下僕に恋はありえない!

アカネ(永遠のスマホ勢)

下僕に恋はありえない!

とある人がこのような言葉を残した。


これは《学園ラブコメ》であって《学園ラブコメ》ではない。


俺は今イスになっている。

そう、あの人が座るためにある椅子だ。

え?なんでそんなことしてるかだって?その話は1ヶ月前に遡る。


国立高等学校 近実高校

そこに俺は普通科として入学した。

普通科があるってことは別の学科もあるって事だ。

何故か近実高校では普通科以外の情報が開示されていない。噂では沢山の美少女が所属する学科があるんだとか。

そんな噂を聞き俺は普通科に入学したのだった。

が、それはとんでもない間違った選択だったのだ。

その学科の説明をする前に《魔女》の話もしなきゃならない。

《魔女》とはこの世界に蔓延る悪を成敗する正義の味方のことだ。人間の力では対処出来ない天変地異のようなものに人知れず立ち向かっているらしい。


そして俺が普通科に入学した直後。担任が意味のわからない言葉を発したのだった。

「じゃ、今から君らの主人となる魔女たちにきてもらいまーす。」

...?魔女?なんでここに?

と俺が考えていると次々と教室に美少女たちが。

そして担任が

「えー、彼女達がこの世界を守っている《魔女》でーす!」

「...は?はぁぁぁ!?」

とクラスメイトが騒ぎ出す。

「近実高校では普通科の他に《魔女科》があって魔女を育てています。そして君たち普通科には彼女達の下僕ペットとしてこれから過ごしてもらいます!」

こうして意味のわからないまま俺の学園生活は始まったのだった。


と、そんなことを考えていると

「ちょっと!しっかりしなさい!殴るわよ!」

といい俺の右頬にストレートが

「痛っ..!!」

とうめくと

「椅子が声出していいの!?良くないでしょ!」

とまたもやきつい一撃が。

「...俺はSMプレイするためにここに入ったんじゃないんだけどな...紅...」

俺のご主人様である紅 結衣にそう言うと紅は

「そんなの知らないわ。さっさと椅子に戻りなさい。」

「はいはい。魔女様」

そんな楽しい話をしていると

ウーウー!

と教室にサイレンが鳴り響いた。

魔女の出動要請のサイレンだ。

紅は立ち上がると

「行くわよ椅子。」

「...りょーかい」

そういい教室を後にした。


校庭に行くと大きな蜘蛛のような生き物が。

「うおっ...でっかぁ..」

と俺がつぶやく。

「あんたは黙ってそこに立ってなさい!」

と紅がありがたい一言を俺に残し魔法のステッキを握り蜘蛛に向かって走り出して行った。と思ったのもつかの間

大魔炎散弾ファイアフラッシュ!」

輝く炎を放ち蜘蛛をあっという間に塵に変えたのだった。


「お見事魔女様。」

「ふんっ。雨が降り出す前に倒せてよかったわ。」

「え?何故?」

「雨が降ったら魔法の威力が落ちるじゃない。そんなことも分からないの?この下衆。」

「...」

やっぱり魔女様の言葉はみにしみるなー


魔女によって下僕の使い方が違うらしい。1番マシなのは恐らくパシリだろう。

なんで俺は人を椅子扱いする人に下僕にされちまったんだか。

そして俺達が教室に戻るとパラパラと雨が降り始めた。

「お...ほんとに雨降り始めたな。」

「もしかしてあなたって天気予報とかしらない?」

「そんなこと言うけどお前傘持ってきてなくない?」

ちなみに俺は常に傘を常備している。

「黙りなさい。」


「それにしても魔女って本当にいるんだなぁ。誰もその姿とか見てないって言われてるし存在しないと思ってたわ」

「まあ職業柄人目につかない場所で退治するっていうのもあるわ。人目の着くとこでバンバカ魔法打ったら死人が出るでしょ。」

なるほど。魔女にも人の心があるのか。それでなぜ人を椅子にしようとするのか。


魔女科といえどただその学科で魔女を育成するだけなので普通科と同じく授業は受ける。

もちろん俺は椅子だ。あー帰ってソシャゲしたい。美少女に踏まれたり座られたりする特殊性癖は俺にはないんだよ。

ま、今日はもう魔女様のお仕事はないし真っ直ぐ帰れるかな。

とフラグめいたことを考えていると、

ウーウー!

「...最悪だ...」

サイレンと共に紅は飛び出して行った。

「...あっ!ちょ待てよ!まだ準備してっ...!」

「下僕に準備なんていらないでしょ!」

「いっおまっ」

と俺は意味のわからない母国語を話しつつ準備を始めた。ちなみに紅は先に行ってしまった。


私は通報のあった商店街に到着した。

「うわっ...なんなのこれ...」

商店街ではたくさんの魔物が暴れている。

「誰かっ!助けてくれ!」

「魔女が来るだろ!早く逃げろ!」

「魔女に任せときゃいいだろ!」

と勝手な民衆の声

「もうっ。雨も降ってるし最悪!」

と私は叫び

「喰らいなさい!大魔炎散弾ファイアフラッシュ!」

ボボボッと炎が魔物に襲いかかるも少し怯むだけで効果がないように見える。

雨のせいかしら。

「も〜!」


「紅!!!」

私の下僕の声が聞こえる。

「何よ!下僕の癖に遅いんだから!」

と私が叱ると下僕は

「これ探してたんだよ!」

何?最強のステッキ?それとも回復アイテムかなにか?

私が振り向くと下僕の手には

傘が握られていた。

「は?何よそれ。」

「え、お前雨嫌いって言ってたし...」

何言ってるのこいつ...確かに言ったけど...

...バカみたい...

「傘はいらないわ。そこに座ってなさい。」

私は下僕にそう命令する。

「えぇ...せっかく持ってきたのに...」

下僕がなにか言ってるけど気にしない。


「行くわよ!!!」

私は魔物に向かって走り出し

幻炎衝撃波マジカル・インパクト!!!」

強烈な魔法を放った。


「ははっ...すげぇ火力...」

こりゃ傘も要らなかったな...

「お見事魔女様」

「うるさいわね...」

と紅はつぶやき俺の方に手を差し出す。

「え?手つなごってこと?俺お前と付き合ってる覚えないんだけど。」

「何言ってるの気持ち悪い。傘渡しなさいって言ってるの。」

「え、そしたら俺濡れるんだけど...」

「別にいいでしょ渡しなさい!!!」

俺の傘を奪い取り俺を追い越した魔女様の顔がすこし赤くなっていたのは見間違いだったのだろうか。


最後に

これは《学園ラブコメ》であって決して!《学園ラブコメ》ではない!

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