異世界に転生しましたが、授かったのが最低最悪な能力で絶望しています。~こうなったら、スキル【尿意】で美少女魔王を屈服させてやるぜ!!~

こばなし

前編 スキル【尿意】で美少女魔王を蹂躙してやるぜ!!

 俺の名はフミタケ。

 どこにでもいる、しがない陰キャ男子……だった者だ。


 現世でトラックにひかれて死んだ俺は、今は異世界に転生し、どことも知れない道を歩いている。


 神様によると、俺は授かった能力でこの世界を救う勇者となるらしいのだが。


「なんだよ、【尿意】って」


 そう、俺が授かったのは”尿意”を自在にコントロールする能力。


 いや、ふつうさ。

 世界を救う勇者って、もっとかっこいい能力とかだろ?


 全ての魔法を跳ね返すとか、他を圧倒する絶大な魔力、とか……

 よりにもよって、何で尿意?

 尿意で何をどうやって救うの??


 頻尿に悩む老人を助けるくらいしか思いつかないんだが?

 そんな人が出てくる異世界なんて聞いたことも見たこともない。


「ちょっとあんた、旅人さんかい? 見ない顔だねえ」


 おっと、うつむきながら歩いている間に村らしき場所についたらしい。

 声をかけてくれたのは、優しそうなおばさんだった。


「ええ……まあ、旅人みたいなもんです」

「そうかい。そしたら、ちょっと力を借りたいのだけれど……」


 おばさんは何やらお困りの様子。

 尿意しか操れない俺にできることなどたかが知れてるだろうが、しかし。


「俺なんかでよければ」


 目の前で困っている人を見放す理由はない。

 俺はおばさんの案内で、とある民家へ向かった。


 中に入ると、ベッドに横たわる賢そうな老人が。


「実はこの人、めちゃくちゃ腕のいい魔法使いなんだけれどね。ちょっとした病気みたいで」

「病気?」

「歳だからかおしっこの頻度が多くなっちゃって……お漏らしが怖くてすっかり塞ぎこんでしまったのよ。旅人さん、治療法とか知らない?」


 あったわ、頻尿に悩む老人が現れる異世界。

 すごい魔法使いってことは、助けたら何かいいことがあるのかも?

 とりあえず、なんとかしてみよう。


「上手くいくか分かりませんが……」


 俺は老人に手をかざす。

 感覚的に、手に取るように尿意の異常が分かる。

 それを紐解くようにあるべき状態に整えていく。


 すると――


「む……なんじゃ? 急に不快感が消えたぞ……?」


 老人は起き上がり、憑き物がとれたようにぱあっと明るい表情になった。


「そなた、まさかワシの病気を治してくれたのか?」

「え、ええ。まあ」

「くうううう!! ありがとう!! これでお漏らしを気にせず、思いのままに動けるわい!!」

「ど、どういたしまして……」


 老人は、それはもう滅茶苦茶嬉しそうに肩を組んできた。


「実はのう、そなたが来ることはワシの予知魔法で分かっておったのじゃ」

「そうなんですか」

「うむ。不思議な技でワシを助け、その後、勇者としてこの世界を救うという予知がな」

「へ、へえ……」


 世界を救う?

 絶対ないだろ!


「ともかく。助けてくれた礼に、ワシから特別な魔法を伝授するぞ!」

「特別な魔法?」


 なるほど、こっちが本当のチート能力ってことか?


「うむ。どんなものにでも変身できる、変化魔法じゃ。ほれ」


 老人が俺に杖をかざすと、脳内に呪文が浮かび、変化魔法を習得した。


「さっそく試してみてもいいですか!?」

「うむ」


 よーし、そんじゃ、超かっこいいドラゴンに変身!


 ……ってあれ?

 人の姿のままだぞ??


「言い忘れておったが、心からなりたいものであり、なおかつ、明確にイメージできなければその魔法は発動せん。魔法はイメージ力が大事じゃ」


 何それ、うさんくさい!

 悪質商法に引っかかった気分だぜ……。

 なんて萎えていると。


「賢者様、大変です!」

「どうしたのじゃ、ノックもせずに」

「またもや魔王がやってきました!!」


 魔王……だと!?

 こんな”はじまりの村”みたいなド田舎に、いきなり魔王!?


 困惑しつつも外に出ると、大勢の村人たちを前に赤髪の少女が立っていた。


「私の名は魔王メア。人間ども、今日も遊びに来てやったわ!」


 少女はいかにも魔族のような、黒を基調とした衣装に身を包んでいる。

 とは言え水着同然に肌を露出させており、凹凸の激しい体型は正直目に毒なほどに色っぽい。

 対してその顔にはあどけなさが残っており、セクシーさと愛らしさを兼ね備えた、小悪魔的な魅力を放つ美少女であった。


「あれが魔王なんですか?」

「うむ。やつは執拗にこの村を狙い、破壊的な行動をしてくるのじゃ」

「破壊的な行動……?」

「見よ」


 賢者が指した方向を見ると、無様なアヘ顔をさらした何人もの男たちが。


「やつは精神系の魔法で淫らな幻術をみせ、さらには弱った村人たちの顔に落書きをするという、恐ろしいことをしでかすのじゃ!!」


 しょうもな!

 小学生のいたずらかよ!!


「そ、それが破壊的行為なんですか……?」

「そうじゃ。よく見よ、村の青年らのふがいなさに業を煮やした女どもが、男どもに罵声と暴力を浴びせておる。味方同士に不仲をもたらす……恐らく、それが魔王の真の狙いじゃ」


 ほんとだ、よく見たら大惨事になってるわ。


「勇者どの、頼む。どうか、この村を救ってくれ!」

「え、ええ……」


 そんなこと言われても、尿意を操るしか能がないんだが……


「まあ、やってみます」


 俺の善良な心は賢者の懇願に抗えず、策もなく前に出た。

 とりあえず、話せばわかるかな?


「おい、やめろよ!」


 俺は魔王メアの前に立ち、言い放った。


「何? 私の遊びの邪魔をするのはやめてもらえる?」

「遊ぶなら俺と二人っきりで遊ぼうぜ? 可愛いお嬢さん」


 しまった、陰キャぼっちのコミュ障が発動してナンパみたいになってしまった。


「は!? か、可愛い、ですって……!?」


 あれ、なんか効いてる?


「ど、どんなところが可愛いのかしら……?」


 メアは毛先を指でくるくると弄び、乙女チックな表情で問いかけてくる。


「いやあ、なんというか……男心をそそるえっちな身体と、ちょっと幼げな顔つきのギャップが可愛いというか……」

「~~~~!? どこ見てんのよ、このスケベ男!!」

「がはぁっ!?」


 メアの美しい右アッパーが俺のアゴにクリーンヒット。


 えっ、淫らな幻術を見せてくるくせに、自分がスケベな目で見られるのはダメなの?

 乙女心って難しいわ……


 くそ、こんな奴にどうやって勝てと――


「……!」


 殴られた衝撃で朦朧とする頭の中に、名案が浮かんだ。

 そうだ、難しいことなんて何一つない。

 最初からこうすればよかったんだ……!


「【尿意】」


 体勢を立て直した俺は、メアに対して手をかざし、スキル【尿意】を発動。


「んっ……!? な、なによ、これっ……!?」


 彼女はとっさに内股になり、股間を押さえ、身悶えした。


「くっくっく。俺の特別な技で、お前の尿意を高めさせてもらった」

「な、なんて最低な技……! 玩具おもちゃの分際で!!」


 そんな風に見下してくるメアの姿が――


 生前、幼少期に俺をいじめていた悪ガキの姿に重なった。


「――っ!? ああっ……!!」


 俺がさらに尿意を増幅させると、魔王はひざからくずれ落ち、その場にうずくまった。


 俺は思い出していた。

 放課後の教室で監禁され、トイレにも行けず、いじめっ子たちの目の前で失禁させられた小学校時代を。

 その記憶が今まさに、俺の中の復讐心を駆り立てて……


 目の前の魔王に、その憎悪をぶつけていた。


「今度は……俺が玩具おもちゃにする番だ」

「あっ、だめ……! それ以上はっ……やめてっ……」


 涙目で懇願する魔王を見ていると、自分の中に得も言われぬ高揚感がたぎってくる。

 ああ、蹂躙するのって、こんなにも気持ちがいいことだったんだな。


「見ろ、魔王が無様な姿をさらしているぞ!」

「はっはっは。ざまあないな!」


 ふと周囲を見ると、戦闘不能になっていたはずの村人たちが沸き立っていた。

 どうやら魔王の魔法から解放されたらしい。


「やれー、やっちまえー!」


 一人の言葉を皮切りに、彼らは魔王へ向けて石を投げ始めた。


「やめて……もう嫌……」


 魔王はうずくまったまま、


「たすけて……」


 涙声で呟いた。


「……」


 彼女のその姿を……俺はあろうことか、小さかった頃の自分自身の姿に重ね合わせてしまった。


「よし、みんな。あとは俺に任せろ」


 熱狂する村人たちを制し、俺は魔王の目の前に立つ。


「な……なにを……するつもり……?」


 メアは青ざめた目で俺を見上げる。


「お前には、今からスペシャルな拷問をする」


 すかさず俺は、変化魔法を発動し……

 今この時、もっともなりたいものへと姿を変えた。

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