第12話
何も全部戻さなくても、という2人の大ブーイングに、“お師匠様“は、それはできません、本来あるべき状況ではなかったのですから、と宥めるように言った。
次いで、“弟子”に目を向け、この落とし前はしっかりつけてもらいますよ、と静かに、しかし脛に傷持つ身にはさぞ恐ろしく響くであろう声音でそう告げた。
「はい…」
“神様”は、次の試験では必ずや、と言いかけたが、青年がその言葉を制した。
「その試験ですが、次回、100年後まで延期します。こんな騒動を起こすあなたには、受験資格は到底与えられません」
「えええ!? 100年待つんですかあ!?」
悲痛な声が響く。
「試験が、100年先伸ばし。まさに、のびるのびるの神様ね」
「「うまいっ!」」
少女の言葉に俺と少年は思わず反応し、神様は全然うまくない、と、またぷうっと頬を膨らませた。
「反省していないようですね? 今後のことは後でじっくり話し合いましょう。
では皆さん、私たちはこれで。あ、そこのお2人、お家に戻しますのでご安心を」
そう言うと青年は再び腕を振り、驚いて固まったままの少年と少女は、かき消すように姿を消した。
最後に俺に視線を向けて、受験がんばって、あなたは合格先延ばしにしないようにね、と、大きなお世話、もとい、貴重なアドバイスを残し、“神様”の襟首を引っ掴んだ“お師匠様”も姿を消した。
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