外から開けやすくて中から開け難いものなーんだ?

味付きゾンビ

蹴られる

菅谷雄介の腹に爪先が突き刺さって声にならない声が口から洩れた。

「ヴェエ……」

口から撒き散らされた吐瀉物に暴行を行っていた男三人が距離を取ったのが見えた。

「だからよ!俺等の金も払えって言ってんだよ!お前が誘ったんだろ!」

「そうだぜお前が誘わなきゃ俺等に借金なんてなかったんだぜ!」

「そうだ払えよ!」

(勝手な事ばっかほざきやがって)

地面に倒れたまま、まだ吐瀉物を垂れ流しながら心の中で盛大に罵り声をあげた。

(闇カジノに行きてえって言うから連れてってやっただけだろ俺は。はまって借金だらけになったのは俺のせいじゃねえだろうが!)

心の中で罵り声を上げながら目は辺りを伺う。

前方に大学の同級生兼暴行の犯人バカが三人。背中には何処かの家の壁。

自宅に帰る前、マンションの前で突然路地裏に引っ張りこまれての訳の分からない因縁からの暴行で110番でも呼べないかと考えるがとにかくバカ共が近すぎる。

(クソクソクソ普通に家に帰って普通に飯食って寝るだけだったのになんて厄日に代わってんだよクソが)

口の中にたまった胃液を大きく吐き捨てる。

「分かった……でも、今払える金なんて一人分しかねえよ。誰の払ったらいいんだ」

ゲホゲホとえづき体を壁に預けながらそう告げる。

路地の出口にゴミ捨て場。粗大ごみ、棚か?幾つかあるのを目の端で捉えながら気付かれないようにじわりじわりと跳ね起きれるように動かした。

「俺の借金が一番大きいんだよ」

「いや、何言ってんだよ額面じゃねえだろざけんなよ」

「俺に決まってんだろ親にばれたらまずいんだよ」

(まあ分かるよ俺も親に知られたくねえもんよ)

三馬鹿の揉め事の気配に俯いたままニヤリと口の端が挙がった。

「は?」

「なんだよ?」

「いや何でお前らに優先権があると思ってんだ?」

視界の端で三馬鹿が睨み合って注意が逸れた瞬間に、傷んだ体で最高の速度で路地の出口へ駆け出した。

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