木漏れ日の唄~ボクと君と死んでいく世界~

@mii122508

プロローグ

       



       夕焼け小焼け


       延びる二つの影

        

       2人手を繋いで

         

       逃げる、逃げる

      

    真っ赤な光に捕まらないように

         

        



    


     ーーー母様!!父様!!!




 3日前に僕達の家族、友達が人間という種族に

殺された。彼らの目的は僕たち古代龍の血肉

古来より、古代龍の血は世界各国の美酒より

美味で、その肉はほろほろと崩れ落ちるほど

柔らかいそうだ。

そして何よりも彼らが欲してるのは

その血肉を食す事で不老の力を得るとされている


「…兄様」


「大丈夫、ルコア。ここにいれば見つからない

 ほら、こうすればもう怖くないよ」

  

 人間族に見つからないように大きな岩場の影に隠れ

息を潜める

そっと双子の妹 ルコアの手を優しく包み込む

もう、3日間走り続けて食事もしていない

辺りからは鉄と焼けた血肉の匂い

少しだけでもルコアに食事をさせてあげたい

休ませてあげたい、怖い思いをさせたくない

震えている彼女を少しでも安心させるように

しっかりと彼女をみてニコッと笑って見せる

 

「 そうだ、ルコア!北西に行こう。母様が昔訪れた龍族が住んでいる、フィルネスっていう国があるみたいなんだ。そこに行けば、助けてもらえるかもしれない」


「フィル、ネス…?」


今にも泣きそうなルコアの頭を優しく撫でる


「 大丈夫、にいちゃんがついてるから。だからもう少しだけ頑張ろ?」


「うん!フラン兄様」


 ゴシゴシと涙を拭いて、ふらふらと立ち上がるルコア

手を繋いで見つからないように走り出す。

少しでも遠くへ

この広いフィシス大森を抜ければきっと



ーーーーあっ



っと声が背後から聞こえた瞬間

ぐんっと繋いでいた手が離れる



「ーールコア!!!!!」


「 にい、さまっ!!」


殺される殺される殺される殺される

身体中震えが止まらない

汗が止まらない

気付かなかった

草むらに隠れてた人間に



「上等者じゃねぇか」


ルコアの髪を掴み上げるとニタっと笑う大男

手には大きな剣


「ーーやめろ、」


殺さないで

僕の、たった1人の妹なんだ


「ーーやめろよっ」


お願いだから、その手を離して

ずっとずっと母様のお腹の中から一緒にいたんだ

形を成す前からずっと



「 僕たちがお前らに何かしたのか!?

平和にただ暮らしていただけなのに、お前らに、一体何をしたって言うんだよ!!」


「そいつも連れて行け」



背後からグッと4人がかりで押さえつけられる

必死にルコアの方に手を伸ばす

きっと届くはず

僕はルコアのお兄ちゃんだから、妹を守らなきゃ

だから、どうか

神様が本当にいるなら、いい子にするからイタズラもしないからどうか、妹だけは




真っ赤に染まる夕陽は残酷で

優しい春風が頬を撫でる

人間達はルコアを大きな刃物で刺し、くたりと力なく倒れる妹

夕日のような真っ赤な液体が妹が大好きな場所を染めあげる



ーーもう少しで、この辺りはフルールの花が一面に咲きますね



優しく微笑む母の顔と喜ぶルコアの顔がはっきりと浮かんだ



        


        夕焼け小焼け


        あたりを染めて


         赤い赤い


         血の海へ


       人間達は血の海へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る