満月のキス

紙の妖精さん

湖畔の町

静かな午後、柔らかな日差しが窓から差し込み、部屋全体を優しく包み込んでいる。薄いカーテンがそよ風に揺れ、光と影の模様がゆっくりと床に踊る。お気に入りのアームチェアに腰を下ろす少女。彼女はあたたかいカモミールティーを両手で包み込み、湯気がゆらめく様子を静かに見つめている。


長い髪が肩にかかり、彼女の頬を柔らかく撫でる。少女はゆっくりとカップを唇に運び、淡い花の香りが鼻をくすぐる。心がふわりと温かくなり、体の中に染み渡るような穏やかさを感じる。


外からは鳥たちのさえずりがかすかに聞こえ、遠くの木々がざわめく音が心地よく耳に届く。少女は目を閉じて、柔らかな日差しに包まれながら、軽く深呼吸をする。心の中の小さな不安が、そっと溶けていく。


彼女のそばには、静かに刻を刻む時計があり、その針の音が部屋の静けさに溶け込んでいる。何も急ぐことのない、少女の穏やかなひととき。全てが静かで、優しい時間が流れていくようだった。




***************




湖畔の町、緑に囲まれた静かな場所で、葉月花は新しい生活を始めることに決めた。移住の理由は特にない。ただ、心のどこかでこの町の落ち着きと自然に触れたかったからだ。


早朝の湖畔はまだ霧がかかっており、太陽がその光をじわりと染み込ませていく。葉月花は部屋を出て、湖のほとりを散歩することにした。湖面がまるで鏡のように静かで、青空を映している。




葉月花が湖の岸辺に腰を下ろして、小さな池の上に漂う霧を眺めていると、遠くから小鳥のさえずりが聞こえてきた。その音に耳を澄ませながら、彼女はのんびりとした時間を楽しんでいた。


突然、風が吹き、湖の表面が波立った。その波に反射する光に目を奪われたとき、葉月花は気づいた。近くの小道から、カジュアルで明るい淡い栗色の髪を持つ少女がこちらに向かって歩いてきている。



少女の髪は、明るい柔らかな光を受けてまるでシルクのように輝いている。肩のあたりで自然にカールした髪が、頬に優しくかかり、風がそっと吹くたびに揺れる。彼女の大きな瞳は、深い湖のような透き通る茶色で、光を受けるときらりと輝き、その瞳に映る世界はどこか夢見るような優しさを帯びている。


細くて長いまつげが、瞳の周りをふんわりと縁取り、彼女が瞬きをするたびに、まるで小さな蝶が羽ばたくように見える。彼女の肌は、陶器のように白く、頬にはわずかな紅が差している。笑うとほんのり赤くなるその頬は、健康的で、無邪気な少女らしさを感じさせる。


彼女が身にまとっているのは、シンプルで清楚なワンピース。淡いパステルカラーの生地が、柔らかな曲線を描きながら、彼女の華奢な体を優しく包んでいる。ワンピースの裾が彼女の膝にかかり、その上にはお気に入りの薄手のカーディガンを羽織っている。カーディガンの袖が少し長めで、彼女が手を伸ばすと指先だけがひょっこりと顔を出す。


足元には、小さな白いソックスと、シンプルなフラットシューズ。動き出すと、靴が軽く床に音を立てるが、それさえも柔らかく、静かである。


全体的に、彼女の姿は清楚でありながら、どこか儚げで、夢見がちな雰囲気を漂わせている。彼女がその場にいるだけで、世界全体が優しさと穏やかさに包まれるようだ。



少女は、葉月花の視線に気づいたのか、にっこりと微笑みながら近づいてきた。


「こんにちは、ここで何をしているの?」と、その少女が声をかけた。


葉月花は少し驚きながらも、穏やかに答えた。「ただ、湖を見ているだけ。ここはとても美しい場所ですね。」


「本当にね。私は小鳥遊結衣花、ここの町に住んでるの。あなたは?」と、少女が自己紹介をした。


「葉月花です。今日からここに住むことになったんです。」




結衣花は目を輝かせて、「それなら、この町のことを教えてあげるよ。私たち、友達になろう!」と提案した。


葉月花はその提案に感謝し、微笑んで頷いた。「ありがとう、ぜひ仲良くしてください。」


その日から、葉月花と結衣花は自然に友人となり、毎日一緒に過ごすことが多くなった。二人は湖畔の散策や、町の小さなバザーに参加するなどして、共通の趣味を見つけていった。




日が経つにつれ、二人の友情は深まっていった。葉月花は結衣花と一緒に過ごす時間が楽しく、結衣花も葉月花の繊細で思いやりのある性格に惹かれていった。


湖畔の町での新しい生活が、彼女たちの友情とともに、少しずつ形を作り始めていた。この小さな町にはまだ知らないことがたくさんあり、二人はそれを共に探索することを心待ちにしていた。

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