ローレオの街の探偵と魔術師
維七
序章
捜査官エリック=ホーローは自身の担当する案件の資料を机いっぱいに広げ、丁寧にそれを整理していた。
この案件を調査する中、断り切れずに抱えてしまった厄介事。それを知人の、いや友人の探偵に協力を求めようと決めてから彼が見やすいように資料の整理を進めていた。
昼過ぎには終えられるだろうか、そう思いながら作業を急ごうと集中する。
集中はしていたがそれでも近づいてくる人には気づく。姿勢を低くしながらそっと近づいてきた女性は小声でエリックに
「すみません。少しだけお聞きしてもいいですか?」
と尋ねてくる。
「勿論だ。どうかしたか?」
エリックは快く受ける。エリックは少しだけ機嫌が良かった。
「実は今ウチに来た誘拐事件の捜査の件で…」
誘拐事件と言われて今朝の会議を思い出した。と言ってもエリックはこの誘拐事件の捜査には全く関わっていないため詳細は何も知らなかった。
「今朝、話があったどこからか捜査協力の要請が来たというものか?」
「はい。それで少しでも多くの意見を聞きたいのです。資料を読んで聞かせていただけませんか?」
わかった、と言ってエリックは資料を読み始める。速読に自信があるエリックはパラパラと資料を捲って読み進めていく。
それほど時をかけずに読み終えたエリックは眉間に皺を寄せた。
「そうだな…おそらく誘拐犯の裏に別の黒幕がいてそいつらが誘拐犯を殺して被害者を連れ去った、というところだろうか?それぐらいしか思いつかないな」
「そうですよね…。私たちもそれくらいしか意見が出なくて…」
困った、というような女性の顔を見てエリックは妙案を思いつく。
「今日、どこかで時間を取れるかい?」
「はい、我々が捜査に参加するのは明日からですので」
「ならいい人を紹介しよう」
「いい人、ですか?」
困惑した様子の女性に
「ああ、面白い探偵なんだ」
とエリックは自慢げに言った
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