデカくてがっちり。
この父のおかげで、割と自由にさせてもらっている。
いい意味での放任主義だ。
【ステラ】
俺の母親。
ミコタンドウのご利益、子宝祈願の発案者。
母親ながら、美人でモデルみたいだと思う。
出身の話題を避けているようで、聞いたことがない。
目も髪も水色という人が周りにいないので、どこか別の土地から来たんじゃないだろうか。
【ハチェット伐採部長】
荒くれの伐採部をまとめるリーダー。
お調子者のハチェットの異名を持つ。
ミコタンドウの発見者。
兄妹に妹がいて、マーサという。
ネイブ領の北部の街出身らしい。
斧が光るスキルを不意に目撃してしまったことから、斧に関するスキルだと思われる。
見た目は気のいいおっちゃんで、実際も気のいいおっちゃん。
【ラミィ業務部長】
父さんと親子ともども苦手である。
通常時は、気の強そうなツンツンモード。
デレのタイミングを探してみたが、この人は常時、ツン。
比較的子供には優しいが、なんとなく俺のことを見破っているようにも思えるので要注意。
足音を立てず近寄ったりするので苦手。
いつかは語尾に「ザマス」を付けて話してほしいとお願いしよう。
【ロディ】
とにかく熱く、いい男。
小学校の時の友人のチー君に似ている気がする。
権力に弱くて心配。
王都から帰ってこなくてさらに心配。
意外と打たれ弱いので、やはり心配。
【トリファ】
三つ上くらいの近所のお姉さんって感じ。
魔性の女に育つのも時間の問題かと。
計算が得意そうだが、この世界のお金は最小単位が百円なので、一の位をよく間違っていたのを覚えている、さすが商人の娘。
木陰で本を読むのが似合う娘だ。
腹違いの兄弟がいて、無事分かり合えたようで安心した。
意外と涙もろいと見ている。
【ポルタ】
俺的には、一番気が合う。
よく食べよく寝る健康ぽっちゃり児。
自己表現が苦手で、よくひっかかるしゃべり方だが、一生懸命伝えようとするところに愛嬌を感じる。
自己評価が低く、根が真面目で、優しく、想ったら一途、それにしっかり周りを見ている……凄い奴だ。
どんな大人になるか楽しみな逸材だと思っている。
トリファに狂ってからは、少し心配度が上がったが。
【ミルメ】
無邪気で活発で元気のいい赤茶髪っ子。
木登りが得意で、身軽な元気印。
こんな生意気な俺に、何かと話しかけてくれる純粋な子だ。
最近は、少しオマセさんな空気を出したりするので、手をつなぐのに躊躇してしまう。
見た目は少年っぽい、意外と頭の回転が速い……スキルの影響か?
俊足という瞬間的に足が速くなるスキルを持っている。
負けず嫌いで、俺に特性とスキルを明かしてしまった。
棒を投げる訓練で何かをつかみつつあるようだ。
【レジー】
大人しく、いつも人の後ろに隠れる金髪娘。
仲良くなったら、家族と思う癖がある。
そのおかげで、特性、スキルを知ってしまった。
の、の、とかわいらしい口調で話すのを聞くと、なごむ。
俺は、こんな子供を欲しかったのかもしれない、すぐかわいがってしまう。
意外と芯があり、我慢強い、さらに負けず嫌い。
集中力、自己治癒、気配察知のような、万能スキルと思われる瞑想を持っている。
【ネイブ領主】
ネイブ領の領主、ラシーン・ネイブ。
ルーセント、ラミィと幼馴染。
今の開拓村の森の魔物討伐時に、父親のカールを亡くす。
元王国騎士団。
丸顔のおっちゃんで、公私のメリハリが効いていてやり手。
個人的には、鳴くまで待とう……な人のイメージ。
【ヒューム】
ヒュームは、現代の方で言うヒューマン、マン、ヒト、ホモサピエンスなどに近いようだ。
分類的にヒューム、通称、人、人間、人族など。
あまり使わないが、自分がヒュームということは知っておくべき。
その他の種族というのもいるらしいが、未だ出会ったことは無い。
【年月日】
一の月は一月。
一の月から十二の月までで一年。
六日が一つの週。
ひと月は五週または三十日。
一年の最後、十二の月が終わると謎の一週間がある。
したがって、一年は三百六十六日となる。
地球で言うところの、大の月や小の月、うるう年などで調整されるグレゴリオ暦みたいなものなのか。
【時間】
時計は、あるにはある。
村の中心の集会場に時計台がある。
二十四時間周期というのは分かるが、小型の時計を見たことがない。
もちろん、村の人たちはかなり時間にルーズ。
この村だけなのか、他もそうなのかは分からないが、時計が無いと不便。
惜しいかな、残念ながら時計の知識がないため、これで一山当てることはできそうにない。
【通貨】
非常にわかりやすい。
金貨=一万ソラス=一万円
銀貨=千ソラス =千円
銅貨=百ソラス =百円
ほとんどキャッシュレス決済。
仕様はデビットカードという先進的なスタイル。
【コア、特性】
コアとは、物理的に心臓に寄り添うように存在する器官らしい。
そこに特性という心の性格のようなものがあるようだ。
心は体を表す的な。
俺は強化だったが、他は○○の○○の○○みたいに長い特性だった。
人によってスキルが違うのはこのおかげかと。
よく考えたら、俺の性格って強化一辺倒ってこと?
【スキル】
コアの特性によってもたらされる特殊能力。
ゲームで言うところの魔法みたいなものだと。
スキル自体にそこまで強力な現象を引き起す効果はないというのが一般的。
だが、身体能力とスキルの扱い方の工夫次第では……。
【モノスキル、ユニークスキル、オリジンスキル】
非常に珍しいスキル。
世界で自分だけしか持たない可能性あり。
予想では、モノスキルは特性依存の後天性スキル、オリジンは血統や種族などに現れる先天性スキル、ユニークは……まあ、突然変異的なものか。
【マルチスキル、レアスキル】
一般的なスキルで、効果はだいたい一つだけだが、稀に複数の効果を持つレアスキルと言われるものがある。
同じスキルを持つ者もいる事から特殊ではないが、利便性があり、前例があるということでスキルの伸ばし方も分かる場合がある。
【コアプレート】
マージメタルという不思議金属によって個人限定で文字が可視化されるなどの性質を持つプレート。
コアに接続だとか、血液を……など、呪術めいた手順があり、いささか信じがたい。
スキルのチェックに役立っている以外は特に使うことも無い。
【マージメタル(魔導金属)】
金属だとは思うが、見た目はガラスや陶器に近い。
落としてもぶつけても簡単に割れることは無いらしいので、相当な強度を持っている模様。
この世界で一番よく分からないものではあるし、なんか便利なものは大抵これだ。
迷宮という場所で発掘されるらしい。
なんとなく、見覚えが無いことも無いが……。
【迷宮】
この世界には、迷宮という洞窟みたいなものがあるという。
迷宮の中には、獣をより凶暴にしたような恐ろしい生物がいるらしい、もはや恐竜とかイメージしてしまうんだけど。
俺が興味を持たないように、あえて話題を避けている様子がうかがえる。
いずれは、そのファンタジーあふれる迷宮とやらに行ってみよう。
【ソラ大陸】
ソラ大陸は一つの大きな大陸と島で構成されている。
国自体がメルキル王国と隣接国で五か国、その他あと数か国と聞いているが、地球で考えると少なく感じるので、他にも大陸があるのでは?
移動の観点から、他大陸へ渡ったなどの話をいまの所聞いたことがない。
【ゴサイポート】
ポートと呼ばれる道の駅みたいなものが、街に必ずあるとのこと。
ポートは、長距離移動手段の客車を借りる、留める、返すなどを行う所。
また、乗り合い客車の場合は、駅の役目がある。
【古代語】
俺的には、外来語、カタカナ語。
古代文明より残された単語が、この世界でも用語として残っている。
主に、名称や擬音が多いが、動詞的な使い方もする場合がありそう。
例)ヤマドリ、イッカクグマ、ポルタ、ネイブ、メルキル……。
人や動物、地名などはカタカナが主流。
しばらくは、人が使うのを真似ることでボロを出さないよう注意。
一度、ミルメとレジーにピラミッドを教えてしまった。
【ミコタンドウ】
俺、イロハのルーツの一つ。
たぶん、地球から最初に飛ばされたのはここだ。
霊体、魂、霊魂、いろいろあるけど、そういうスピリチュアルな状態でこの世界に来たと思う。
なぜか、母さんのステラから生まれたという……。
【いろは、イロハ】
日本でも、この世界でもイロハ。
これが因果というものなのか、単なる偶然か。
【五彩樹】
別名、色葉の木という。
俺の名前のルーツ。
この村の元中心地、団事務所の拠点で、今は自宅に併設されている。
今の街の中心は、商業区域。
【商業区域】
シンボルとして集会場の上に村唯一の時計台がある。
宿屋、道具屋、武器屋、ポートなど、商売の拠点。
物資の商売は、ウォルター商会とルブラインさんの所でうまく回しているらしいが、そろそろ足りなくなりそうな話が。
【行動方針】
一人称は大人になるまでは僕で通す。
言動、行動は子供と考え行動する。
目立つ行動は避ける。
できるだけ、情報を集め有利に立ち回る。
スキルはなるべく使えるように訓練する。
強化ということで、自信の体の○倍になると想定し、基礎体力づくりは欠かさない。
理想は、親元を離れ、自由に立ち回れる環境を作る。
王都の学校の受験に合格し、自由を勝ち取る。
【気になる事】
五歳まで思い出せなかった理由と、思い出した付近の記憶が無くなっている事。
この世界で充実してきたのか、経年変化によるものなのか、地球の知り合いの顔が、記憶より徐々に抜けて行っている気がする……顔を思い出せない社員がいる。
神社の声の主、あれが空耳なのか……この世のものでないナニカなのか……。
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