朝顔
ムラサキハルカ
朝が嫌い
朝が来るのが怖い。小夜はいつもそう思っている。
「なんで、そんなに怖がるんだ。もしかして、吸血鬼だったりするのか?」
土曜の深夜0時近く。同居人の日向に半ば呆れながら聞かれた時も、返答に困った。わからなかったからではない。
「言いたく、ない」
日向は特に気分を害するでもなく、あっそ、と答えて冷蔵庫を開けて、金麦を手にして素早くプルタブを上げる。直後に缶に付けられた唇の赤さに、小夜は同居人の言葉通り吸血鬼になってしまったみたいな心地になりつつ、じっと見守る。
「けど、なんかあるんだったら言ってくれよ。俺にできることなら力になるからさ」
力こぶを作ってみせる日向。その盛り上がりの小ささに、思わずくすくすと笑ってしまう。
「頼りにならなそうだなぁ」
「言ったな、こいつ」
机に缶を置いた日向が覆いかぶさるようにじゃれてくる。やめてよぉ、と応じる小夜は小夜でこの瞬間がずっと続いて欲しいと思っている。
朝なんか来なければいいのに。
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