第7話 悪魔と部屋
――とりあえず、一旦寮の自室に戻ることにした。
教師たちへの説明だとか、めんどくさいことは、明日の私に任せよう。
「ここが、ナツの部屋……ですか」
私の部屋……というか、一軒家のような寮を見て、アザグリールが眉を顰める。
「ええ、そうよ」
この学園は、絶対的な階級社会だ。
一流の悪魔召喚の腕を持てば持つほど、良い場所にすめるし、良い待遇が受けられる。
このぼろ……趣がある私しか住んでいない寮は、私がこの学園の底辺である証だった。
でも、丁度良かったわ。
アザグリールの姿を、他の誰にも見られずにすむ。
「明日からのことだけど……」
話し合わなくちゃ。
少なくとも、アザグリールの設定を作りこまないと……。
そう思うのに、ベッドに腰かけた瞬間、なぜだか、強烈な眠気を感じた。
瞼が重い。
「大丈夫ですよ、ナツネ」
「……だいじょうぶ、なわけ、」
眠気で頭がふわふわする。
「大丈夫」
あぁ、もうだめ、眠い。
柔らかいものが、額に触れたのを最後に、私は意識を失った。
◇◇◇
「……ん、ふわぁぁ」
ベッドから起き上がって、伸びをする。
昨日は、なんだか安心して眠れた気がする。
ひびが入った見慣れた天井を見――。
「ん!?」
ひびがはいっていない!?
それどころか、ぴかぴかに磨き上げられている!?
「ええ、私もしかして……」
別の人の部屋に間違えて入った!?
いえ、でもそもそも私の寮は私しか暮らしていないはずだし……。
「あぁ、起きましたか、ナツネ。おはようございます」
「……おはよう、アザグリール」
にこやかな笑みを浮かべたアザグリールは今日も彫像のように整っていた。
……どうやら間違ってアザグリールを召喚してしまったのは、昨日見た夢じゃなかったみたいだ。
「どうです? 少し内装をいじってみたのですが……」
「少しなんてレベルじゃないわ!」
ひび一つない天井に、品よく整えられた調度品、極めつきはふかふかな天蓋付きのベットだ。
「お気に召しませんでした?」
「とんでもない!」
本音を言うなら、すごく嬉しい。
でも……。
「それで、代償は?」
「……え?」
いやいやいや、そんな初めて聞く言葉のように瞬きされても。
「悪魔が願いを叶えるには、代償がつきものでしょう。代わりに何を求めるの?」
相手は、高位悪魔だ。
魔力で手が打てるなら、私は魔力量だけは馬鹿みたいにあるし、一番嬉しいけれど。
そうはいかないわよね。
「とりませんよ? だって、俺あなたのことが好きですし」
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