月光にたゆたう
武田修一
月光の下で君と
じんわりと暑さの残る薄暗い夜道を歩く。
月明かりのおかげで薄暗い程度で済んでいるが、一応安全のため、スマホのライトで足下を照らしながら、歩いてく。
「あっつ……」
じわりじわりと汗が出てくる。それを拭いながら、歩を進めた。
しばらく歩いていると潮の香りがしてきて、海が見える。月明かりが海に照らされて、絵はがきのような風景だった。綺麗だな、なんて思っていたら。バシャバシャと波を叩く音が聞こえてくる。
「……ん?」
目をこらすと、制服を着たらしい女の子が見えた。
朝ならともかくこんな時間に?
疑問を浮かべながら、そちらを凝視した。しばらくバシャバシャと動いたかと思うと、スッと海へ飲み込まれる。音もしなくなってしまった。スマホを砂に投げ捨て、海へと走り、濡れるのも厭わずに進んでいく。冷たい海の温度に耐えながら。
足がつかなくなってきたところで、歩くのから泳ぎに切り替えて、女の子が見えたところ辺りまで泳ぐ。
月明かりが海の中まで届いているおかげで、すぐに女の子を発見することができた。
その子の身体を掴んで、海の上まで泳いだ。
「大丈夫!?」
海の上で叫ぶと女の子はゆっくりと口を開いた。
「大丈夫だよ。……泳いでただけだから」
「……そうなの、ごめんね」
「いいよ。そろそろ上がるし」
二人で海から上がる。二人ともずぶ濡れ状態で、警察にでも見つかったら補導されてしまいそうな感じだった。
Tシャツの裾をぎゅっと絞ると大量の海水がしたたり落ちる。
ズボンも、Tシャツも、髪も、靴も、びしょびしょでこのまま帰ったら怒られてしまいそうなスタイルになってしまっていた。うーん、どうしようかと思いながらスマホを拾う。
「ねえ、あなた名前は?」
「えっと、
「私は
目を伏せて、長い黒髪をいじりながら旭は言った。
私としては溺れている女の子はいなかったし、二人とも無事だったから問題はひとつもなかったのだけれど。旭は少しばかり気にしているようだった。
そうだ。
スマホを差し出して、私はこう言った。
「よかったら友達になろうよ」
「えっ」
「学校も一緒みたいだし。その制服、北高でしょ?」
「うん」
そう答えると、走り去ってしまう。
いきなり友達は早まったかな、と思っている間に息を切らしながら戻ってきた。その手にはスマホを持っている。
「友達になろ!」
「うん」
その日、私たちは友達になった。
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