午前四時

kaku

それは、真夜中の出来事

 私は、腐女子暦軽く十年以上いっている女である。

 外野の声なども聞こえず(と言うか、無視して)ずかずかとこの道を驀進してきたことに、後悔はない。

『姉ちゃん……でも、自分の立場(独身、妙齢女子)を自覚した方がいいと思う』

 だが、弟の言葉は、少しだけ耳が痛い。

 まあ、それも少しだけだ。

 さて、私は本日ホテルに泊まっていた。

 と言っても、もう夜明け前だ。 

 何故かと言うと、私はいつもと同じようにベッドに入った。

 そして眠る前に、本を読んでいた。

 もちろん、ゲットしたばかりのBLだ。その本はとってもいい作品だった。

 いい本を読んだ時は、誰かと感動を分かち合いたい気持ちは、きっとみなさんもわかってもらえるだろう。

 でも、この時の私には、相手がいなかった。

 昨日一緒にいたオタクの友はもう自宅に帰った後だし、つまんないなあと思いながら、目を閉じた瞬間、目の端に、何かの人影が見えた。

 それと同時に、鳥肌が立ち、おでこの真ん中の部分で、女性の人が私の顔を覗き込んでいることを感じた。

 目を閉じているから、顔はわからない。

 でも、誰かいるのがわかり、それが女性だということはわかる。

 そして、私は言ってしまったのだ。

「BL小説って、最高だよね!」

 正確には、頭の中でそう言ったのだが、相手が固まったことだけはわかった。

 だが私は、少しでもさっきの感動を分かち合いたいがために、読んでいたBL本の素晴らしさを語り続けたのだが、相手は消えてしまった。

 何のコメントもなしに。

 私は、少しだけ哀しかった。

 きっとBLを知らない幽霊だったに違いない。

 「残念だなあ」と、思いながら私はベッドにもぐりこんだ。

 どこかにいないだろうか、BL好きな幽霊さん。

 萌えは、きっと種族を超えると私は思うのだ。

 

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午前四時 kaku @KAYA

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