ぼくと泡の楽園
湖ノ上茶屋(コノウエサヤ)
第1話
気づいたら、ぼくは泡の楽園にいた。
そこには、息苦しさがなかった。
地上で暮らしていた時は、ときどき、息の仕方を忘れてしまっていた。
でも、ここではずっと、ちゃんと、息ができる。
ぼくの、いま一番の友だちは、魚のウオくん。
ウオくんは、お母さんと、二番目のお父さんと一緒に暮らしてる。ウオくんのおうちには、魚が二匹と、人間が一人と、人魚が――人魚ってどうやって数えるんだろう? 一匹? いる。
ウオくんみたいなおうちは、珍しくない。
なんなら、人間だけが集まっていたり、魚だけが集まっている方が、ここでは変だ。人間だけが集まっていると、魚に食べられてしまったりするし、食用でない魚は人の血を含むものと密接にかかわっているから。
つまり、共存することこそ、命の危険を感じるリスクを減らして、この場所が楽園であることを感じながら穏やかに暮らす秘訣なのだ。
ぼくがここに来た時は、一体どうしてこんなことになっているのか、ちっともわからなかった。
でも、いま。
ぼくはそんなこと、どうでも良いって思っている。
ただ、ぽわんぽわんと生きている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます