八話 若年教育:二

 我家は、食事するところにキッチンがあり、みんなで団らん? できるようなリビングがある。

 元は開拓団の事務所だったので、リビングは広いし部屋数も多い。

 ちなみに、俺の部屋はもっと奥のほうだ。

 たぶん、リビングで待っていればよいかな……まあ、食卓が見えるし。

 

 何と切り出そうかな……と言っても、『コア』、『特性』、『スキル』、『コアプレート』この四点だな。


 そう考えていると、父さんがやってきた。

 飯食うの早っ!


「イロハ、さっきの続きだ。いいか?」


「……はい。母さんはいなくていいの?」


「かまわんよ。母さんには話してある」


「そっか」


 ドキドキ……。

 なんかわからん緊張が。


「王国ではな、五歳まで育ってくれてありがとう。これからは、大人になる準備をしよう。そういう意味を込めて若年教育ってものがあるんだ」


「へーそうなんだ。どこの家でもそうなの?」


「メルキル王国では、だいたい同じだな」


「じゃあ、ロディとかトリファとかもその若年教育っていうのを受けたの?」


「うーむ……これは、五歳くらいと曖昧になっているだけに誤差はあるだろうね。まあ、商人家系のトリファや騎士家系のロディのところは間違いなく終わってると思うぞ。ポルタのところはトッカーが帰ったばかりだからこれからかもしれん」


 はは〜ん、こども会議でロディが得意げに話そうとしてたのはこの教育の内容を言ってたんだな……言えてないけど。

 

「とにかく、誤差はあれど五歳前後には必ず大人が若年教育をするはずだ。仮に親がいなくても、村長や、その地域の年長者などが担当する事だろう。地域によっては王都から派遣されて集団で行う場合もある」


「ふーん。じゃあ、ここで聞いたことを若年教育前の子供に話したらどうなるの?」


「そりゃあ……良くはないさ。良くはないけど、特に罰則は無いな」

 

「なんか……適当すぎない? そんなに大事なことなの? それになんで父さんはそんなに詳しいの?」


「まあな。大事というか……詳しいのは、俺が王国騎士団にいたからだよ。もうそろそろいいだろう、質問は後だ」


「はい、お願いします」


 それから二時間くらい? 父さんから若年教育を受けた。

 とりあえす、ロディとトリファに罰はないなっと。




 ふぅ、やっと部屋で落ち着ける。

 

 結論から言えば、若年教育の内容自体は思っていた通りだったが、俺の質問が多くて時間かかってしまった。

 まあ、実り多き話だったな……フフフ。


 ちょっと内容を忘れないためにも、『イロハノート』にメモメモだな。

 

 『コア』とは、心臓のあたりにくっついている器官? まあ、イメージ的には物理的に存在する心みたいな感じで、精神や性格といったものを司る器官のようだ……不思議器官だな。

 『特性』とは、コアが覚醒することで備わるコアの性格のようなもので、生まれたばかりは無であり、その後本体の精神や性格が影響して形成され、やがて特性が決まるらしい。


 『スキル』とは、コアに特性が備わると、特性に因んだスキルというものを取得でき、大きく分けて『マルチスキル』と『モノスキル』に分けられる。

 マルチスキルとは、同系統の特性を持った者の中に、同じ効果のスキルを取得する場合があるのでこう呼ばれている。

 もちろん、マルチスキルの中には『レアスキル』と呼ばれる珍しいものもある。

 モノスキルとは、取得したスキルが唯一と言われる程レアな場合を言う。

 モノスキルの中には一族独特の『オリジンスキル』とか、ある条件下で取得できる『ユニークスキル』と呼ばれるものもあると。

 

 『コアプレート』とは、コアの特性と取得スキルが分かるようになるプレートの事で、不思議なことに内容は自分にしか分からないらしい。


 この他にも、スキルルールという重要なことを聞いた。

 スキルは特性が備わった時に最低一つ以上取得する。

 次に取得するタイミングは様々なようで、わかっていることは、最大六個のスキルを保持できるらしい。

 仮に六個のスキルを保持していた場合、七個目は絶対に取得できない。

 保持スキルに不満がある場合はスキルの破棄が可能。

 つまり、七個目のスキルに期待したい場合、保持スキルは一つ破棄して五個にしておく必要がある。

 まあ、ほとんどの人たちが保持スキルを五個の状態にしているのだろうな。


 ゲームっぽい考え方だが、コアの特性って言うのがジョブ的なものでそのジョブにあったスキルを覚える感じかな? 剣士が剣術を覚えるような。

 マルチスキルは持っている人が複数人いるってことで、モノスキルは自分だけしか持っていない、つまりオリジナルスキル的な存在か。

 例外的に、モノスキルばかりを六個保持とか、十分満足できるスキルを獲得している人はそのまま六個保持しとく場合もある……と。


 父さんが言うには、過去に少年の暴走によるスキルの事故が多発した歴史もあったらしい。

 五歳くらいまで、スキルの使い方次第では危険とし、王国法で若年教育を受けるまではスキルのことを極力秘匿することになっているそうだ。

 どうりで、外出も村の中心地ばっかりだったし、スキルもほとんど目にすることが無かったわけだ。

 それにしても、確実にもらす奴いるだろ……まあ、十歳までは他言無用って念を押されたけれど。


 王国法って……ガバガバやな。


 なんと、母さんが妊娠しているらしい……今日の話題の中で一番びっくりしたよ。

 

 

 ミコタン様の的中率に驚愕しながら、この世界での目的をどうやって果たそうかとスキルに期待しつつ……長い一日を終える、おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る