ぼくと泡の楽園

湖ノ上茶屋(コノウエサヤ)

第1話


 気づいたら、ぼくは泡の楽園にいた。

 そこには、息苦しさがなかった。

 地上で暮らしていた時は、ときどき、息の仕方を忘れてしまっていた。

 でも、ここではずっと、ちゃんと、息ができる。

 ぼくの、いま一番の友だちは、魚のウオくん。

 ウオくんは、お母さんと、二番目のお父さんと一緒に暮らしてる。ウオくんのおうちには、魚が二匹と、人間が一人と、人魚が――人魚ってどうやって数えるんだろう? 一匹? いる。

 ウオくんみたいなおうちは、珍しくない。

 なんなら、人間だけが集まっていたり、魚だけが集まっている方が、ここでは変だ。人間だけが集まっていると、魚に食べられてしまったりするし、食用でない魚は人の血を含むものと密接にかかわっているから。

 つまり、共存することこそ、命の危険を感じるリスクを減らして、この場所が楽園であることを感じながら穏やかに暮らす秘訣なのだ。

 ぼくがここに来た時は、一体どうしてこんなことになっているのか、ちっともわからなかった。

 でも、いま。

 ぼくはそんなこと、どうでも良いって思っている。

 ただ、ぽわんぽわんと生きている。



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