陰キャが陽キャじゃダメですか!?

あまがみ

第1話 高校デビューしちゃうもんね!

陰キャと陽キャ、それの違いがわからない。

そんなの分ける必要があるのかすらわからない。

ただ少しぐらいは私にもわかることがある。

例えばこんなの気にするのは陰キャとか…


そう、私は陰キャなのである。


いつから陰キャになったのか、始まりは中学生のころだった。

ちょっと色々な理由があって引っ越し、それに伴って小学校の友達と離れそのまま中学校デビューに失敗。

ここで一人になり、そのまま流れに任せて陰キャになっていった。

友達を失った三年間を高校で取り戻すと決めた。

一週間後に控えた入学式に向けて今日は美容院に向かった。


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そうしてやってきた入学式当日。

初日から遅刻とか絶対にありえない。

なので私は三十分前には着くようにと電車に乗った。

学校へ着くといろんな人達の声が聞こえた。

「おはよう」や「合格おめでとう」のような様々な声。

私は小さく挨拶を返しながらみんなが進む校舎へ向かった。

玄関では先生が受付をしていた。近くには手伝いとみられる先輩方も。

「合格おめでとうございます。受験票はお持ちですか?」

そう言われて受験票を出す、受験票っていつまで使うんだろ。

「えーと、日向ひむかい 歩夢あゆむさんですね。」

私は小さく頷く。両親からもらった大好きな名前。

「一年三組ですね、出席番号は三十一番です。」

1331の並び…シンメトリー!

「場所はそこの階段を上がったところです、わからなかったら近くの先生にでもお聞きください。では今日からよろしくお願いします。」

そうして先生が微笑む。

私は「ありがとうございます」と感謝を伝えながら教室へ向かった。


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そのまま半日をやり過ごし帰路につく時間になった。

…あれ、誰にも話しかけられて無い?

いや、みんなにも色々理由があるはず。

きっと明日が始まれば誰かと話すことはできると思う。

だってこんなにバッグにキーホルダーとかでアピールしているんだから。

そう信じて私は教室を見回して、みんなが帰るのを見てから荷物を持った。

朝のわくわくをもう一度なぞるようにゆっくりと歩く。

ちょっと転びそうになった階段を下り、教室を教わった玄関で上履きから靴へと履き替える。

沢山の挨拶が聞こえた道で少し足を止めて思いにふけてみる。

初日はあれだったけれど、高校生活への期待は高まるばかりだった。

ふと横を見てみる。

そこにはもう一つ校舎があった。

…もう一つの校舎?

この校舎がどこか心に引っ掛かりながら、家へとまっすぐ帰った。


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「ただいま~。」

ドアを開けて母に挨拶をする。

「おかえりなさい、高校はどうだった?」

「んー、楽しかったしこれから平気そうだよ。」

「それなら良かったわ。お友達は出来そう?」

「今日は特に何もなかったけど、明日からが楽しみだな。」

「中高一貫校で不安だったけど、歩夢が良いなら不安は無いわ。」

「…中高一貫って言った?」

「自分が選んだ学校なのに知らなかったの?」

もしかして大きなミスしちゃった?

「イヤ、シッテルヨ?」

嘘である。今初めて知ったのである。

「お疲れでしょうからね、とりあえず荷物おいてきなさい。」

「は~い。 」

自分の荷物をもって部屋へ向かう。

部屋についた私は、適当な場所に荷物を置いて布団に体を預ける。

そして今日のことを振り返る。

中高一貫校へ入学した私は、期待を胸に秘めながら半日を過ごす。

もしかして仲が良さそうだったのは中学校からの友達だったから?

そういえば先生が中学校の話をしていたかもしれない。

じゃあ隣の校舎は中学校?

そんな不安で頭がこんがらがる。

ちょうどよくお母さんの「お風呂入ったら~?」の声が聞こえる。

一度すべての考えを捨ててお風呂場へと向かった。

ただ一つ、学校への期待の半分は不安へと大きく変わった。

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