第4話
部屋の中には長テーブルがあり、色んなものが雑多に置かれている。
そして、奥の方に2人が固まって座っていた。野暮ったい髪型をし、それぞれ黒縁眼鏡をしている。彼女たちは中に入ってきた志摩子を見ると、慌てたように席から立ち上がり、身を寄せ合った。
「よ、陽キャが現れたでござるよ、陽キャが!」
「恐ろしいっす、恐ろしいっすよ!」
「私はバケモンか!」
「ひー、拙者たちから、お金を毟りとるつもりでござるよ!」
「そしてオラたちを裸にし、正の字の烙印を押しつけ、それをネットでさらすつもりっすね!」
「……理恵とまったく同じことを言うわね。あんたたち、もしかして三姉妹なの?」
「そんなわけがないじゃない。こんな犯罪者かもしれない連中と、姉妹なわけがないっての」
「は、犯罪者? どう言う意味でござるか、理恵殿!」
理恵は前に出ると、彼女たちを指差した。
「白々しいわねー、私には分かってるのよ。君たちのどちらかが私のブルマを盗んだ犯人だということがね!」
「理恵殿の汚いブルマなど盗むわけがないでござるよ!」
「今――なんて言った?」
「だから、理恵殿の汚いブルマなど――」
「言ってしまったわね。今のセリフは犯人にしか分からない言葉だった。つまり、君が犯人だと言うことよ!」
そう言って、理恵はござる口調の女を指差した。
「え? 汚いってところが、でござるか?」
「違う! そこじゃない。ってか、汚くないんだけど!」
「では、どこでござるか?」
「ブルマよ」
「ブルマ?」
「そう、私はブルマなんて単語、一言も口にしていなかった。なのに、君はなぜ私の盗まれた物がブルマだと分かったの?」
「え? いや、普通に言っていたでござるよ?」
「そうっすね、普通に言っていたっすよ」
「嘘をつくな! そんなわけがないのよ!」
「理恵、普通に言っていたわよ」
「え?」
志摩子の言葉に、少しだけ放心したあと、理恵は、私の方に視線を向けてきた。
「確かに、言ってた」
「うん、理恵ちゃん、言ってたよ〜」
「まじか! 数時間考えた私の完全な推理劇がこれで終わってしまった!?」
「そうね、終わったのよ。だからさっさと帰りましょうか。私、お気に入りの甘味処があるのよ。今から皆で行かない?」
「陽キャ! 私のブルマより甘味処がいいと言うの!?」
「それはそうでしょ。あんただって、私から甘味処よりあんたのブルマの方がいいって言われても困惑するだけでしょ?」
「その言い方だと、確かに困るわね!」
正直、早く帰りたくなってきた。甘味処に興味はないけども、理恵のブルマ探しなんかより百倍マシだ。
「綾香、皆で甘味処にいこうか」
「え? でも〜、まだ解決していないよ?」
甘いもの好きの綾香が、甘味処より理恵のブルマを優先するだと!?
「私、泉ちゃんの格好いいところ〜見たいなぁ〜」
綾香が、可愛く私を見上げてくる。
これはもう、私に拒否権などありえない!
「理恵、一から話して」
「一から?」
「事件のあらましを一から話して。私たちは何も聞いてない」
「話してなかったっけ?」
「ブルマが盗まれたことしか聞いてない」
「ああ、そうだったかも」
「拙者たちも、かならず部活に参加しろってしか聞いてないでござるよ!」
「そうっすよ。ってか、オラたちは先輩であり、部長と副部長であり、理恵っちと違って毎日この部活に精をだしているっすよ!」
「正確には部活ではなく、ただの同好会だけどね」
「理恵っちは一言余計っすよ」
「あぁ、先輩だったんですか」
「陽キャが敬語を使ったでござる!」
「オラたちは夢でもみてるっすか!」
「話が拗れそうね、理恵――さっさと話してよ」
「陽キャに言われると著しくやる気がなくなるんだけどぉ」
「あんたが依頼してきた事件でしょうがぁ」
「分かってるって。じゃあ、話すからね」
理恵は、コホンと咳払いをしたあと、事件のあらましについて話始めた。
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