死にたい私と貴女
ひよこ
1話目 彼女の日記
4/15
私がいくのは地獄かな。親よりも先に死ぬし、自殺だし。
私は綺麗に死にたいので、もう一度しっかり計画を立ててから実行しようと思います。
できれば秋か冬がいいので、しばらくお預けです。
遺書ってどんな便箋に書いたら良いのでしょうか?流石にファンシーなのは辞めておくべきかな?でもシンプルすぎてもありがちだし…
自分の血で文字を書こうかしら。漫画とかに出てきそうで面白い。
もういつでも死ねると思うと、とっても幸せです。この幸せが続くことはありえないから、幸せなうちに死んでしまいたい。
生きる意味は探せばいいんだよって誰かが言ってたけれど、意味のない人生の意味を探すより、意味のない人生を諦める方が私には向いている。
向いているというか、私の生きる意味は死ぬことな気がする。
厨二病かもしれない、若気の至りかもしれない。でも今、私の生きる意味は死ぬことだから、後悔はない。
私は今を生きてるから。
死んでしまえば生きる意味を探さなくても、考えなくても良い。
死ぬ意味だって考えないでいい。
だって死んでるんだから。
死が救済であるとは思わないけど、希望ではあるかもしれない。
私は小学校に入った頃くらいから、死に興味があった。
ドラマなどの安い死でも、大切な人の死でもないし、道で息絶えていた動物の死でもない。
私の興味は自分の死と、「死」そのものだった。
外に出るときは、いつも自分の死を想像しながら歩く。
信号無視の車が突っ込んでくるかもしれない。何かが落ちてくるかもしれない。いきなり刺されるかもしれない。こけて死ぬかもしれない。隕石が降ってくるかもしれない。穴に落ちて死ぬかもしれない。歩道橋から落ちてしまうかもしれない。川に落ちて溺れるかもしれない。重いものに押しつぶされるかもしれない。何らかの理由で首が絞まるかもしれない。凍死するかもしれない。
室内にいる時もそうだ。室内でいるときは自死の方法を考えることのほうが多いかもしれない。
首を吊る。薬を飲む。溺れる。胸を刺す。太い血管を切る。燃やす。首を絞める。頭を割る。
興味というよりも、憧れに近いかもしれない。美化された安い死じゃなくて、「自分の死」が欲しい。絶対に見ることはできないから欲しくなるのかもしれない。
初めて年下の従姉妹を抱っこしたとき、「一瞬で殺せるな。」と思った。その細い首をへし折る。絞める。パッと手を離す。お腹を踏みつける。風呂に沈める。冷蔵庫に入れる。洗濯機に入れる。窓の外に投げる。
そんなことを考えていたら、欲情している自分がいた。自分にそんな残酷さがあったのも、そんなことに欲情している自分がいるのも怖かった。
確か、その頃くらいから死が私の中で大きな存在になり始めたと思う。
もうすぐ、その死を体験できると思うとゾクゾクする。
どれだけの幸せに私は包まれるのだろうか。楽しみで楽しみで仕方ない。
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好きな人がノートを落とした。表紙にはでかでかと「日記」と書いてある。
彼女はどんな風に世界を見ているのかが気になって、気になってしかたなかった。
彼女のSNSのアカウントは裏垢、鍵垢含め全て監視しているけど日記は見たことがない。魔が刺した。ページをパラパラとめくっていく。大体はその日あったことを簡潔に書いているばかりだった。
でも、一枚だけ長文があった。2枚にわたって書かれたそれは自殺を仄めかすものだった。今日は8月の中旬。彼女が死ぬ予定なのは秋か冬。時間がない。
彼女の自殺を止めなければ。
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