第13話 ワタシワタシ、メリーさん詐欺に気を付けよう(2)

 結界の外に出てみると、そこには確かに妖力が漂っていた。ただ、今まで対峙してきた暴走した妖魔のような圧倒的な怨念の気配はしない。その代わりに明らかな悪意を感じる。



 「覚…メリーという妖魔について知っていることは?」


 「はい、おおよそのことは知っていますよ。メリーさん…それはある日突然かかってくる電話から始まります。その電話に出ると『私メリーさん。今どこどこにいるの』などと言われます。その後も何度もメリーさんから電話がかかってきて、その電話に出るたびに徐々に自分の元に近づいて来るんです。そして最終的には、『私メリーさん。今あなたの後ろにいるの』と言われ、それに対して後ろを振り向くと…」


 「どうなるんだ?」


 「忘れちゃいました。てへぺろです」



 覚は苦笑いを浮かべる。苦笑いを浮かべたいのは私の方なのだが。



 「ただ、これは世間に知られている表面上のメリーさんです。まぁ昔はそんな感じのことをしていたのかもしれませんが、妖魔も人間になじむことが主流になってきている昨今ですので、今のメリーさんは少し違います。前に知り合いの幽霊さんから聞いた話なんですが、どうやらその方のおばあさん(幽霊)が『ワタシワタシ、メリーさん詐欺』なるものに引っかかってしまったらしくて、それも今回のわらしちゃんの一件と同じものでした。今のメリーさんにとっては、お金の方が需要のあるものなんですよ」


 「その結果判断力の鈍い妖魔から金をせしめる悪徳詐欺師に成り下がったと。なんか…妖魔の風上にも置けないやつだな」



 その後、周囲に漂う妖力をたどって探索を続けていると、遠くの草むらに金髪で異国の服装をした少女が立っていた。どうやら妖力は彼女が放っているものらしい。彼女がメリーさんで間違いないだろう。



 「覚、あれ…」


 「はい。あれがメリーさんで間違いありません。どうしますか?」


 「さっさと捕獲するぞ。相手は大したことない。犯罪者はお縄に付けないとな!」



 私たちは勢いよく草むらに飛び込み、メリーさんの手足を縛った。



 「うわぁ!?なにすんのよ!」


 「うちのわらしちゃんをそそのかしてくれたのはあなたですか、メリーさん?」


 「え、私は…しっ、知らないわよ…?」


 「とぼけるんじゃねえこのクソアマ!!」



 覚は突然人が変わったようにメリーさんに怒鳴った。こっちがびっくりするのでぜひともやめていただきたい。



 「てめぇが余計なことしてくれたおかげでわらしちゃんに嫌われたじゃねぇかどうしてくれんだ?ああ?」


 「なっ、なによ!?あなたがあの子に嫌われたことと私に何の関係があるのよ!?」


 「なんでいちいち説明しなきゃならないんだ?そんなことよりもさっさと言え。ここに来て何をしようとしてた?」


 「待て、覚!落ち着け!お前が落ち着かなきゃ話し合いにならんだろ!」



 私はメリーの服の襟を掴んで脅す覚を引きはがした。



 「はぁ…はぁ…すみません、少し感情的になってしまいました」


 「お前はいったん黙っていてくれ。…それで?まず確認だが、お前がメリーさんだな?」


 「えっと、私は…」



 うつむくメリーに対して覚は睨みつける。



 「ひっ!?そうよ、私がメリーさんよ!」


 「じゃあ次に、金を騙し取った後わざわざここまで来たのはなぜだ」


 「それは…この後あの子を人質にとって、身代金までせしめちゃおうかなって…」



私が問いかけるとメリーはヘラヘラと笑いながら誤魔化すようにして言う。



 「言っておくが、お前じゃあいつには勝てないぞ?あいつは座敷童。あれでもこの世に何百年も存在している、力のある妖怪だ。お前のような妖魔では到底かなわない」


 「座敷童!?ああ、わらしってそういうこと…じゃあどのみち私は負けていたのね。運が悪かったわ…さぁ、煮るなり焼くなり好きにしてちょうだい」


 「そうですか?なら私がこの手で…」



 覚は拳を振り上げ妖力をためる。



「おい待て待て!お前は黙っていろと言っただろう!…はぁ、そういえば、この寺ってなぜか地下に牢屋があったよな。とりあえずそこに入れておくか。」



私たちはメリーさんを縛った縄を足だけほどき、寺の牢屋に連行することにした。終始覚がメリーに無言の圧をかけていて私まで汗が出てくる。…ぜひやめていただきたい。


 時は遡り私たちが寺を出たころ、泣いて出て行った座敷童はいまだ寺の玄関付近にとどまっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る