【第3回G’sこえけん】引きこもりの僕が姉さんとだけ外出する理由 ~僕にとっての癒やしのひととき~

とろり。

第1話 駅前の河川敷




(トントン ドアをノックする音)


「ケン君、遊びに来たよ」


「ケン君?」


「もしかしてまだ寝てるー?」


「もうっ 夜更かしはよくないよっ!」


「ケン君ー?」


「聞こえるー?」


(ガチャ ドアが開く音)


「あ、ケン君、おはよう」


(挨拶をするケンタ)


「はい、おはようございます。よろしいよろしい」


「今日はどこに行く?」


「え? どこでもいいの? じゃお姉さん、今日はケン君をホテルに連れて行っちゃおうかなー?(笑)」


「冗談だよ冗談。え? 行きたい? またー、本気にしないの」


「今日はねー、河川敷をブラブラしようよ」


「ん? お昼ご飯? 大丈夫。お姉さん、作って来たから」


「中身は何かって? んー、それは開けてからのお楽しみ」


「準備できるまで待ってるね」


「えっ? もう準備万端? でもさっきまで寝てたんじゃ……」


「あ、ケン君、準備してたからなかなか出てこなかったんだね」


「そうかあー。可愛いねケン君。いーこいーこ♡」


(ケンタ、恥ずかしがる)


「さ、行きましょうか」


(玄関を開けて、駅前の河川敷へと歩く二人)



//////



「とーちゃくーっ どう? 川なんて久しぶりじゃない?」


「だよね。ケン君と川に遊びに行ったのは、まだ小さい時だもんね」


「なんか懐かしいなあー。あの頃はケン君、こんなに小さかったんだよー」


「えっ? 私も小さかった? こーら、口が達者ね」


(ぽこん ケンタの頭を小突く音)


「ケン君、少し、川に沿ってブラブラしよ?」


(二人 河川敷を歩く)


「あ、桜が少し咲いてるね。三月なのにね」


「ケン君、小学校の入学式の時泣いてたでしょ?(笑) 「お母さん……」って なんかもう卒業しちゃう感じだったよ(笑)」


「私、ちょっと見てたんだ。可愛かったなあ、ケン君」


「あ、小学校の卒業式の時の朝。小6で発症した花粉症で涙ぽろぽろ流してたね。私、つられて泣いちゃったよ(笑) 私の涙返して(笑)」


「でも、いろんなことあったけど、いい思い出だよ。お姉さん、なんか嬉しい」


「あ、ピクニックしてる人いるよ」


「私たちもそろそろお昼にする?」


「お姉さん、準備してきたんだ、お昼ご飯。楽しみでしょ?」


(レジャーシートを広げる音)


「さ、座って座って」


「それでは早速、お昼ご飯にしましょう」


(お弁当箱を開ける音×2)


「じゃーん 今日はサンドイッチでーす」


「どう? 嬉しい?(笑)」


「イチゴジャムサンドでしょー、ブルーベリーも。卵サンドもあるし、ハムとレタスのサンドイッチもある」


「飲み物はオレンジジュースとアップルジュース」


「ケン君、どれにする」


「ブルーベリージャムのサンドイッチとアップルジュースね。王道のイチゴサンドイッチを外してくるところがケン君らしいなあ」


(もぐもぐ ケンタがブルーベリージャムのサンドイッチを食べる音)


「どう? 美味しい?」


「ほんと? ありがと(嬉) ケン君、いーこいーこ♡」


(ケンタ 恥ずかしがる)


「お姉さんはねー イチゴジャムのサンドイッチにしようかなー」


「えっ? ケン君を食べて?」


「こら お姉さんをからかうな(笑)」


(ぽこん ケンタの頭を小突く音)


「それではイチゴサンドをいただきまーす」


「うんっ! 美味しい! 我ながら上出来ね」


「あ、ケン君 ブルーベリージャムが口に付いてる」


「お姉さんが取ってあげるね」


(ぺろ お姉さんがケンタの口に付いたブルーベリージャムを自分の口に運ぶ音)


「てへ 間接キッスね」


(少し照れるケンタ)


「大丈夫 私たちは家族だから」


「え? 家族だからダメ? まあ確かに、そうねぇ……」


「一瞬真面目なケン君もステキだよ。結婚しよっか」


(ごっほごほっ! ケンタがむせる音)


「冗談だよ(笑)」


「あ、ケン君、大丈夫?」


(すりすり ケンタの背中をさする音)


「ケン君?」


「あ、よかった 治まったみたいね」


「え? 冗談きついって?」


「ご、ごめんね」


(二人 少し沈黙)


「風、気持いいね」


「なんかこういう自然の中って無心というか素に戻れるんだよね」


「え? ケン君も?」


「よかった。ケン君をここに連れてきて、よかった」


「自然って癒やされるよね」


「私との時間も癒やされる?」


「褒めても何も出ないよ、ケン君」


「ありがとう? って何よ急に」


「いや、私がケン君を遊びに誘うのは義務じゃないよ 私自身がそうしたいだけ」


「だから私こそ感謝してる ケン君との楽しい時間を」


(優しい風が吹く)


「そろそろ帰ろうっか」


「あのさ、ケン君。手、繋ご?」


「えーなんでダメなのー」


「遠慮しないで、ほーら」


「ケン君、照れてる?」


「照れてない? うそー、顔赤いよ(笑)」


「可愛い なでなで」


「ケン君、嬉しそう(笑)」


(二人は手をつなぎ河川敷を後にした)



//////



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