第一章 第一幕 「レイチェル・ラーディクスの物語」より
F.D
プロローグ
見渡す限りの白い空間があった。その真ん中に、二人の親子らしき人がいる。親は胡坐をかき、分厚い本を持ってなにやらしゃべっている。子はその上にチョコンと座っており、輝きを失った目で口をあけながら親の言葉を聞いている。どうやら親が本を読み聞かせているようだ。。
しばらくすると、どうやらその物語は読み終わったようで本をぱたんと閉じ、子にどうだったかと聞いている。2、3秒後、子は抜けた魂が戻ったように目の輝きを取り戻し、垂れていたよだれをふきながら、こう答えた。
「うん…つまらなかった。いろいろ中途半端で失敗してたし、まぁ普通の人生って感じだね。」
「こういう物語もあるんだなって心の底に入れとけばいいよ。」
苦笑いをしながら、親は答えた。
すると親は子を下ろしながら立ち上がり後ろを振り返ると、本のぎっしり詰まった本棚が、何列も後ろに現れた。
親は今まで読んでいた本を手前の隙間に本を差し込むと、子に次は何がいいかと 問いかけた。
すると子はしばらく本棚を見回した後、一番右端にある、少しボロボロな本を刺した。
「あー、それはーやめといたほうがいいんじゃない?ほら、こっちは?こっちのほうがおもしろいよ?」
何度か似たようなことを子に言ったが、梃子でも変えないため、仕方なくため息とともにその本を取り出し、子を自分の膝に乗せた。
そして、表紙を開き、読み始めた。そこには、お世辞にもきれいとは言えないゆがんだ文字でこう書いてあった。
『すべてのものに、物語はある。始まりがあれば、終わりもある。人間、鯨、木、星そして神にも、すべてのものにそれらはある。この物語は、それら複数の物語を一つに紡いだ、一人の人間の物語。一つの剣が風を巻き起こし、世界に物語の始まりを告げる。一つの歯車が動き出し、ひとつ、また一つと動いていく。そんなはるか昔の、物語である。
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