ダンジョン無双〜有名配信者を助けたら百合ハーレム始まった!?

@soli

第1話

「これで200匹目。」


私はいつものように剣を振るい的確に急所を突きコウモリ型のモンスターを倒す。


「そろそろ帰るかな。」


コメント


【相変わらず強すぎる】


【ここまで剣を扱えるなんて剣道何段なんだ?】


【片手剣だけど剣道とかと関係あんの?】


【ロイちゃん流石すぎる】


【ちゃんかどうかは分からんだろ】


【確かに】


【声も姿も年齢も一切不明だからしょうがない】


【俺たちの想像にお任せって奴だな、きっとショタに違いない】 

 

【お前キモいぞ】


いつものように数少ない視聴者の流れていくコメントを見ながら私は持ってきていたおにぎりを食べる。


あの日以来、口も小さくなったので一口一口が本当に小さい。おかげで食べるのにとても時間が掛かる。


私が今いるのは上級ダンジョンの最下層だ。

そこで声無し顔無し私の走る音とかだけを聞こえるようにしてライブ配信をしつつ際限なく湧くモンスターを倒し続ける。

何故こんな事しているのかと言うと…


とある日、世界各地に「ダンジョン」と呼ばれる謎の建造物が出現した。

人々はそのダンジョンから取れる希少な鉱石やモンスターが外に溢れないように狩る職業、冒険者などが生まれた。


冒険者とかは普通に働くよりはかなり稼げる。モンスターの素材などは今まで人類が使用していた素材とは比較にならない程の優良な資源となった。

ダンジョンなら無限に取れるし。

だが腐ってもモンスター、敵と命を賭けて戦う訳だ。だからこの職に就く人もそこまで多い訳でもない。とはいえ資源はいくらあっても足りないのでこの職業はかなり稼げると言う訳だ。



私も勿論そのお金目当てにやっている。

まぁ成り行きというか選択肢が無かったというか。ついでにライブ配信をして多少だがお金を稼いでいると言うわけだ。


【お、休憩かな】


【いつもおにぎり一個だけだよな】


【それでよく足りるな】


【もう9時間も籠ってるし】


別に私はそこまでお腹は減らない。

そもそもの話胃袋が小さい。だからそこまで入らないのだ。


そろそろ配信を切ろうかな。

今日はもう疲れたし家に帰ろう。


そう思い私は配信を切ろうとする。だがその時

私のスマホがピー!ピー!という音を立てる。


「緊急要請か。これは…十階層上で救難信号…」


【救難信号じゃん】


【助けに行くの?】


【いや流石にキツイだろ】



救難信号は他にダンジョンに潜っている人が命の危機に瀕した際出される物だ。


「どうしようかな…」


救難信号を出した人間を助けると国が運営しているギルドから多額の謝礼金を貰えたり、助けた人間からも貴重な素材や謝礼金も貰えたりする。後者は助けた人間に寄るが、前者は間違いなく貰えるので率先して助けに行く人が多い。


だがここは上級ダンジョンだ。ここは他の初級ダンジョンや中級ダンジョンと違い難易度が高いので潜る人は更に少なくなるし最下層から十階層程度上なので助けに行ける人間も殆ど居ないだろう。


「しょうがない。行きますかね。」


私は一瞬迷ったが助けに行くことにした。



♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

「あーこれやばいかも…」


体の所々から血が出て、傷だらけだ。

防具もボロボロになっている。


【冗談きついって】


【世界の宝がー!】


【救援まだか!?】


【こんな難易度高いところ誰も行けないだろ】


【ヤバいヤバい】


【あんな所にトラップあるなんて】

 

【ミカたんー!!!】


私は百合島ミカ。チャンネル登録者数200万人の

かなり売れているアイドル兼ヤーチューバーだ。


「まさかトラップに引っかかるなんてね…」


数分前、ミカは自身の所属している事務所のパーティーメンバーと共にライブ配信をしつつダンジョンを攻略していた。

だが、その道中トラップに引っかかりミカだけが元いた適正レベルの階層より遥かに下にワープしてしまった。


そしてそこには……


「超高レベルの鎧騎士って酷くない…?」


ミカの眼前には刀を携えた騎士が立っていた。

顔は見えず顔の鎧の隙間から見える赤い瞳にはなんの感情も見えない。


【確かこいつってレベル100クラスの奴だよな】


【ヤバすぎる】


【ミカたんのレベルってまだ60とかだよな】


鎧騎士が刀を振り上げる。


「お母さん!サーヤ達!ごめん!!」


死ぬ間際せめてもの謝罪を叫ぶ。

無慈悲に刀は振り下ろされた。


「……っ!!」


眼前に迫る刀を認識してミカは死を覚悟する。

ミカが目を閉じたその瞬間、キンッと澄んだ音

を奏で鎧騎士の剣は止められていた。


「君……子供!?」


目の前にいる鎧騎士の剣を防いだ人は自身が記憶している凄腕の冒険者でもなくパーティーメンバーでもなくただのフードを深く被った幼なげな少女だった。


「喋れる元気があるなら逃げてください。邪魔ですから。」


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

面倒なことになった。まさか救難信号を出していたのがあの有名ヤーチューバーの百合島ミカだったなんて。

しかもライブカメラを切り忘れていたのでばっちり自分の配信にもミカが映ってしまっている。

こんな所で身バレとか顔バレとか冗談じゃないが人間の命には変えられないか。

私は普段からフードをかなり深く被っているし背丈はバレても顔までは見えない筈だ。


【これミカちゃんじゃん!?】


【うっわ!ヤバすぎる!】


【完全ヒーローじゃん、ロイちゃん。】


【だからちゃんかどうかは分かんなくないか?】


「君…子供!?」


百合島ミカがやはりそんな発言をする。

良かった。声が聞こえない様に設定しといて。


「喋れる元気があるなら逃げてください。邪魔ですから。」


私はわざとキツく言う。人と関わりを持つなんてごめんだ。


「で、でも…!」


「……」


私はミカを動かすのは無理と判断して弾き飛ばしていた鎧騎士に集中する。


【こいつレベル100クラスのやつじゃないか!?】


【いくらロイちゃんでも流石にキツイんじゃ…】


私は近くにあった石を投げる。

それを鎧騎士は刀で払い落とす。そして鎧騎士が視点を持ち直す前に背後に回り込み剣で思いっきり斬る。


ガキンッッ!!!と重たい音が鳴り私は自分の攻撃が聞いていない事を悟る。


どうやら硬そうなのは見た目だけでは無いようだ。しっかりと中もカチカチらしい。


騎士は後ろに向き直りざまに刀を振るう。

それを読んでいた私は大きいバックステップで距離を取る。


「……あのスタイルじゃなきゃ流石にだめか。」


私はこの遠い距離を利用してメニューから一瞬で二本目の剣を取り出す。


【まさかこれって…】


【嘘でしょ、いつも片手剣しか使ってなかったのに?】


「あれって……二刀流!?」


そう、私の本来の戦闘スタイルは二刀流だ。

いつもは片手剣しか使っていないがこれは目立つのを防ぐためだ。流石に二刀流なんて使う冒険者やハンターは居ないので人が居ない最下層でも片手剣を使っている。


私は二本目の剣を持った瞬間自分が出せる最高速で騎士に近づきそのまま蓮撃を浴びせ続ける。


淡々と。相手が刀を振るおうとしてもそれより早く。腕を、顔を、足を。


「す、凄い…!圧倒してる!」


ミカは戦いに魅せられていた。


それはまさしく誰が見ても圧倒していると言える。ミカは世間一般で言うとそれなりに高レベルである。それを圧倒する存在を更にいとも容易く凌駕する存在が居た。


【こんなのって有り得るのか…?】


【いやあり得るわけないだろ、国お抱えの冒険者ですらあんな動き無理だろ…】


私はトドメの一撃を鎧騎士の脳天に喰らわせる。

鎧騎士は力なく倒れそのまま消滅する。


『レベルが上昇しました!

レベル150からレベル152へと上昇しました!』


目の前に見えるこの謎原理テロップを速攻で消し倒れているミカに近づく。


「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」


「……これ…回復薬。使って。」


【やっぱりロリ声だーーー!?!?】


【俺、ミカたんの視聴者で良かった…!】


【てか二刀流で尚且つここまで強い冒険者なんてデータベースにも居ないぞ?】


【何者だ?こいつ?】


【おい、こいつのチャンネル把握したぞ】


【マジか!?】


【ロイチャンネルって言う名前で四、五年前くらいから毎日モンスターを狩るだけの配信をしている奴だ。】


【そんな奴いるんだ】


私は面倒ごとになる前に立ち去ろうとする。


「ま、待ってください!せめて何かお礼を…!」


彼女はどこにあり余っているのか分からない力で私を引っ張る。


「…ちょ…!?」


彼女が私を引き戻した勢いで一瞬だけ私のフードが外れる。


「え……?」


勿論私は最速でフードを被り直しこの場を後にする。もしかしたら彼女には私の顔が一瞬見えてしまったかもしれない。流石に大丈夫だとは思いたい。


【おーい、ミカたんどうした?】


【あのロイって子引き止めようとしてそれから動かなくなった】


【一瞬あの子のフード外れたよな?】


【動画班あの子の素顔解析求む】


【てかミカたんまじでどうした?】


「……」


ミカはマイクを切り音声が聞こえないようにする。


「……どっっっっっっっちゃくそに………可愛かったんですけどーーーー!!!?!?!?」


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